東大生100人に聞いた「入試直前、うれしかった親の声かけ」
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そんな受験本番の直前、親御さんはどのような声かけをしていたのか。今回は東大生100人アンケートと取材の結果わかった東大生の親の声かけを共有する。
緊張が解ける親の声かけとは
まず、多かった声かけは、「冗談」だった。
・うちの親は自分の高校受験を引き合いに出し、「解けない問題が多過ぎて『入れてくださいお願いします』って書いたな~」という本当か嘘かわからないボケをしてきたのを覚えている。
・(桜蔭中学を受験したときに)学校に続く坂道を母親と登っている途中、母親が(実は桜蔭の卒業生ではないのに)「私が通ってた頃はねぇ…」とか、(わが家は医師家庭ではないのに)「もしダメでも、うちの病院を継げば良いのよ」とか、ウソの「親も桜蔭卒・医師」という威圧をさりげなく撒いて周囲の受験生を萎縮させるという作戦に出ていて、面白い親だと思って、なんだか緊張が解けて笑顔になったのを覚えている。
このように、子供を笑わそうとする行動をとる親が結構いたのは印象的だ。また、言動で笑いをとるようなことはしなかったが、明るくふるまい、親が緊張しているような態度を見せないようにしている家庭が多かった。
逆に、ストレートに「頑張ってね!」「応援しているよ!」といったことを言われたという東大生の数は少なかった。これに関して何人かの東大生の親に話を聞いたところ、「『頑張って!』といった、応援するような声かけはかえってプレッシャーになってしまう気がして、冗談を言って緊張をほぐそうとしていた」とのことだった。つまり多くの東大生の親は、受験の緊張を笑い飛ばして緩和させるような声かけをしていたといえそうだ。
受験直前、自己肯定感を高める声かけ
もうひとつは、少し冗談めかして、子供の自己肯定感を高くするような声かけだ。
・「〇〇は天才だから絶対受かるよ!」と言われた。
・「〇〇が受からなかったら、学校は見る目がないね!」と言われた。
受験直前期、受験生本人は「自分なんかが本当に合格できるのかな」と不安になることが多い。だからこそ、親が子供を無条件でほめることが精神的な救いになるケースが少なくない。
それをストレートに「大丈夫だよ、受かるよ!」と言っても良いのだが、「受からなかったら、学校は見る目ないね!」のように、少し冗談めかして言うことで逆に心にスッとその言葉が入ってくることもある。「笑い」の力を使って相手を応援するというのは、有効な手立てだと言えるだろう。
一番多かった「入試直前でうれしかった親の声かけ」とは
実は、一番多かったのは、「何も言われなかった」ということだった。
・受験では何も言われなかったのが逆にうれしかった
・高校受験と大学受験(現役・浪人含め2回)は、すべて何も言われなかった。でも、受験校は自分で決めたのだし、高校受験のときはまだしも大学受験のときはもう精神的にも自立していたと思うので、特に不安を親に解消してもらおうとかはなかった
このように、子供の頑張りを見守りつつも、別に何か特別なことは言わないという親が多かった。普通に接して、普通に送り出すという家庭が多かった。そして、これが逆に東大生たちからは「うれしかった」と言われていた。頑張っていることを認めてくれているように感じた、と。逆に、「大丈夫?」などと心配そうに聞かれると、自分の頑張りを認めてもらっていないかのように感じてしまうという人も多かった。
受験というと、何か特別な言葉をかけてあげるべきなのではないか、と親御さんは気負ってしまうかもしれない。だが、何かを口にすると、それが何らかのプレッシャーになってしまうこともある。そう考えると、特に何も言わず、黙って送り出してあげても良いのではないかと思う。
結果ではなく努力を認める
最後に、何人かの東大生の親がやっていたことが、「合格発表でなく、受験の終わりの日にご馳走を出す」ということだった。
普通なら、合格発表までお祝いをすることはないかもしれないが、いくつかの家庭では「頑張り切った」ということ自体をほめることで、受験の終わりに「よく頑張った」という意味でご馳走を出していたというわけである。合否そのものではなく、子供の頑張りを認めてあげる態度を取っている親御さんの家庭だと、結果的に受験がうまくいく場合が多いということなのかもしれない。
《西岡壱誠(カルペ・ディエム)》