山田裕貴、赤楚衛二と芝居の枠を超えたバディになるまで なにわ男子・藤原丈一郎の涙から感じた人間性＜「ペンディングトレイン」インタビュー後編＞
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【写真】山田裕貴、本人の前で思わず「可愛い」と声を漏らした女優
◆山田裕貴主演「ペンディングトレイン―８時２３分、明日 君と」
山田にとってGP帯民放連続ドラマ初主演となる本作は【ペンディング】された【非日常】の世界へと放り出されてしまった「5号車」の乗客たちの非日常の生活を描く予測不能のヒューマンエンターテインメント。
山田演じるカリスマ美容師・萱島直哉は、仕事柄コミュニケーション能力は高いが、どこか捉えどころがなく、何を考えているか分からない危険な色気を持つキャラクターだ。
◆山田裕貴、赤楚衛二と“本物のバディ”に辿り着けたきっかけ
― 直哉と優斗（赤楚）が徐々にバディとなっていく中で、改めて優斗役が赤楚さんで良かったと思う瞬間はありますか？
山田：第1段階で相手のお芝居を受け取って返していくということはどの現場でも俳優さんがやることだと思うのですが、僕が彼で良かったなと思うのは、それ以上に踏み込んでくれたことです。彼が俳優としてではなく人としての心を開いてくれたことが一番大いに違う点だと思います。
とある日、俳優としてではなく彼自身のこと、僕自身のこと、今まで生きてきた環境や人生においてのことを話し合ったことがあるのですが、彼が感じる「愛」や「孤独」に対する感覚が僕と一緒で、非常に深いところで繋がれたんです。烏滸がましいのですが、僕が経験した過去と重なって「僕も、そこの道を通ってきたんだよね」という感覚になり話していました。そんな彼がものすごく真っ直ぐな目で「本当にこの作品で山田くんに出会えて良かったです」「こんなに素を出したことはないんです」「僕初めてこの話をしました」と言ってくれたことが、お芝居でどれだけ作ろうとしても作れないお芝居を超える本物のバディに辿り着くきっかけをくれたような気がしてすごく嬉しかったです。
― これからもこの関係は続いていきそうですか？
山田：はい。また一緒にやりたいです。
◆山田裕貴、小春（片岡凜）から相談を受けたこと
― 今回、共演者の方から「山田さんからアドバイスをいただいた」という声が多かったのですが、これまでの作品でもそういったことは多かったですか？
山田：アドバイスは絶対にしないです。他の俳優さんに「こうした方が良いんじゃない？」と言ってきたことはこれまで一度もないです。「アドバイスをしてくれた」という風に言ってくださっていますが、多分皆さんが聞いてきてくれたので僕も返していたという形だと思います。もちろん、シーンによっては「ここはこうなんじゃないですか？」と監督に伝えていく中で間にその方が入ってきてくれたということはありますが、アドバイスというよりもその人がどういう風に見えたら良いのかを考えています。小春（片岡凜）ちゃんに関して言えば、小春ちゃんの方から自分の表情について「あまり気持ちが見えてこないんです」「放送を観てるとこういう風に見えるのですがどうやったら良いですか？」と聞いてきてくれたので答えていました。
◆山田裕貴、これからの活動を語る
― 同作ではプロデューサーさんとも意見を出し合っていたとお話されていましたが、これからもそういう作品作りをされていくのか、今後についても教えてください。
