東大生が考えた「総合型選抜に向いている人」の3つのタイプ
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大学の入試システムの多様化は、学生にとって、チャンスを広げるものとして機能している。一般入試ではなく総合型選抜入試で受験したことで、模試の偏差値での判定上かなり合格が難しかったような難関大学に合格できたという人もいる。本記事では、どんな学生が総合型選抜入試に向いているのかについて話したい。
「総合型選抜」に向いている人って?
総合型選抜入試において重視されるのは、「他の受験生との差別化できるポイント」だ。多くの受験生からの志望理由書が大学に届き、1日に何十人もの受験生と面接が行われるため、試験官が「この受験生は他の受験生と違う」と感じるようなポイントを用意しないと合格できない。そのためには、「多くの人に当てはまること」ではなく「他の受験生であれば当てはまらないこと」を考えなければならない。そうしたポイントが用意できる受験生は合格しやすい。
とはいえそれは、「特別な実績」である必要はない。独自性・差別化のポイントというのは、自分から作り出せるものでもある場合も多い。本来はオリジナリティのある経験をしているにもかかわらず、それに気付きていない学生も、かなりの数いる。
意外に思われるかもしれないが、東大生でも、特別な実績がない中で合格している学生も少なからず存在する。高校時代に課外活動を行っていなかった、志望理由書を提出するときに「実績を書いてください」という欄があり、そこに自分は何も書くことがないと焦った、という学生も多かった。そういう人でも東大に合格している。そういう人は、どのようにして「他の受験生であれば当てはまらないこと」を用意していたのか?
1.地域に根差した活動を行っている人
特別なことでなく、学校のイベントの一環だったとしても、地域と連携した取組みを行っている場合は、実績として高く評価される場合がある。たとえば東大推薦生でも、地方部に住んでいる学生が、自分の地域を盛りあげるためのボランティアを行って合格するケースは多い。
「生徒会の一員として、地域の方々に文化祭を手伝ってもらったのですが、そのときの苦労を書いたらかなりそれが面接官の印象に残ったらしい。特別な活動なんてしていないはずなのにとても驚いた」という人もいた。学校の文化祭の盛りあげやボランティア活動をしている学生は多いが、都内でたくさんの人がやっているボランティアよりも、地方部で参加者が1人のボランティアの方が希少であり、独自性がある。そこに、「自分は今までこういう地域で育ってきて、この地域のこういう課題を目にしてきて、だからこそ高校時代にはこんなボランティアを行っていた」とストーリーを作って語れるのであれば、かなりオリジナリティのある話になる
その生徒にとっては「当たり前」の日常だったかもしれないことが、都会の大学の先生には「差別化ポイント」として映る場合もある。地域の商店街と連携して割引クーポンを作った活動が評価されたという学生もいた。どのような形であれ、地域との連携は評価され得る可能性があるというのは多くの人に知っておいてほしい。
2.学校の探究プログラムを熱心に行っている場合
通っているのが私立の高校であれば、特色のある教育プログラムが行われているケースも多いだろう。「探究の時間のプログラムでこうした取組みを頑張っていた」とか、「情報の時間でこんな課題を提出した」とか、その学校独自の取組みをプレゼンできる受験生は有利になる場合がある。東大推薦生でも、学校の取組みをそのまま評価してもらったという人がいた。もちろんそのプログラムに一生懸命取り組んでいることが前提となるが、決して課外活動だけが差別化ポイントになるわけではないというのは覚えておいて損はないだろう。
3.あえて少数派になれる道を選んでいる場合
大学の選び方次第で、独自性を作れることもある。
こんな事例がある。高校が理系の実験・研究が盛んであり、一般受験では理系で志願していた生徒が、あえて文系学部を志望して、「理系と文系が融合した、こんな方向性の研究をしたい」とプレゼンして合格した、というものだ。詳しく話を聞くと、その生徒は高1の進路調査のときに理系か文系かで最後まで迷ってしまい、理系ではどんな勉強ができるのか、文系ではどんな勉強ができるのかについてかなり詳しく調べて理系にしたのだという。そうした経緯から、文系・理系という垣根について詳しくなり、その結果「理系なのにあえて文系学部を志望する」という選択に至ったのだという。このように、大多数の人が選ばない道を進んだ経験がある人は、推薦で評価される場合がある。
最後に、選抜入試とは「マッチング」の要素がすごく強い入試形態であるということは多くの人に伝えたい。自分の思いも寄らぬ趣味が評価されることもある。たとえば、法政大学の文学部地理学科では、自己推薦入学試験要項の最初に、このような文言が書かれている。
法政大学 2023年度 文学部地理学科 自己推薦入学試験制度について
文学部地理学科では、2004年度より自己推薦入試を実施しています。この入試制度は、従来実施している一般入試・大学入学共通テスト利用入試とは別の選考方法・基準により入学者を募集するものです。地図を眺めていると時間を忘れてしまう人、三度のメシより地理が大好きだという人、そんな人の応募を歓迎します。
「地図が好き」「地理が好き」という人を募集する、というのが大きく表明されている。通常、こうした個性はただの趣味として捉えられ、アピールポイントとして考えない受験生も多いだろう。しかし、この大学ではそのポイントこそが重視されている。このように、自分がアピールポイントだと思っていないことを評価してくれる大学があるかもしれないと考えると、思いも寄らぬ選択肢が見えてくるかもしれない。ぜひ積極的に情報収集をしていただきたい。
《西岡壱誠(カルペ・ディエム)》