国立国会図書館、遠隔複写サービスでPDF提供

　国立国会図書館は、2025年2月20日から遠隔複写サービスにおいて、複写物をPDFファイルで提供する新サービス「遠隔複写（PDFダウンロード）」を開始する。

　これまでの紙の複写物を郵送する「遠隔複写（郵送受取）」に加え、PDFファイルでの提供が可能になる。申込みおよびPDFファイルのダウンロードは国立国会図書館サーチから行う。

　同サービスは、2021年の著作権法改正を受けて実施される。改正により、図書館等では利用者の調査研究のため、著作物の一部分をインターネット等で送信することが可能になった。これを受け、権利者、出版社、図書館等の関係者による協議会が設置され、必要事項について協議が行われてきた。

　対象となる資料は、国立国会図書館の所蔵資料（デジタル化資料を含む）。ただし、楽譜の出版物、地図の出版物、写真集、画集、発行後1年以内の雑誌等は対象外となる。

　利用できるのは、国立国会図書館の個人の登録利用者（本登録）のみ。簡易登録利用者および図書館等の機関からの申込みはできない。

　複写料金は、複写物の作成に要する費用と著作権者に支払う補償金に相当する額の合計となる。複写物の作成に要する費用は、複写する資料の種類と複写方法によって料金が異なる。補償金の詳細は、図書館等公衆送信補償金管理協会（SARLIB）Webサイトの「図書館等公衆送信補償金規程」で確認できる。また、同サービスの詳細については、2月20日から「遠隔複写サービス」のWebページに掲載される予定だ。

　この新サービスにより、来館せずに国立国会図書館の所蔵資料を利用できる範囲が広がり、研究者や学生の調査研究活動の支援が一層進むことが期待される。一方で、著作権法の定めにより複写可能な範囲は原則として著作物の一部分に限られるため、利用者は注意が必要だ。

　国立国会図書館は今後も、デジタル技術を活用しながら、資料の利用しやすさと著作権保護のバランスを取りつつ、サービスの拡充を図っていくものと見られる。