【「光る君へ」高畑充希インタビュー後編】「すごく救われた」一条天皇・塩野瑛久との共演 悩んで演じ抜いた定子の人生
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【写真】高畑充希、斬新ヘアで雰囲気ガラリ
◆吉高由里子主演「光る君へ」
舞台は平安時代、壮大で精緻な恋愛長編「源氏物語」を書き上げた紫式部を吉高由里子が演じ、「源氏物語」執筆に欠かせない1人の男性・藤原道長を柄本佑が演じる。ドラマでは紫式部が生涯心を寄せ、陰に陽に影響しあいながら人生をたどる生涯のソウルメイトに。脚本は大石静が担当する。
定子は道長の兄・道隆(井浦新)の長女。一家の繁栄を願う父の思いを一身に負い、年下の一条天皇(塩野瑛久)に入内する。清少納言(ウイカ)らが集う、才気にあふれたサロンを作り上げ、天皇の最愛の妃となるが、兄・伊周(三浦翔平)と弟・隆家(竜星涼)の不祥事により内裏をでることを命じられ出家する。
◆高畑充希「たくさん泣きたくない」涙をこぼさなかった理由
― 共演者に助けられた部分は多いですか?
高畑:すごくあります。能動的な部分もありつつ何かを受け取ることも多い役だったので、ウイカちゃんはもちろん他の家族の皆や一条天皇など色んな方のエネルギーで引き出してもらった表情がありました。「皇子を産め」とずっと罵倒されるシーンもありましたが、新さん(道隆役の井浦)や三浦さん(伊周役の三浦)のエネルギーをもらって生まれた感情もたくさんあり、皆さんの力で助けられました。
― そのシーンの高畑さんの演技は目に涙が溜まっているのにこぼれていない感じがすごく印象的だったんですが、どんな気持ちで演じられましたか?
高畑:全体を通して定子という人物を演じるにあたって、たくさん泣きたくないなと思っていました。もちろんお姫様だし、史実だけだともっとか弱いイメージも湧くしもっと策略家なイメージも湧くし、色々なイメージの選択肢が無限にありましたが、大石さんが描かれる定子をどう演じていけたら良いかなと考えたときに、どこか芯が強くてかっこいい人でいてほしいというのが自分の中であったので、そのシーンも本当に辛かったけど泣けなかったのかなという記憶があります。
― 中盤の悲劇の最大の原因は伊周だと思います。視聴者の中で伊周の株が下がりまくりだと思うのですが…
高畑:そんなに下がっているんですか(笑)?私は結構伊周が好きです。最初は「この人さえしっかりしていたらこんなことにならなかったのに」と思っていたんですけど、三浦さんはすごく美しい方ですし、ご本人が本当に全力でどこまでも不格好に哀れな伊周の姿を演じられていて、それを見ていると怒りというよりはあまりに哀れで涙が出てくるし、一周回って愛してしまうくらい、台本を読んでいるときには感じなかった感情が出てきました。現場でも割とハードな発散するシーンが多くて、対面するシーンで私の表情を撮っているときでも本当に毎カット全力で罵倒して暴れて下さっていたのでそのおかげで私も感情を持っていけました。なので、私はすごく現場で三浦さんの伊周が素敵だなと思って見ていたので、兄をよく書いて下さい(笑)。
― 定子が出家すると言って髪を切るシーンはどうでしたか?
高畑:台本で読むと回の最後に向けて「切っちゃった」という驚きで終わる印象が強かったのでエネルギーが高い幕切れという風に持っていきたかったんですけど、実際今の感覚だと髪を切ることがあまり大事(おおごと)ではないじゃないですか?私の勉強した限りでは当時だと本当に自死に近いと言いますか、皆の前で自殺するぐらいの感覚だったそうなので、それが伝わるようにしたいなと思っていました。そこに至るまで伊周が駄々をこねたりお母さんが号泣してたり、自分だけじゃなく皆さんが一段一段構築して下さって家族皆で作り上げたシーンだったので、台本を読んで不安になっていた自分が馬鹿だなと思いました。
◆高畑充希、一条天皇とのシーン
― やっぱり一条天皇とのシーンはエモーショナルなものがあったと思うんですが、塩野さんと再共演した感想と思い出に残っているシーンがあったら教えて下さい。
高畑:以前共演させていただいたときは、多分ほとんど同じシーンがなかったんですけど、一条天皇と定子の関係性は大事なものなので、全く初めましてではなく久々の再会でご一緒できたことはすごく良かったなと思っています。塩野さんもウイカちゃんみたいに「定子さん好きです」という感じで、すごく持ち上げて下さってそれを恥ずかしげもなく言葉で表現して下さる方だったので、それに対してもすごく救われた感覚が強かったです。やっぱり憧れられたり愛されたりする役は、どこかでずっと「自分で大丈夫なのかな」と不安なんですけど、塩野さんもウイカちゃんと同じように表現して下さって2人にセリフの上だけではなく持ち上げてもらえたことが不安要素を減らしてくれました。
一条天皇とのシーンは総じて複雑で、最初の頃は可愛い弟分でそこから男性として見るようになって愛し合って、その後はただ好きということだけじゃなくて「この人に見放されたら自分と子供が行く場所がなくなるし、終わってしまう」という保身的な意味も加わってきたんですけど、それに対して一条天皇は愛一本勝負で来てくれるキャラクターで、そこの温度差というか男性と女性の考え方の違いもすごく見えて。後半は、愛情をもらうのは嬉しいし、こっちも全力で応えたいけど、それだけじゃないことも考えなきゃいけないという混沌とした感情でした。ただ好きで相手を求めるという気持ちだけではいけないもどかしさみたいなところで、相手に対する愛情が減ったわけでもないし、色々な状況によって首が絞められるような苦しさがずっとありました。でも一貫して愛情を持ってお芝居もして下さったのでそこに対しての不安な気持ちは全然なかったです。塩野さんの顔が彫刻みたいに綺麗だから平安の衣装が似合っていて同じ画面に並びたくないなというのはずっと思っていました(笑)。
