11月は児童虐待防止推進月間
社会
コラム
法改正に伴って、児童相談所の機能が強化されます。児童福祉司を増員し、弁護士を配置するなど、専門的な対応ができるようにします。関係機関との連携も強化し、市町村の「要保護児童対策地域協議会」の設置については徹底を図り、警察との連携強化していきます。
専門職の増員としては、2930人(15年度)だった児童福祉司を19年度には3480人とすることを目標としています。また、児童心理司は、1290人から1740人に、保健師は90人から210人にしようとしています。つまり、四年間で専門職として5430人増えることになります。
こうした背景には、児童虐待相談対応件数が右肩上がりという現状があります。福祉行政報告例によりますと、14年は約8万9千件で、1999年で7.6倍になっていいるのです。寄せられた相談の経路としては、「警察等」が増えています。14年は約2万9千件。12年の約1万6千件を大きく上回っています。警察との連携強化が徐々にされてきていることを示しているものでしょう。また、「近隣知人」からも多く、14年は約1万5千件。家族からの相談(約7千800件)の倍近い数字です。児童福祉法では、虐待されている子どもがいた場合は、児童相談所などに通告することになっています。みんなで子どもを守る意識が強まった現れかもしれません。
誰が虐待しているのでしょうか。14年の統計では、実母が約4万6千件、実父も3万件を超えています。実の親からの虐待については、私も取材などでよく耳にします。ただ、取材で話を聞く場合、当事者は「虐待」という言葉を使わないこともあります。虐待されていても、両親を守ろうとする心理も働いている、あるいは、自身が虐待されている現実を認めたくない、といった気持ちもあるのでしょう。
私は虐待に関する掲示板も運営していますが、書き込む人の心理は、その時の年齢もあるのでしょうが、様々です。自己否定的な感情を抱いたり、一方で、両親を含めた大人への怒りを吐き出している場合もあります。
もちろん、虐待する側は、一義的には、加害者です。しかし、同時に、虐待された子どもが愛情を期待する相手でもあります。そのため、子どもにとっては、憎みきれない部分があったりします。だからこそ、「虐待されるのは自分が悪い」と、自罰感情が芽生えたりします。「児童本人」からの訴えは、相談全体の1%ほどしかありません。本人が訴えるのが最も説得力がありますが、訴えが少ないのは、年齢の問題もあります。小学生以下の子どもが7割強を占めています。相談できる能力があったとしても、複雑な心理が働いているからでしょう。
虐待かどうかは明確ではない場合もあるでしょう。しかし、第三者が通告し、虐待ではなかったとしても、法的責任は問われません。そのため、疑いのある場合は、児童相談所などに電話をしてもよいと思います。もちろん、子ども本人や虐待しているのではないかと悩んでいる保護者の方からの相談も歓迎されています。そんなときは児童相談所全国共通ダイヤル(0570・064・000)まで電話をするのもよいと思います。18歳未満の子どもの場合は、チャイルドライン(0120・99・7777)もあります。気になることがあれば、連絡をとってみてはどうでしょうか?
[執筆者:渋井哲也]
《NewsCafeコラム》