【共通テスト2025】東大生が「理科(物理・化学)」を解いてみた「かなり難しい」 | NewsCafe

【共通テスト2025】東大生が「理科(物理・化学)」を解いてみた「かなり難しい」

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北海道大学 試験会場に向かう橋に雪だるま(記事の内容とは関係ありません)
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 2025年1月18日・19日にかけて、大学入試共通テストが実施された。センター試験から共通テストへと変更されて5回目の今年。2022年度に学習指導要領が改訂されてから初の新課程での共通テストの実施となった。その中身はどのようなものだったのだろうか。

 今回、東大生10数名が各科目を解き、例年との比較を行った。今回は、19日に実施された理科の科目の中で特に受験者の多いであろう物理、そして化学の2教科に関して、その結果を共有したい。

2025年度「物理」「化学」概観
 まず、物理は全体の問題数は昨年度の22から24へ増加したが、そこまでの大きな変化とは言えないだろう。大問数も変わらず4題であり、大問構成としてはほぼ据え置きであった。「実験とその考察」に焦点を当てた問題も変わらず出題されていたが、こちらの難易度は昨年度に比べてやや上昇したように思われる。昨年の物理の問題は、考察要素に重点を置いていたからか数式的に難しい思考を要する問題が少なく、感覚的に、あるいは公式を覚えていれば容易に解ける問題もあった。一方で、今年度は考察の面でも立式の面でもやや高度な思考力を要する問題が多くを占めたように思われる。

 次に、化学について述べる。化学の問題数は昨年度の31から34へやや増加。大問数は5で据え置き。問題構成については、旧課程のみ選択問題があったがその内容は1問を除いて同じであった。その1問も、エンタルピーという概念を用いているか熱化学方程式を用いているかの違いであり、本質的な違いはなかった。しかし、初見の設定に対応させる問題が増えた(沸点上昇度を考慮した塩化ナトリウムの析出・NaIに関する一連の反応・バナジウム化合物とEDTAに関する反応など)ように思われる。いかにもっている知識と演習経験を初見の設定に生かせるかが得点を分けたように思われる。

 ここからは、実際に東大生が解いてみた上で特に面白いと思った問題について、まずは物理、次に化学の順番で、大問ごとに抜粋して紹介していく。

物理:高度な思考力が必要
 物理では、第1問は例年どおり小問集合が登場。特に高度な考察を要する問題も無く、一定レベルの演習を積んでいた受験生であれば完答できたと思われる。注目するとすれば問4であろうか。与えられた文字は速度しかなく、自分で必要な文字を設定して問題を考えなければいけないという点では思考力を要したと思われる。

 第2問は、振り子の運動についての問題であった。注目したいのは問3である。実験の誤差について考察するまさに共通テストチックな問題であった。この手の考察を感覚的に解こうとすると間違えてしまう可能性は高い。しっかり立式して代数的に考える必要があった。

 第3問は熱力学と波動の2題構成であった。熱力学の方はグラフを用いて仕事量や内部エネルギーについて考える、至ってシンプルな問題であった。グラフの選択問題が登場したが、これも感覚で選ばず、しっかり立式をして代数的に解答したいところ。波動の方は実験をテーマにした問題であるが、難易度自体はそこまで高くはない。最終問題では、共通テストではあまり見られない波の重ね合わせの式が登場したが、干渉に関する基本的な問題であると見抜くことができれば後は早いだろう。

 第4問は電磁気についての実験を踏まえた問題。内容自体は問題集で散見される導体棒の運動の問題であるが、グラフの読み取りが鍵となる点においては共通テストらしい出題と言えよう。この大問でも適切なグラフを選択する問題が2問出題された。こちらも導体棒の条件を見極めた上で式を立て、着実に正解したい。注目したいのは問7の自己インダクタンスの問題。コイルの自己インダクタンスについて対策をして共通テストに挑んだ受験生はそう多くないのではと思う。一方で自己インダクタンスの基本的な演習ができている受験生にとっては容易な問題であっただろう。差がついた問題と言える。

