「根本的な解決にならない」核なき世界の実現は? “被爆者頼み”廃絶運動のカタチは | NewsCafe

「根本的な解決にならない」核なき世界の実現は? “被爆者頼み”廃絶運動のカタチは

「私は今でも、73年経っても、子どもながら目撃したあの惨状。何十万もの人たちが、もう無差別に子ども大人も、みんな一度に焼かれ、つぶされてしまう。そういう人間の死を目撃している」 昨年、ノーベル平和賞を受賞した国際NGO「ICAN」とともに活動し授賞式でも演説した…

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「根本的な解決にならない」核なき世界の実現は? “被爆者頼み”廃絶運動のカタチは
「根本的な解決にならない」核なき世界の実現は? “被爆者頼み”廃絶運動のカタチは 全 1 枚 拡大写真

 「私は今でも、73年経っても、子どもながら目撃したあの惨状。何十万もの人たちが、もう無差別に子ども大人も、みんな一度に焼かれ、つぶされてしまう。そういう人間の死を目撃している」


 昨年、ノーベル平和賞を受賞した国際NGO「ICAN」とともに活動し授賞式でも演説した、カナダ在住の被爆体験の語り部・サーロー節子さん(86)が6日、核廃絶を訴えるために来日し、会見を開いた。13歳の時に広島で被爆したサーローさんは、73年経った今も体験を語り続けている。すべては、核なき世界にするため。

 去年12月のノルウェー・オスロでのインタビューで、小川彩佳アナウンサーの「(核による抑止は)必要悪だっていう考え方ですよね」という質問に、「私に言わせれば(核は)絶対悪だと思う。大量の無数の人間を一瞬にして焼き殺してしまう」と答えていたサーローさん。それから1年、今も彼女は核廃絶のために行動を続けている。

 「日本が参加しなかったのは残念」とサーローさんが話すのは、去年7月に採択された核兵器を法的に禁止する核兵器禁止条約。サーローさんも採択に尽力したが、アメリカなどの核保有国は参加せず、交渉の席には日本の姿もなかった。同年6月、サーローさんは「悲しい。自分の国から捨てられてしまっているという気持ちを考えてほしい。アメリカの気分を損ねないためにいろいろな口実を持っているんだろう」と話していた。


 アメリカの“核の傘”に守られているという現状。日本は「核保有国が参加しない条約は現実的ではない」との見解を示した。

 サーローさんは6日、当時外務大臣だった自民党の岸田政調会長との面会でも、核兵器禁止条約への批准を求めたという。岸田氏はその後の会見で「核兵器を持っているのは核保有国なので、その協力・行動なくして、何も現実は変わらない。こういった厳しい現実も存在する」とコメント。一方のサーローさんは、「(岸田さんは)あなたたちの言うことには耳を貸さないという態度ではなかったと思う。言い足りないことがあれば、また後日手紙でも書いて送ればいい、そういう風な安堵感があった。非常に親切なあたたかい受け入れだったと思う」と話した。


 サーローさんといえば、連携して行動しているNPO「核兵器廃絶国際キャンペーン」のICANが去年、ノーベル平和賞を受賞。被爆者として初めてスピーチした。「被爆者が経験したことを人類は二度と経験してはいけない」。唯一の被爆国である日本が訴える核なき世界。いま、核兵器廃絶を巡る世界の動きはどうなっているのか。


 6月の米朝首脳会談以降、北朝鮮の核の脅威は表面上落ち着いているように見える。しかし、トランプ大統領はアメリカが旧ソ連と結んだINF(中距離核戦力全廃条約)にロシアが違反していると主張し、脱退する意向を示した。一方、ロシアは条約を守ってきたと反発し、プーチン大統領は「条約の崩壊には反対だが、もしそうなれば対抗措置を取る」と、中距離核戦力の配備を示唆した。


 世界から核をなくすために、私たちができることとは。サーローさんは6日、次のように訴えた。

 「私たちのトッププライオリティ、最も優先することは、この間採択されたこと(核兵器禁止条約)を50カ国の政府が批准することだと思う。せっかく70年以上費やしてここまで働いてきた。やっと手に入れた第一歩。1つでも多くの国に参加してほしい。政府の要人にお願いしたことは『日本がその50カ国の1つになるよう働きかけましょう、一緒に働きましょう』と」