山田：今まで「（オファーが）来たらやる」を繰り返してきたので、どういう俳優になればいいのか、これからどうしようという意志や目標、夢が自分でも分からなくなっているんです。多分、今は「『お願いします』と言っていただけているからやろう」という状態になっていて、自分が何をやりたいのか、どういうことをしたいのか、少し考える時間を作ろうと考えています。でも、僕は武士のような人間で「斬って斬って斬りまくれ」ぐらいの人なので、これぐらいの熱量ではやりたいのですが（笑）、次の作品に向けてもう少し冷静に自分の声を聞いてあげて内省する時間を自分の中で持ってからなのかなと思います。とにかく今は「ペンディングトレイン」と「どうする家康」（NHK大河ドラマ）を全力で生き抜こうと、今まで通り魂を燃やし続けようと思っています。
◆慣れは怖い――「ペンディングトレイン」で感じた幸せ
― 改めて、同作に携わって幸せだなと思う瞬間はありますか？
山田：やっぱり温かい方たちに触れられたことです。キャスト含めスタッフさんも朝方まで撮影しているのにもかかわらず、「次の日大丈夫だった？」「撮休の日大河だったんでしょ？」と声を掛けてくださったり心配してくださったりして、正直「主演がこんなに心配させちゃダメだよな」とも思い、考え直していました。そういう温かみに触れたことで、もっと温かくて皆が楽しいと思える人じゃなきゃダメだと思ったんです。それは僕の唯一の盲点だったというか、頑張っていれば良いわけではないなと考えさせられました。
この作品で樹海や崖で撮影していたことで、今までは普通だったビルの間での撮影に違和感を覚えるんです（笑）。僕らは“ペンディング”されず、ただその撮影を経ただけなのに、そっちの方が不思議になっていて、やっぱり“慣れ”って怖いなと感じました。それはこの作品に携わっていると本当に感じることですし、“ある”ってだけで幸せだと思います。ですが、「“ある”ってだけで幸せ」と言うと、「お仕事があるってありがたいじゃん！やらなきゃ！」とさっき言っていたことと矛盾してきてしまうのですが、本当の自分の幸せを確かめようと思わせてくれてすごく感謝と幸せを感じます。
◆赤楚衛二・上白石萌歌ら共演者の印象的なシーン
それぞれの視点から描かれた想いやバックグラウンドなど極限状態の人間模様が描かれているのも同作の最大の魅力の一つ。ここからは山田が悩みながらも決めた“山田的”共演者の名シーンを紹介する。
・白浜優斗（赤楚衛二）
赤楚くんはセリフがない時のシーンが素敵だと思います。もちろんセリフがある時もそうなのですが、彼は本当は直哉の人だと自身で思っているんです。でも後々、赤楚くんと話し合って「僕もあかそん（赤楚）も直哉と優斗の両方の面を持っている」と分かり合えたぐらい、心の奥底で繋がれた部分がありました。だからこそ、優斗の陰を感じる時の表情はやっぱりどのシーンもすごく素敵だなと思います。
・畑野紗枝（上白石萌歌）
萌歌ちゃんは6話で船に閉じ込められた時の叫びが本物だったと感じました。あとは、あの絶妙なぽやぽや感が良いですよね（笑）。7話で紗枝から抱きしめられた後の場面で、台本には「（直哉が）紗枝の腕を掴む」と書いてあったのですが、プロデューサーさんと掴むか否かの大論争になりました（笑）。僕は、あそこは掴まない方が、直哉（と紗枝）が結ばれたとならず良いかなと思い、掴まない方を選びました。紗枝においては「よく頑張った」と言った後の顔やその後の安心して泣き崩れるところなど一つひとつのシーンで恋なのか愛なのかと感じるシーンが節々に沢山あったので色々な場面を思い出します。
・加藤祥大（井之脇海）・渡部玲奈（古川琴音）
加藤が8話で「もしここに残るんだったら生きて生きて生き抜いてほしい」と玲奈に言うところもすごく好きですし、玲奈はずっとツンケンしているけど、紗枝に水を渡しに行こうとしたけど行けなかったり、そういう可愛げというか本当は寂しいんだなと感じるところがとても好きです。
・米澤大地（藤原丈一郎）
藤原くんもまだ演技始めたばかりと言っていたのに、あの6話で「よくあんな涙出るな！」と本人に思わず言いました。僕だったら絶対無理です（笑）。色々なお話を聞きましたが、今のポジションになるまでにもいっぱい苦労してきて、「だからなんだな。人の気持ちが分かる人なんだな」と強く感じました。今では、あかそんか藤原くんが一番連絡をくれます。
