もし地震や水害などでライフラインを断たれたら、みなさんは何日間、自宅で避難生活をできますか? 電気、水道、ガスなどが使えない中で生活するには、水や食料はどのくらい備蓄しておけばよいのでしょう。
「家族全員分だと、どのくらいの量の食料が必要?」「トイレや洗濯など生活水の備蓄ってどうすればいいの?」
備え・防災アドバイザーの髙荷智也さんによれば、在宅避難の備蓄は「短期備蓄」に該当し、少なくとも3日分の準備が必要とのこと。食料備蓄には、「短期備蓄」も含めて以下のような種類があるそうです。
1)避難用の食料・・・数日分程度(走って逃げるための準備)2)短期備蓄・・・最低3日、できれば7日分程度(自宅に留まるための準備)3)長期備蓄・・・1ヶ月分以上の備蓄(食料危機から命を守る準備)
今回は「2)短期備蓄」=自宅避難時用の食料についてお届けします。
※この記事は、『食料備蓄はじめてBOOK 備蓄ノウハウ55 防災リュック・在宅避難・食料危機まで完全ガイド』髙荷智也・著(
「短期備蓄」で、「食事」と同じ日数分の用意が必要なものとは?
短期備蓄は、災害時に自宅へ留まる「在宅避難」をするために準備する食料です。停電や断水が生じている恐れもありますが、カセットこんろやポータブル電源などを準備することで、普段に近い食事を準備することも可能です。
いわゆる「THE 非常食」を大量に準備しても構いませんが、お金や賞味期限管理の問題が生じますので、普段食べているものを少し多めにストックし、平時から食べて入れ替える「日常備蓄」の手法を取り入れるのがおすすめです。
なお、在宅避難をする際には食事とあわせてトイレの確保が重要です。水・食料を1週間分準備するならばトイレも1 週間分、入口と出口はセットで用意しましょう。
人によっては「備蓄品の量は、多すぎてもよくない」理由
大地震や水害などの災害に見舞われても、自宅が無事であれば避難所へ行く必要はありません。しかし、災害の影響で停電や断水が生じたり、物流が停止して買い物ができなくなったりすると、普段通りの生活を行うことは難しくなり、避難所へ行かざるを得なくなります。避難所は宿泊施設ではないため、環境は決してよいものではありません。
そのため、ライフラインが止まっている状況で、自宅に留まるための備蓄が必要になります。量としては、最低3日分・できれば7日分が目安となります。
備蓄品の量が多いほど普段と同じような生活を送れますが、備蓄の難易度も上がります。すると備蓄が大変になり、ある日息切れして食料備蓄をやめてしまう、と言うことが生じます。
防災は重要なことですが、無理をすると長続きしません。備蓄はできるだけ生活と財布に負担がかからない方法で行いましょう。命を守ったあとの防災は楽をしてよいのです。
在宅避難用の食料備蓄方法は、準備のしかたが異なる2種類あり
災害に備えた専用備蓄・・・段は倉庫や物置に収納し平時は使わず「非常時にだけ」食べる備蓄
企業や自治体が多く採用する方法が専用備蓄です。賞味期限が長く保存性に優れた備蓄食を事前に確保し、災害発生時にだけ使用します。防災専用の保管場所や費用が必要となりますが、確実に一定数を備蓄できます。
平時にも使う日常備蓄・・・普段からキッチン周辺に収納し平時はもとより「非常時にも」食べる備蓄
家庭におすすめなのが日常備蓄です。災害時にだけ使うグッズは防災リュックへ入れ、平時にも使えるものは「どう
せ使うものを多めに買い、普段使いしながら入れ替える」ことで、保管場所や費用の負担を軽減します。
1日何百リットルも必要な生活用水、「水そのもの」を準備するのはムリ。そのかわりになるものとは?
水の備蓄方法には2 つの方向性があります。飲料用や調理用に「水や飲み物」を準備する方法と、トイレや風呂などの生活用に「水道の利便」を道具で準備する方法です。
水や飲み物の量の目安は「1日あたり1名に3」ですが、生活用水は膨大で、平時には1名辺り200 ~ 300程度の水が必要となります。そのため、生活用水を「水」だけで備蓄することは物理的に困難です。
トイレは袋と凝固剤がセットになった「備蓄トイレ」を使い、風呂は身体を拭うことのできる「備蓄ボディタオル」や「ドライシャンプー」などのグッズを用意します。
食器洗いをしない前提で、食器にラップを被せて使ったり、紙皿や紙コップを使う準備をするのもおすすめです。洗濯はあきらめて着替えを多めに準備するなど、日常、水道で得ている利便を道具で代替する準備が、生活用水の備蓄の代わりとなります。
「家屋が倒壊したら備蓄は無駄」は間違い!大災害以外で備蓄が必要になる場合も
自宅に備蓄品を確保しましょうという話を聞くと、大地震で家が倒壊したり、水害で自宅が沈んだりしたら、すべて無駄になるから備蓄なんてしても意味がない、と思われる方がいるかもしれません。自宅を失えば備蓄品も無駄になる、これは事実です。
しかし備蓄品が必要になる状況というのは、家を失うような災害時だけではありません。自宅は無事だったけれどライフラインが停止して困る、という状況への備えは常に必要です。
大地震が遠方で発生し、自宅周辺の被害はなかったが発電所が止まって停電した……。
台風による水害の影響は回避できたが、暴風により送電線が切断されて大規模な停電が生じた……。
あるいは災害とは無関係に、老朽化した水道管が破裂して地域一帯が断水した……。
大雪や火山灰の影響で物流が停止して、お店からものがなくなった……
など、「自宅は無事だがライフラインだけが止まる」という状況に備えて、食料備蓄を行いましょう。
★ここまでは、自宅避難時用の食料についてお届けしました。【関連記事】では、防災リュックに入れる食料についてご紹介しています。
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■BOOK:『食料備蓄はじめてBOOK 備蓄ノウハウ55 防災リュック・在宅避難・食料危機まで完全ガイド』髙荷智也・著
■著者略歴:髙荷智也(たかに・ともや)
合同会社ソナエルワークス 代表、備え・防災アドバイザー。1982 年、静岡県生まれ。「自分と家族が死なないための防災対策」と「企業の実践的BCP 策定」のプロフェッショナル。備え・防災・BCP 策定に関する、講演・コンサルティングで日本全国を飛び回る。大地震や感染症パンデミックなどの防災から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝えるアドバイスに定評があり、メディア出演も多い。著書に『中小企業のためのBCP 策定パーフェクトガイド』(Nanaブックス)、『今日から始める本気の食料備蓄』、『今日から始める家庭の防災計画』(徳間書店)などがある。