ガンバの落城
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どのメディアも、誰もが言うのは「フロントの無策」。これだけ指摘されれば事実だろう。10年間指導し、確固たる基盤を築いた西野体制。Jリーグ優勝、ACL優勝など輝かしい記録が残る。施設や体制について要求の多い西野監督に対してフロントは好意的ではなかったようだ。結局昨季終了で退任させた。迎えたのが元日本代表呂比須ワグナー。資格問題でセホーン監督・呂比須ヘッドコーチの体制になる。この時点で今日の遠因を作った。西野体制下ではキャンプのハードワークで選手を鍛えたが、新首脳陣は実践練習を重視し体力づくりを軽視。戦術でもボールを保持して攻めあがるスタイルから、縦に速く攻める戦術へ。10年ぶりのギアチェンジは選手に馴染まず、混乱状態に。結局開幕5連敗で新首脳陣は退任。課題の守備力の向上のため日本代表CB今野を獲得したが、攻守のバランスが取れず、時には大量失点に。さらにキャンプでの手抜き体力づくりは、終了間際での対応ができず、勝っている試合を同点にされ、逆転を許すなどもろいチームとなった。攻撃陣も最後までの攻め続けられず、結果的に反撃を食らう。
監督問題を含めて、補強のミスが続いた。最大のミスお1つは山口の放出。残留を希望したが条件面で折り合わず古巣のJ2千葉へ。その山口は今季のJ2でモースト・エキサイティング・プレーヤーに選出された。この10年、西野監督の下でチームのゲームメーカーとして主将も務めガンバの栄光に貢献した。チーム内で厚い信頼を得て精神的な支柱。しかも攻撃的なチームでの守備の課題をカバーしていた。リーグワースト2位の65失点だったが、山口の存在の無さが大きく影響している。FWイ・グノ、MFキム・スンヨンは新規に獲得した外人枠の問題で退団。獲得したFWイ・スンヨルは機能せずに8試合で退団。後半のレアンドロ獲得でやはり外人枠でFWラフィーニャを放出。しかしラフィーニャはゴール前では攻撃を整えるためには必要な選手だった。この選択も大きな疑問が残った。イ・グノ、キム・スンヨン、イ・スンヨル、ラフィーニャは韓国・Kリーグの蔚山現代に移り、ACLの制覇に貢献した。放出した選手が活躍する皮肉。
今季優勝した広島。ペトロヴィッチ監督が5年半指導し攻撃型のチームに仕上げた。今年その後を継いだ森保監督はその流れに守備を強化し、見事優勝に導いた。これはフロントがチーム力の継承を優先した結果だ。しかしガンバのフロントは認識が甘かった。と言うよりアマチュアだった。金森 喜久男社長は辞任を表明したが、築きあげてきた財産を台無しにした張本人。チームをズタズタにして辞任ではサポーターの気持ちは治まらないだろう。Jリーグ20年だが、チーム経営のプロはなかなか育ってないと言う事か。
[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
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