元国税職員さんきゅう倉田です。東京大学の2年生です。
今日はミクロ経済学の授業を受けてきました。担当の教授は説明がわかりやすいだけでなく、話に無駄がありません。明快です。
「あのー」とか「えっとー」とか言わないし、アドリブで適当なことを喋ることもありません。ちゃんと考えて、必要なことだけを話しています。
ミクロ経済学と関係ないエピソードトークをすることもあるけれど、反復によって洗練された話を目的を持って提供していることが伝わってきます。
それに比べて、◯◯の教授と△△の教授は、ひどい。
◯◯の教授は「あのー」「あのー」と言い続け、学生にそのことを注意されていました。
「あのー今、チャット欄で、あのー“あのあの言わないでほしい”とあのークレームがありました。あのー、注意するようにあのーします」
気が狂いそうです。
どうして「あのあの」言ってしまうのか
練習をすれば稚拙さは解消されるでしょう。しかし、1回210分の授業に対して練習する時間を設けるのは現実的ではありません。
「あのあの」言う原因、周りくどい表現を用いたり、同じことを何度も言ってしまったりする原因は、「説明」にあります。
自分の考えや体験した出来事を話す場合、誰でも比較的上手に話すことができます。ヒトは何かを読みながら説明するとき、最も話が下手になります。
授業やピッチ(他所の人向けの短いプレゼンだと思ってください)では、スライドを見ながら説明をします。
このとき、スライドの文言をそのまま読むのではなく、適宜言葉を補って話をします。グラフや表から分かることを自分で考えて話すかもしれません。これらの処理に時間がかかるため、発話がまごつきます。
プレゼンやエピソードトークが上手い人でも、何かを読んで説明する場合は、出力が不正確になります。
例外的に説明が上手くなるのは、スライドの文言が書かれた意図を完全に理解し、スライドの内容が脳に定着している場合です。そのような場合は、エピソードトークを話すように、巧みに説明できます。
東大の経済学部の教授たちは、おそらくスライドを自分で作成しています。さらに、そのスライドは他の場所でも使用しています。それでも満足に説明できないのは、使用機会が少ないため、スライドに書かれた文章を把握してから適切な言葉を生成し、発話するまでに時間がかかるからです。
もしみなさんが会社員なら自社のサービスを説明するスライドを作って、ひとりでプレゼンしてみてください。絶対に上手に話せません。
教授はどうするべきか
スライドを元に台本を作り、それを朗読すればよい。授業中に学生が質問をすることはないので、録音したものを流してもいいでしょう。教授はスライドをめくるだけでいい。
推敲をするでしょうから台本には無駄がありません。学生の理解も促進されます。
こんな出来事がありました。
△△の教授が支離滅裂な説明を1時間続けた後、5分間の休憩を取りました。その瞬間、ぼくの周囲に座っていた学生3人が同時に言いました。
「わっかんね、わっかんね」「わかんない、」「意味がわからない」
そんな授業は初めてでした。ぼくはその授業の内容をすでに習得していたので、教授の何が悪いか分かります。
前提となる知識を説明せずに少し進んだ話をしたため、学生たちの理解が追いついていなかったのです。
教授の説明には、掛け算を知らない人に2²とか3⁴を説明するような、乱暴さがありました。
授業中にその教授はこんなことを言っていました。
「ミクロ経済学の先生の話は分かりやすいで有名なんですよ。私は見たことないんですけど」
いますぐ見てほしい。そして自分の稚拙さを痛感し、改善してほしい。
多くの仕事は組織内で評価されます。その評価が低ければ、改善を促されるか、組織から排除されます。大学の授業ではそのような作用が働きません。教授を雇用する大学は、教授の授業の程度を把握していないし、学生には教授を評価する方法がない。
学期末にアンケートがあるけれど、説明が下手であると訴える学生は少ないでしょう。教授の説明は下手であることの方が多いし、わざわざアンケートに書くようなことではないから。
13回の授業がすべて終わってからアンケートに書いて、その後改善されても、その恩恵を受けることができません。
それだったら他人を傷つけない選択をする方が精神衛生上望ましい。
様々な要因が折り重なって、話が下手な教授は、下手なまま授業を続けることになります。
△△の教授は、東大の学生だったころ、公認会計士の試験に合格し、大学院在籍時には会計士試験の予備校で講義を行っていたそうです。十中八九、その予備校の合格率は下がったでしょう。
▶つづきの【後編】を読む▶一方、同じ東大の教授でも、どうしてミクロ経済学の教授は話が上手いのでしょうか? 理由は、先生が語ったエピソードにありました。__▶▶▶▶▶