胎児期の水銀ばく露、子供の発達に影響なし…エコチル調査
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エコチル調査は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子供の健康に与える影響を明らかにするため、2010年度から環境省が全国で約10万組の親子を対象に開始した大規模な出生コホート調査である。調査では、さい帯血、血液、尿、母乳、乳歯などの生体試料を採取し、子供の健康と化学物質などの環境要因との関係を明らかにしている。
今回の研究では、3,822組の母児を対象に、さい帯血中のメチル水銀と無機水銀を測定した。メチル水銀と無機水銀の中央値はそれぞれ7.39ng/mL、0.25ng/mLであり、さい帯血中に存在する水銀のほとんどはメチル水銀であった。妊娠中の食事内容に関する質問票から得られた情報をもとに、魚介類の摂取とさい帯血中のメチル水銀および無機水銀の関連を解析した結果、いずれの水銀においても、カツオやマグロといった大型魚の摂取量ともっとも高い相関を示していることがわかった。
エコチル調査では、子供の神経発達を評価するため、2歳時および4歳時に新版K式発達検査2001を実施した。この検査では、姿勢・運動、認知・適応、言語・社会という3つの領域で発達指数を評価し、そのうえで総合的な発達指数を算出する。さい帯血水銀濃度の測定と、この発達検査を実施した3,083人の子供を対象として、その関連を解析したが、メチル水銀および無機水銀において明らかな関連は認められなかった。
さらに、さい帯血メチル水銀濃度で参加者を4つのグループに分けて解析を行ったが、それぞれのグループにおける発達指数には明らかな差は認められなかった。今回実施した新版K式発達検査においては、発達指数が70未満であれば年齢に比べて発達が遅れていると推測するが、メチル水銀濃度がもっとも低いグループを基準として、それぞれのグループで発達指数が70未満となるリスクも比較したが、明らかな関連は認められなかった。けいれんや熱性けいれんに関しても、明らかな関連は認められなかった。
研究では、さい帯血中のメチル水銀および無機水銀と子供の神経発達の関連を解析し、明らかな関連が認められないことを明らかにした。しかし、子供の神経発達は非常に多くの要因によって影響されるものであり、今回の研究だけでは結論を出すことはできない。長期的な影響を検討するためにも、今後さらなる研究の積み重ねが必要だという。
胎児期の水銀ばく露が子供の健康にどのように影響するのか、引き続き調査を継続していく。魚介類の摂取だけでなく、どのような環境や生活習慣がそれぞれの水銀ばく露につながるのかを明らかにすることで、妊娠中の過ごし方に関する適切な提言につながると考えられる。調査の継続により、子供の発育や健康に影響を与える化学物質などの環境要因が明らかとなることが期待される。
《栄亜衣》
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