福島のいま 緊張のなか行われた「野馬追」 | NewsCafe

福島のいま 緊張のなか行われた「野馬追」

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福島県の相馬地方での国重要無形民俗文化財の野馬追(のまおい)が30日で、3日間の幕を閉じた。
昨年は東京電力・福島第一原発事故による警戒区域などの設定により、一部では場所を移して行なわれていた。今年は例年通りの場所で行なわれたものの、一部は縮小して行なわれた。昨年よりは観光客は多いが、まだ例年の半分ほど(地元関係者)しか集まっていない。復興につなげたいとしつつも、いまだに原発事故を実感する三日間だった。

私は今回、小高区の小高神社での野馬懸(のまがけ)を見ることになった。野馬懸とは裸馬を奉納する神事。この神事には、小高郷(南相馬市小高区)や楢葉郷(浪江、双葉、大熊町)の武者らが参加した。 神事はまず、騎馬武者数駒ほら買いを合図に、騾馬を追って坂道を駆け上がる。柵で覆われた境内に一頭ずつ計3頭を追い込んだ。白装束を身にまとった御小人(おこびと)たち9人が逃げようとする馬達を飛びかかった。

昨年は大津波や原発事故後の開催だった。そのため、観光客も少なく、武者などの関係者の参列がほとんどだった。震災の犠牲者を弔う場面もあった。隣の親族とのつながりが途絶えていた。隣の人の固定電話回線はしていても、携帯電話の番号を知らずに繋がらなかった。

小高区は昨年4月22日から、警戒区域に設定された。そのため、住民が立ち入ることは許可が必要になっていた。しかし、小高区は今年の4月16日に、警戒区域が解除された。そして、「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」、「帰宅困難区域」に再編された。宿泊はできず、これまでとは違い、許可証を必要としないで一時帰宅ができる。とはいえ、住居としては利用できないため、「ふるさと」が戻って来ていない。

JR小高駅前の自転車置き場は、駅から高校生が通学のために利用する自転車も同じくそのままだった。高校に入学する前に通っていた中学のステッカーが貼られていたり、通学先の高校のステッカーが貼られているものも多かった。警戒区域が解除されたからとって、まだ復興に向けては手かずなところが多い。

小高区の路上では、いつひかれたかもわからない動物の死骸が放置されていた。警戒区域などがなければ、こうした無造作に置かれた死骸が何日もそのままになっていることはない。その死骸を知ってか知らずか、運転手たちはスルーしていく。
は起きている。一方、今年は特にそうした場面を見ることがなかった。

小高区の高校生(17)も見に来ていた。震災前と後の変化を伝えようと、高校の放送部として取材にきていた。現在は相馬市内に住んでいる。帰宅すると、「カビ臭かった」という。彼女が住んでいた地域にあるJRの駅は無人駅であり、また昨年の震災以降、電車が走っていない区間にある。駅には乗車駅利用証明書の発券機があり、押して見ると番号は「1067」だった。数週間前に訪れた人の発券番号は「1000」だったという。それから多くとも60人ほどが訪れたということになる。

警戒区域が解除されたとはいえ、原発事故はまだ収束をしていない。路上ではにぎやかに子どもが遊んでいる風景をまったく見ない。放射線量が一部高いために、多くの車は足早に通り過ぎて行く。再編によって新たな警戒ラインとなった場所を警備している警察官は、以前と比べて、立ち入りポイントが減り、行き交う人の増えているようで、ピリピリしている。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]

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