・田中弥一（杉本哲太）・寺崎佳代子（松雪泰子）
哲太さんは僕がやりたいようなスタイルで演じられているのですが、世界観やキャラクターを壊さない範疇で自由を泳ぎ切っているという点にベテランの妙を感じます。松雪さんはやっぱり、セリフを語らせたら説得力がとてつもなくあります。以前舞台でご一緒したことがあるので、また共演できたことも嬉しいです。
・江口和真（日向亘）・佐藤小春（片岡凜）
こはかず（小春＆和真）は、まだ自分が表現できない部分や感覚を自分なりにものすごく悩みながらも、個々に考えて演じています。
あ、おじいちゃんおばあちゃんのグループもすごく好きです。あと、小森（村田秀亮）さんも（笑）、皆愛すべき存在です。レギュラー乗客の方々も本当に一番長い時間待って、一番早い時間に入って協力してくださっていたので全ての人に感謝を伝えたいです。
◆編集後記
今回はリモートでのインタビューだったが、まるで目の前で話しているかのように画面越しから山田の内に秘めた熱い想いがひしひしと伝わってきた。一つひとつの質問に丁寧にじっくりと答える姿からは、彼自身の真っ直ぐな人柄はもちろん、同作への並々ならぬ愛情がうかがえた。彼が共演者、スタッフらとともに作り上げた“山田裕貴の集大成”となるこの作品を最後まで見届けたい。（modelpress編集部）
◆山田裕貴（やまだ・ゆうき）プロフィール
1990年9月18日生まれ、愛知県出身。2011年、テレビ朝日系「海賊戦隊ゴーカイジャー」で俳優デビュー。2022年、エランドール賞新人賞を受賞。主な出演作に「HiGH＆LOW」シリーズ（16～19）、「あゝ、荒野 前篇・後篇」（17）、「あの頃、君を追いかけた」（18）、「燃えよ剣」（21）、「余命10年」（22）、「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー」（22）、「耳をすませば」（22）、「夜、鳥たちが啼く」（22）、「ブラックナイトパレード」（22）など。現在、NHK大河ドラマ「どうする家康」（総合テレビ、毎週日曜午後8時～／BSプレミアム・BS4K、毎週日曜午後6時～／BS4K、毎週日曜午後０時15分～）に出演しているほか、6月30日には映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-」（前編：-運命-／4月21日より公開中）が公開される。
◆「ペンディングトレイン―８時２３分、明日 君と」第9話あらすじ
再びワームホールを出現させ、なんとか過去へ戻ることに成功した乗客たち。しかしたどり着いたのは元いた2023年ではなく、地球環境が激変する半年ほど前の2026年5月の東京だった。
元いた世界から3年後ではあるものの家族との再会を喜ぶ優斗（赤楚衛二）や紗枝（上白石萌歌）たち、成長した我が子を抱きしめる佳代子（松雪泰子）。皆が思い思いに過去へ戻った実感を味わう中、直哉（山田裕貴）もまた、気にかけていた弟・達哉（池田優斗）との再会を果たす。
やがて元の生活へと戻り、未来で見てきたこと、まもなく地球に起こる出来事について必死に訴える乗客たち。しかし警察や政府は彼らの証言を本気にしないばかりか、植村（ウエンツ瑛士）らの勝手な行動もあり、乗客たちは周囲からの好奇の目に晒されてしまう。ただ、加藤（井之脇海）が未来から持ち帰った隕石を手にした蓮見（間宮祥太朗）だけは、何かに気づき…。
そんな折、直哉の体にはある重大な異変が起こっていて…。
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《モデルプレス》
