東大生100人に聞いた「夏休み明け直後のスランプ、嬉しかった親の声掛けと行動」（中学受験編）

　東大に合格するような子供が育つ家庭では、親のさまざまな工夫が行われている場合が多い。勉強面だけでなく、生活面やコミュニケーションの面から、他の家庭とは少し異なることが行われている。

　東大生100人へのアンケート結果をもとに、東大生の親がどのように夏休み明け直後のスランプを乗り越えたのかを考察する。今回は「中学受験編」。

親の「明るさ」に子は救われる
　夏休みが明けて、受験が近付いてくると、いよいよ自分のレベルと志望校のレベルの乖離に苦しむ受験生が増えてくる。行きたいと思っている中学に行けないかもしれないと怖くなってきて、勉強ができなくなってしまう場合がある。成績が伸び悩み、苦しくなってしまう受験生も多い。そんな中で、東大に合格する子供が育つ家庭ではどんな声がけがされていたのか。これに関しては、アンケートから2つの答えが得られた。

　1つは、「合格できる」と根拠のない自信を親が持ち続けるというものだ。子供に対して、「大丈夫だよ、合格できるよ」「きっと問題ないから、頑張ろう」と声を掛け続ける。この際に、別に根拠はなくていい。「この成績だとこうだからここに合格できるはず」と言うのではなく、内心親としても「このままだと、第一志望は難しいかもな」と思っていたとしても、そんなことは顔に出さず、とにかく「大丈夫」と言い続ける。

　中学受験において、子供は親の顔色をよく見ている。まだ何か大きな挑戦をした経験の少ない子供は、自分のレベルと志望校のレベルがどれくらい乖離しているのか、知識としては理解できても経験としては理解できない。たとえば、合格判定模試の結果に記された自分の合格可能性のパーセンテージを見ても、「数字」と「自分の合格可能性」の関係にいまいちピンとこない場合が多い。だから、親や周りの大人の態度で、「自分がどれくらい合格できる可能性があるのか」を考えていることが多い。テストの結果を見て怖くなるというよりも、テストの結果を見た親が「この子は第一志望は難しいかも」と考えていると、その反応を察知して怖くなっていくというケースが多いのだ。

　だからこそ、親が不安そうな顔をするのは良くない。逆に、根拠なく「大丈夫」「合格できる」と声を掛け続けることで、子供のメンタルはプラスな方向に向く。親が「大丈夫！」と明るい態度であれば、子供は最後まで走り切れる場合が多い。第一志望に合格するのは難しいかもしれなくても、第二・第三志望には合格できるかもしれない。最後まで走り切ることができれば、選択肢はきっと増える。

　もう1つは、家族で食事に行くこと。たとえば焼肉屋や回転寿司など、子供が喜ぶ食事に連れていく。その時間は勉強のことは忘れ、とにかく美味しいものを食べて楽しむ。勉強が気になっていたり、塾の宿題をしようとしたりしていてもそれをブロックして、勉強とは関係ない話題で話をする。

　子供は、根を詰めすぎてしまうことがある。スランプの原因として、受験という目標にのみ邁進するあまり、視野が狭くなってしまい、問題文を読み飛ばしたり計算ミスをしたりと、普通であればあり得ないミスを連発することも。そうならないようにするためには、とにかく一度「受験」と距離を取り、物事を客観視するタイミングをつくるのだ。

東大生の声1：親から受験期に散歩に連れて行かれ、その後食事をした。3時間くらい何も勉強しない時間だった。自分が「こんなことしてて大丈夫かな」と言ったら、「急がば回れだよ」と言われた。

東大生の声2：勉強で根を詰めていたときに、家族みんなで焼肉屋に行って、お兄ちゃんの受験期のやらかしなどを聞いてみんなで笑っていた。「いつか自分の受験も笑い話になるのかな」と思うと気分が軽くなった。

　以上の2つの例からも、親の役割は、泰然自若として受験に対して必要以上に恐れないことだと言える。子供に引っ張られて親もあたふたしてしまうと、家庭全体がうまくいかなくなってしまう。あくまでもいつも通り、普段通りに接することが肝要なのかもしれない。