化学:初見の設定が肝心
 続いて、化学について述べる。

 第1問は例年通り小問集合であったが、注目したい問題は多い。まず問4のコロイドについての出題。昨年度に続いてコロイドに関する問題が出題されたというのもやや驚きではあるが、今回の出題内容は「塩析・懸濁液・電気泳動・ブラウン運動・チンダル現象」というようにコロイドに関する知識が満遍なく問われたという点で非常に興味深い。特に「懸濁液」の分散質と分散媒が何であるかを知っていた受験生は少なかったであろう。次に問5aの塩の析出に関する問題。先述の通りまず設定がおそらく初見の受験生は多く、かつやや難解であったため、頭を悩ませた受験生も多かったのではないだろうか。さらに「沸点上昇度は8K」という条件を見逃した受験生も一定数いたと思われる。問5bの浸透圧の問題でも「NaCl水溶液の浸透圧を求めるときは、NaClが電離するので濃度の値は2倍しておく必要がある」という操作を忘れてしまっていた受験生は多かったのではないだろうか。条件をよく読み込む必要があったという点で問5は難しかったと言える。

 第2問は内容自体はそこまで難しいものではないが、注目したいのは問1である。「ルミノール現象」「ネオンサイン」という大学受験ではあまり扱われることのない話題があったり、枕草子からの引用があったりと、内容面でも問題形式でも面白い点があった。ネオンサインの発光の原理がネオンの真空放電によるものだと知っていればこの問題は即答できたであろう。もしネオンサインの原理を知らなくても、ネオンが希ガスであることを踏まえればネオンが化学反応によって光っているわけではないことは予測がつく。

 第3問は例年通り無機化学からの出題であった。注目したいのは問4のヨウ素についての出題。NaIやNaIO2がどのような反応を起こすかを知っている受験生はごく少数であったと思われる。初見の物質・反応について考えさせる共通テストらしい問題であった。昨年もNiについての出題が3問あり、無機化学での「初見の物質・反応について考察させる」というスタイルは今後も続きそうである。

 第4問は有機化学からの出題。ここでも無機化学同様に「ポリビニルブチラール」という初見の物質についての計算問題が出題された。しかし、内容としてはビニロンについての典型的な計算問題(アセタール化の割合の計算問題)に類似した形式であったため、対応できた受験生は多かったであろう。昨年も同様に「サリシン」という物質についての問題が出題された。初見の物質を用いた問題に向けて今後も演習を積む必要があるだろう。

 第5問は、石油精製と原油中の有機化合物についての出題。こちらも例年通り分野横断型の問題となった。難易度としては第2問に次いで難しかったように思われる。まず問1の原油分留の問題。ここは完全に知っているかどうかで決まる問題であった。しかしながらこの原油分留については、教科書などでも扱われてはいるもののあまり目立ちはしないため、知らなかった受験生が大半ではないかと思う。著者個人的には、この問題は解けなくても仕方ないように感じた。続いて注目したいのは問3のa。オキシドバナジウムイオンのバナジウム原子の酸化数を求める問題だが、この問題で意外と差がついたのではないかと思う。「陽イオンを構成する原子の酸化数は、イオンの価数分だけ酸化数をプラス? マイナス? そしてどの原子の酸化数を調整するの?」と迷った受験生が多かったのではないだろうか。「そのイオンを構成する原子の酸化数の和が、そのイオンの価数に等しい」というところに気づけたかどうかがポイントであった。最後に、問3のdに注目したい。先ほどのオキシドバナジウムイオンがエチレンジアミン四酢酸と化合してVO-EDTAを形成し...という未知の単語が羅列された文が続くが、この問題のポイントは「オキシドバナジウムイオンとエチレンジアミン四酢酸は物質量比1:1で化合する」というところである。ここを理解すれば、後はただの物質量についての計算である。初見の反応であっても問題文中の作業手順を丁寧に逆行しながら計算をしていけば答えに辿り着ける、まさに共通テストらしい問題であった。

 今年度の共通テストの物理・化学は、全体として初見の設定や実験について考察させる問題が増え、どちらも昨年度よりも解きづらくなったと思われる。依然として時間もシビアであり、ある程度の計算スピードも求められた。今後の共通テストに向けては、初見の設定から知っている知識・問題形式へもっていく力、正確にかつ速く計算する力を鍛えていく必要があるだろう。

 もちろん、基本的な知識も必要なことは確かである。物理・化学共に典型問題は多く出題されており、そうした問題に対して迅速に解法を導き、初見の設定の問題や実験考察の問題に多く時間を割けるようにしたい。

 今回、共通テストの理科を解いてみて、著者自身も昨年度よりかなり難しいと感じた。要求される知識・技術の水準がますます高くなり、たとえ難関大受験生であったとしても「たかが共通テスト」とみくびっていると失敗しかねないレベルになってきている。今これを読んでいる人、特にこれから受験期に入る人は、是非とも確かな基礎知識と典型問題への各種アプローチを身に付け、難解な設定に対する応用力を鍛えていってほしいと思う。

《カルペ・ディエム》

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