― 中盤が特にしんどかったということで、特に演じていて難しかったりどう演じるか悩んだりしたシーンを教えて下さい。
高畑:特定のシーンではないですが、一番悩んだのは出家する前、政治的な考えを持ち始めるタイミングです。もちろん自分の家族を守らなきゃいけない立場なので、自分の兄や父が悪い方に行かないように力を使いたいということは、定子の中ではものすごく芯の通っていることなんですけど、それと同時にそこに夢中になると一条天皇への愛情も嘘に見えるじゃないかというシーソーが難しくて、ものすごくあざとく見えてしまうんじゃないかというのは結構悩みました。絶対家族のことも考えなきゃいけないけど一条天皇との愛も嘘じゃないからお互いにちゃんと本当に愛し合っていたという風にはしたくて、出家してしまってからは論点が変わっていったんですけど、出家する前は政治的な話にも口を出しつつ一条天皇との関係性も作っていくところに悩んで監督にも相談していました。政治のために一条さんと仲良くしているという印象になるとそこから先が全部そうなってしまうという恐怖があったので、撮影中も監督に、「あざと過ぎなかったですか?」と確認をしたり、本当に針の穴に意図を通す感覚というか、映像ではサラッと流れていくかもしれないけどその辺りが自分の中では鬼門でした。
◆高畑充希、主演・吉高由里子との関係性
― 高畑さん自身は、定子は幸せな人生だったと思いますか?
高畑:難しいですね。一般的な幸せみたいなことを知らなかったとしたら、自分で「幸せな人生」と思っていてもいいと思うんです。でも定子の場合、幼少期が結構ちゃんと幸せだったのでそこから家族が離れていくのは結構辛いかなと。なかったものがないままよりは、あったものがなくなる方が辛いのかなという印象があるので特に後半は幸せだったとは言い切れないかなと思います。一度「死にたい」くらいに絶望しましたが、どれだけ落ちた状態においても、定子はやっぱり幸せを見つける気力がある人でその強さがすごく素敵だなと思っていて好きなところです。
― 定子の能動的な考え方や性格が彼女の人間関係にどのような影響を与えたのでしょうか?
高畑:自分がちゃんとあった人だと私は捉えているので、清少納言との関係性を作れたし一条天皇に愛してもらえたのは絶対あるんですけど、頭が切れたからこそ姑に煙たがられてしまったり、彼女の良いところがマイナスに転んでいる瞬間も多々あるから、人としては好きだけどもう少しなんとなく生きているような人だったらこんなに苦しまなくて済んだのかなとも思います。
― 吉高さんとの直接の共演シーンは少なかったと思うんですが、高畑さんから見たまひろ、あるいは吉高さんの俳優としての印象を教えて下さい。
高畑:吉高さんは先輩でもあり友人でもあるような関係性です。ご本人の明るい人柄もあって、一緒にいるとふざけてしまうというかすごく周りを楽にしてくれる人という印象です。すごく寛大な人なのでそれがハードな現場の中では息抜きになることもあるし、そこに救ってもらえることが多いです。現場じゃないところで会うといつもお互いふざけてしかいないので、今回の共演シーンはワンシーンだけで対話がほぼなかったんですけどお互い真面目にセリフを話しているのがちょっと笑えてきちゃうぐらいでした(笑)。
◆高畑充希が考える「光る君へ」の魅力
― 高畑さんから見た「光る君へ」の魅力はどういうところにありますか?
高畑:全キャラクターがすごく生き生きしているように感じます。皆が良い面もあり悪い面もありそれがどんどん絡んでいきながら、気づくと史実になぞって話が進んでいくという。戦がない分人間ドラマが見応えある印象で、令和の時代に生きていて平安時代の人と人の関わり合いが身近に感じられるものじゃないと思うんですけど大石さんが描かれるととても身近なものに感じるし、恋愛の場面はときめけるし、政治とか陰謀とか気持ちの絡み合いにはハラハラできるし、1年という長い期間も「次が観たい、どうなるんだろう」と毎回思わせてもらえて、素敵だなと思います。
― これまで数々の役柄を演じられていますが、この定子という役はご自身にとって女優としてどんな経験になりましたか?
高畑:色々な役をやらせていただく度にそれぞれの役でもらうものも大きいんですけど、今回本当に自分が学んできたものと自分の体感が一致した感覚がものすごく新鮮で、この年齢になってやっと日本の文化の美しさを知れて、地上波のドラマでやれることがすごく幸せだなと思いましたし、「こういう作品を海外の方に観てもらえたらいいのに」と思ったりもしました。かつて自分の中に染み込んでいた平安のなんとなくの知識と自分の感覚がバシッとハマってぐっときた経験が初めてだったので、多少でも勉強しといてよかったなと思いましたし、出られたことが本当に幸せだったなと思います。
(modelpress編集部)
◆「光る君へ」第29回あらすじ
まひろ(吉高由里子)の娘、賢子は数えの三歳に。子ぼんのうな宣孝(佐々木蔵之介)に賢子もなつき、家族で幸せなひとときを過ごしていた。任地に戻った宣孝だったが…。まひろを案ずる道長(柄本佑)は、越前国守の再任かなわず帰京した為時(岸谷五朗)に子の指南役を依頼するが、為時は断ってしまう。一方、土御門殿では、詮子(吉田羊)の四十歳を祝う儀式が盛大に執り行われていた。しかし、詮子の身体は弱っており…。
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