■村野氏「条約にこだわるよりも、核による安全保障の悪化を防ぐ方法を」

 国際的なパワーゲームの中、核兵器の廃絶は夢物語なのか。訴える声は高齢となり、彼らがもしいなくなったら、核廃絶を訴える動きはどうなるのだろうか。


 日本が核廃絶の旗振り役になれないことについて、岡崎研究所研究員の村野将氏は「アメリカの存在が大きいのもあるが、岸田政調会長が仰っていたのは、核保有国が核兵器を減らさないことには核軍縮は始まらないし、究極的には核廃絶にも繋がらないということ。なぜアメリカを含む国々が核兵器禁止条約に反対しているかというと、安全保障環境の現実を見た時に、核兵器を減らすことや廃絶することが、結果的に世界の安定に繋がっていないからというのが根本的な疑問点だと思う」と説明する。

 核抑止の論理は、お互いに核兵器を持つことで、お互いが核兵器の使用に踏み出せないというもの。北朝鮮が核・ミサイル実験を進めたことで、アメリカは北朝鮮に向き合わざるを得ない事態に発展したが、村野氏は「この事実は、核兵器そのものには軍事的、政治的な意味があると言わざるを得ないと思う」と指摘。さらに、サーローさんのように日本の経験を語り継ぐことは大事だとしつつも、「それと同時に、冷戦期に培われてきた核抑止論や核戦略論は、安全保障の専門家だけでなく、数学であったり物理学の専門家だったり、様々な専門家が全力をかけて築き上げてきた非常に精密な知的体系であることも事実。その中でノーベル賞をとった人もいる。そういった事実に対して、安全保障の文脈から核がどういうものなのか謙虚に考えることも必要。これは両立することだと思う」と述べた。


 現在、世界各国の核兵器保有数は合計約1万5000発で、そのうち9割をアメリカとロシアが保有している。アメリカとロシアは軍事協定で実戦配備核の上限を1550発と定めているが、村野氏は「1550から減らしてくのはかなり難しい」との考えを示す。

 「現実的な核廃絶や大幅な核軍縮を考えた時に、全面的に核をなくすということよりも、アメリカとロシアが一定数核軍縮をした後で、それ以外の国が全廃して、最終的にアメリカとロシアが核を0にする流れになる。2国間であれば安定した核抑止体制が成立するが、3国間になると難しい。例えば、アメリカが50、ロシアが50、中国が50になった時に、ロシアと中国が協同するとアメリカが劣勢に立たされることになる。3者以上の関係で安定した核抑止体制は成立しないので、今の1550から減らしていくのはかなり難しいと思う」


 では、仮に核がなくなった世界はどうなるのか。村野氏は通常戦力の優劣が影響してくるとし、「アメリカが北朝鮮に対して軍事行動をとる可能性が高まるかもしれないし、他の国に対して軍事力行使をする可能性が高まるかもしれない。すると、他国は通常戦力でのアメリカへの劣勢を補うために、より核戦力への依存を強める。それをやっているのが今のロシア。そういうこともあるので、核問題は核だけにフォーカスするのではなく、全体の安全保障環境のバランスの中で核兵器をどう減らしていくかという議論が必要」とした。

 サーローさんを数度取材してきた小川アナはここまでの議論を踏まえ、「核廃絶を訴えていらっしゃる被爆者の方々の言葉は正義だと思うが、『だから核廃絶をしよう』までのロジックがひとつ足りていないような、説得力に欠ける部分があるのかもしれない。それは被爆者の方々が考えることではないと思うが、具体的にどういうプロセスを踏んだら核廃絶が可能なのかがパッとイメージできないのが、議論が前に進んでいかない部分だと思う」と意見を述べる。


 それに対し、核廃絶は「無理だと思う」と村野氏。「核兵器禁止条約は、岸田政調会長が仰っていたように既存の核保有国と非核保有国の溝を深めるものだと思う。非核保有国が核の傘にいる国に対して廃絶を迫る内容になっているが、条約が成立したからといって核保有国に影響はないわけで、逆説的だが既存の核保有国の立場を固定化してしまうものでもある。条約にこだわるよりも、核が使われない、核による安全保障の悪化を防ぐ方法を包括的に考えていく方が重要だと思う」との考えを示した。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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《AbemaTIMES》

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