妊娠中の喘息・子供の喘息悪化のメカニズム解明…九州大
子育て・教育
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喘息は世界中で約2億6,000万人以上が影響を受けている重大な健康問題である。妊娠中の環境要因、特に母親の喘息やストレスが子供の喘息発症リスクを高めることは知られていたが、その具体的なメカニズムは不明だった。
九州大学生体防御医学研究所の伊藤美菜子准教授らの研究グループは、喘息を起こした母親マウスから産まれた子供の肺において、2型自然リンパ球(ILC2:免疫システムの一部である自然リンパ球の一種)の数が増え、アレルギー応答を引き起こす機能が高まることを発見。母親の喘息により、胎生期および成体の肺のILC2では共通するエピジェネティック(DNAの配列そのものを変えることなく、遺伝子の働きを調節する仕組み)な変化が維持され、アレルゲンに対するアレルギー応答が過剰になることが明らかとなった。
さらに、妊娠中に母親がストレスホルモンであるグルココルチコイドに曝されることでも、胎児の肺ILC2に母親の喘息時と同様の変化が生じ、子供のアレルギー性炎症を増悪させることがわかった。この発見は、妊娠中の母体の健康やストレス管理が子供の喘息予防において重要であることを示している。
今回の研究は、妊娠中の母親の健康管理が子供の将来の健康に直接影響を与える可能性を示唆しており、今後の予防策や治療法の開発に寄与することが期待される。研究成果は2025年1月14日、英国の雑誌「Nature Communications」に掲載。研究に関する問合せは、九州大学生体防御医学研究所の伊藤美菜子准教授まで。
《神林七巳》