「事実婚」法的権利の確立
海外
ニュース
先進国首脳会議は、本来「先進国の首脳が胸襟を開いて語り合い・個人的な信頼関係を作る事」が狙い。最近の20ヶ国もの首脳を集めた大会議は異常であり、今回の雰囲気は「本来のサミット」と言う感じである。
主催者のオバマ大統領を中心とした丸テーブルの席次は政治的に面白い配置であった。
サミットの原則は夫婦同伴である。異彩を放ったのが、初参加のオランド仏大統領のパートナーだ。"バレリー・トリルベレールさん"の存在である。
正式な結婚をしていない「事実婚」。日本流に言えば内縁関係の女性がファーストレディになるのは、現在のフランス第五共和国制では始めて。フランスの有力週刊誌「パリ・マッチ」の敏腕政治記者、そして離婚暦があり子供3人と言う事で、オランド大統領とはバツイチ同士である。
彼女は「結婚はしないし仕事は続ける。しかし大統領をサポートする」とのこと。殆どのフランス人は「いいんじゃないの」と意に介さないようだが、男女の戒律に厳しいイスラム諸国を大統領が訪問するときは困るのではないか…との声もある。
オランド大統領は彼女の事を「私を幸せにしてくれる人。結婚問題は私的な事」と言い、バレリーさんも「結婚の問題は私生活の一部」と意気軒昂である。
まさに事実婚が制度として定着している国ならではの出来事だ。事実婚は日本と同じく少子化で悩むフランスが生み出した「増子化の知恵」である。
簡単な届けで、同棲以上・結婚とほぼ同じの権利が与えられ様々な国の支援が受けられる。事実婚の解消については、どちらかが届ければよい。
解消後も子供が差別を受ける事はない。2人が面会の権利や養育の義務を追うのである。いかにもフランス的な「お気軽結婚」と見えるが、この制度(PACS法)のお陰で、フランスは少子化傾向から脱し、今や移民を受け入れなくても人口は増えている。
日本も見習うべきかもしれない。日本は、何かと言うと「少子・高齢化」と言うが、具体的な対策となると、子供を生めば幼児手当、保育園が足りなければ幼稚園との融合など"生めばお金を上げる的な対策"に終始している様に見える。
今や「3組に一組の新婚夫婦が5年に一組は離婚する」時代。そこでの離婚リスク・生まれる子供のリスクに向き合う社会の仕組みが出来ていないのではないかと思う。
フランス人の友人は『日本の対策は間が抜けている。日本に必要なのは少子化対策ではなく増子化策である。「別かれても安心・子供がいても安心」を法的に具体的に確立すべきである。フランスでは正式な結婚と事実婚は共に30%以上である。日本は正式の結婚を最上のものとする考え方を変える時期かもしれない』と語っていた。
[気になる記事から時代のキーワードを読む/ライター 井上信一郎]
《NewsCafeコラム》