見えない金メダル | NewsCafe

見えない金メダル

スポーツ ニュース
ロンドン五輪競泳最終日、日本は男子400mメドレーリレーで初めての銀メダルを獲得した。
背泳ぎで入江が2位でつなぎ、平泳ぎの北島が首位に。バタフライの松田は米国フェルプスに抜かれたが2位。そして最終自由形の藤井が頑張り2位でゴールした。
中でも北島は平泳ぎで58秒64と平泳ぎで唯一58秒台をマーク。銀獲得の原動力となった。もっとも100、200m平泳ぎは5位、4位で終わり史上初、五輪3連覇は叶わなかった
。「悔しいけれど、自分らしい泳ぎができたので悔いはない」とは200mを終わっての敗戦の弁。

4年前の北京五輪。連覇のかかった100mを前に「世界記録で、金メダルを獲得する」と言い切った。そして初の59秒の壁を破る58秒91の世界新記録で優勝。100mの連覇は前人未到の記録だった。そして200mでも五輪新の2分7秒64で連覇。平泳ぎの同一種目優勝は戦前の鶴田義行選手以来76年ぶり。まして2種目連覇は五輪全種目で日本人としては初めて。中学2年のときに東京SCで平井コーチに才能を見出されシドニー五輪代表に。このときは4位。そこから泳法を改善しアテネ、北京での快挙となった。しかしダブル連覇の後は、米国に渡りまったく違う環境の中で心身をリラックスさせた。競泳から距離をおいた北島は南カリフォルニア大サロコーチに出会い、再び五輪への挑戦を目指す。
4度日本代表として挑戦するが、3連覇はおろかメダルすら手に入れることができなかった。

北島の強さは天性の足のけりとトレーニングによる上半身の強さのバランスのよさ。さらに北京を目指すときに編み出した水中で抵抗の少ない姿勢を取るストリームライン。力任せから、水を滑るように体重移動しながら泳ぐ技術だ。
これを完成させ、北京での世界記録や連覇につなげた。ロンドンで100m優勝の南アのファンデルバーグ選手は、平井コーチのもとでこの泳法を学び、今回の優勝につなげた。それだけではない、世界の選手が北島の泳法をプラットフォームとして、進化させている。言ってみれば、自らが編み出した泳法をトップクラスがそれを取り入れ、高速で美しい平泳ぎを進化させたことになる。追われるものは、より進化させなければならない宿命があるが、ロンドンではそれが上手くいかなかった。しかし、これまでのパワー一点張りから美しい高速平泳ぎを編み出した北島の功績は大きい。

17歳高校生の萩野は400m個人メドレーで銅。大学3年生の鈴木聡美は100m、200mの平泳ぎで銀、銅。五輪で自己ベストを大幅に更新した男子200m背泳ぎの入江はこの種目での日本人初の銀メダル。そのほか決勝には残れなかったが自由形の上田、バタフライの加藤、平泳ぎの松島、渡部、個人メドレーの加藤、大塚、高橋といった選手たちが後に続く。
日本の選手層が厚くなってきたことが伺える。これらの選手はアテネでの北島の金メダルに刺激され五輪を目指した選手だ。過去に金メダリストは誕生したが、北島ほど多くの後輩に刺激を与えることは無かった。

今回日本競泳は金メダルは取れなかったがメダル数ではアテネ大会を上回る11個になる。それに象徴されるように、北島は日本競泳界に新しい流れ作った。その意味でも金メダルだ。水泳界に大きな功績を残した北島に、日本、世界は見えないが金メダル2個を与えていいだろう。

[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]

《NewsCafeコラム》

アクセスランキング

  1. 元モー娘。田中れいな、エレベーター同乗の男性の行動に怒り「きもくね」

    元モー娘。田中れいな、エレベーター同乗の男性の行動に怒り「きもくね」

  2. 山本美月所属事務所、ドラマ撮影中の事故受けコメント発表 本人の現状説明【全文】

    山本美月所属事務所、ドラマ撮影中の事故受けコメント発表 本人の現状説明【全文】

  3. 松本潤&山田裕貴「どうする家康」徳川家臣団集合ショットにコメント「激アツ」「感慨深い」の声

    松本潤&山田裕貴「どうする家康」徳川家臣団集合ショットにコメント「激アツ」「感慨深い」の声

  4. 妊娠してレスに。満たしてくれたのは「女性用風俗」でした。(前編)

    妊娠してレスに。満たしてくれたのは「女性用風俗」でした。(前編)

  5. ゆん、夫・シルクロード&息子との3ショット公開 ペアルック姿披露に「3人とも可愛い」「癒やされる」の声

    ゆん、夫・シルクロード&息子との3ショット公開 ペアルック姿披露に「3人とも可愛い」「癒やされる」の声

ランキングをもっと見る