場外ではいつも優勝
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糸井は03年秋に近大から投手として入団。長身からの速球は注目されたが、コントロールに難があった。当時の高田GMに快足・強肩を認められ06年から外野手に転向。レギュラーに定着した09年からは4年連続で打率3割&ゴールデングラブ賞を受賞。3月の第3回WBC日本代表候補にも名を連ねる。日本代表チームの攻守の要として期待されている選手。小笠原の抜けた後の貧打日ハムでやっと育った生え抜きで、いまや攻守の大黒柱。広い札幌ドームで俊足の外野手として投手陣を守り立てた。盗塁もチーム1位。出塁率は2年連続でリーグ最高で表彰。オフの契約交渉では1000万円増の年俸2億円(推定)プラス出来高の提示を保留。糸井は3回目からは急きょ代理人を立てての交渉。そして糸井サイドは球団と合意した際、来季オフでのポスティングシステムを利用してのメジャー挑戦を球団側に伝えた。さらにそれが叶わないなら国内球団へのトレードを申し入れる。
球団はこの申し入れを重く見た。ズルズル延ばし、相手の折れるのを待つのではなく積極的な思考でこの問題の解決に当たった。日ハムの今季の弱点はショート。金子は膝の手術で再起は微妙。さらに金子とコンビを組んでいた田中は海外FAでメジャーへ。日本ハム・山田GMは「ほしいポジションの選手獲得が先決。糸井を出さないと大引を獲れなかった」と弱点の補強を優先。決断に踏み切ったようだ。しかしこれは表向きの話だろう。投手木佐貫も取れ、赤田も守備では期待できるということで、生え抜きのチームの顔の放出を決めたのだろう。さらに今季契約にこぎつけても、来季にはポスティングで揺さぶられることは明白。確かに高額ポスティングマネーは入手できても、それに見合う選手をすぐには手に入らない。内野は金子・田中が抜ける世代交代期。ここは思い切って、そんなに長くチームにはいないだろう選手を、有利な条件で放出したほうがいいという大人の判断が先行したのではないか。
ビックリしたのは糸井の方だろう。近い将来いつかはメジャーとは考えていただろうが、それまでは日ハムでプレーしたかったに違いない。代理人交渉、ポスティング、他球団へのトレードをちらつかせ交渉を有利に展開しようと思ったら、球団のほうが一枚上手だったと言うことだ。それにしても、日ハム球団はポリシーが一貫している。確り方向がぶれない。若手の育成に力をいれ、将来のリスクに対応している。エース・ダルビッシュを放出し、吉川を掘り起こした。新人栗山監督を起用しリーグ優勝。ドラフトでメジャー宣告の大谷投手を翻意させ入団させる。そして今回の激震。チーム全体に危機感を漂わせ、選手の能力を引き出す。思い付きでは出来ない経営戦略。場外ではいつも優勝だ。
[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
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