大谷50-50の歴史的瞬間、「ベンチ裏で起きていたこと」とは?ドジャース名物の番記者が明かす裏バナシ | NewsCafe

大谷50-50の歴史的瞬間、「ベンチ裏で起きていたこと」とは?ドジャース名物の番記者が明かす裏バナシ

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大谷50-50の歴史的瞬間、「ベンチ裏で起きていたこと」とは?ドジャース名物の番記者が明かす裏バナシ
大谷50-50の歴史的瞬間、「ベンチ裏で起きていたこと」とは?ドジャース名物の番記者が明かす裏バナシ 全 1 枚 拡大写真
  

いよいよ近づいてきた、MLB(メジャーリーグ)開幕戦! 3月18日(火)と19日(水)に東京ドーで開催されます。しかも日本人選手が多く所属するロサンゼルス・ドジャースVSシカゴ・カブスというカードに、野球ファンならずともワクワクが止まりません!

もちろん、一番の注目は大谷選手! 昨年、野球史上初の50-50を達成した偉業は記憶に新しいところです。あのとき、ベンチ裏ではどんなことが起きていたのでしょう?

現地で大谷選手を追いかけ続けてきた、ドジャースの名物記者ビル・プランケット氏が著書で明かす激動の舞台裏には、日本では報道されていない選手たちの生き生きとしたコメントのほか、チームメイトとのきずなや球場のリアルな空気感がつづられてます。

プランケット氏の著書『SHO-TIME 3.0 大谷翔平   新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』(徳間書店)から一部抜粋・編集してお届けします。

●写真:『SHO-TIME 3.0 大谷翔平 新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』(徳間書店)書中より

大谷の歴史的50号ホームラン! チームメイト、審判、対戦相手のダグアウト…そのとき球場で起きていたこと

6回に、マーリンズの救援投手ジョージ・ソリアーノが新たな被害者となった。1ストライクからのスライダーをプレート上に投じると、大谷は打球速度111・2マイルで右中間438フィート地点まで2ランを放った。これが大谷の49号だった。

試合はもはや笑うしかないほどの展開になり、この1イニング後に大谷は再び打席に立って、救援投手のマイケル・バウマンと対戦した。

史上初の措置として、試合管理人は主審のダン・イアッソーナに合図を送り、特別なマークをつけたボールをこの場面で使わせることにした。もし大谷が本塁打をここで打ったら、MLB機構としてこの打球をつかんだラッキーなファンを公式認定しようという配慮だった。

ムーキー・ベッツは、50号本塁打を前にした大谷に対して、ドジャースのチームメイトは話しかけるのを避けたのかと質問を受けた。野球界にはかずかずの迷信が残っているからだ。たとえば、ノーヒッター進行中の投手には、ダグアウト内で絶対に話しかけずに1人にしておくという伝統がある。変なことを話して、台無しにしてはいけないからだ。

しかし、ベッツはこう即答した。
「ないよ。あそこまでの大選手にジンクスもクソもないよ」
だが、敬遠で歩かせることは可能だった。走者二・三塁でマーリンズはすでに3-11と大差をつけられており、マーリンズのスキップ・シューメーカー監督が、大谷に向けて一塁へと腕を振れば敬遠で歴史的対決を避けることはできた。

テレビ中継を見ると、カメラはシューメーカー監督が側近コーチ一同と何事か話している様子を捉えていた。
「クソくらえ!」
ド素人の読唇術でも、シューメーカー監督がそう言い放ったのがわかった。
「これだけの偉業を成し遂げようとしている男に、そんな無礼があるか」

このやりとりは、反対側にあるドジャースのダグアウトにいる面々も注視していた。
「オレらの大部分があっちのダグアウトを凝視していて、何人ものコーチがスキップに『ここは歩かせましょう』と言っている感じがわかったよ」
マックス・マンシー三塁手はこう明かした。

「実際に細かいところまではわからないけど、そんなやりとりだっただろうというのは容易に想像がつくよ。それでスキップが『そんなのはいかん』と言い返した感じだった。だから、そこで打たせてくれたスキップには脱帽、敬礼、感謝だな

試合後、シューメーカー監督は、大谷との勝負を選択した決断について問われ、その際の返答によりさらに名声を高めることになった。
敬遠なんて、そんなのは悪手だ。野球的にも運命的にも、野球の神様たちに対しても申し訳ない。結果がどうあれ、勝負して打ち取ることを目指すべきなんだ

シューメーカー監督はこう切り返した。
「私はこのゲームに対する敬意を表する意味も込めて、彼との真っ向勝負を選択した。結果は本塁打だった。これも勝負の一側面だ。そして、あちらにとってはシーズン50本目の記念碑だった。今日は、野球全体にとって素晴らしい1日だった。そして、マーリンズにとっては悪い日だったということだよ

大谷はバウマンが投じた最初の2球を連続でファウルし、カウントは2ストライクと追い込まれた。その次のカーブは地面についた。バウマンの次の1球は再びカーブだったが、決して出来がいいカーブではなかった。

大谷はこの1球を捉えて左中間に運んでシーズン50号とし、ベースを1周する前に、お祭り騒ぎになっているドジャースの仲間たちがいるダグアウトに目をやった。

「嬉しいですし、安心しましたし、これまで野球を続けてきた先達すべてに敬意を表したいと
思っています」
大谷は試合後に通訳を通じてそう語った。
「正直に言わせてもらうと、僕としては少しでも早く達成したかったです。だって、毎回、僕が打席に立つたびにボールを変えないといけないじゃないですか。なので、だからこそ僕としては早めに達成してしまいたかったです

50号本塁打はゴールではなかった! その夜の大谷の人間離れした活躍ぶりに、チームメイトからの賞賛が止まらない

だが、まだ話はここで終わっていなかった。シーズン最高の1試合20得点に向けて、ドジャースは9回にさらに6点を追加した。マーリンズは投手温存の意味もあり、2人の野手を敗戦処理投手として登板させた。

大谷はこのうちの1人目、ビダル・ブルハーンから3ラン本塁打を放った。彼は普段はユーティリティプレーヤーとして出場しているが、投手としてはこれがシーズン2試合目の登板だった。

大谷の歴史的な夜にさらなる感嘆符をつけた。この1発はブルハーンから投じられた68・3マイルの球を、大谷が113・6マイルではじき返し、440フィートさきのスタンドに飛ばして生まれた。

「オレから見ると、今日のあいつは気分が乗っていて、感覚的に『お、これなら今日はいけるぞ』っていう感じだったんじゃないかな」
ベッツが50-50の大台に乗せた大谷について語った。
「本当なら、本塁打4本だって今日のあいつなら打てたはずだよ。もはや、絶句だね

それ以外の大谷のチームメイトたちは、必ずしも言葉を失っていたわけではなかった。祝福の言葉が試合後のロッカールームでも続き、ドジャースは大谷の歴史的偉業とチームのポストシーズン進出確定を同時に祝うことになった。ロバーツ監督は試合後、シャンパンを開けてチームにふるまい、両方の業績を大いに祝福して乾杯した。

このベースボールという競技は200年以上続いているが、ショウヘイは今まで誰一人としてやったことのない大偉業を成し遂げてくれた
ロバーツ監督が大絶賛した。

大谷はもう1つ、前人未踏をやってのけたことになる。この試合に入るにあたり、彼はMLBで一度もポストシーズン進出がないまま865試合公式戦に出場したことになる。これは役選手のなかで最長の記録だった。ある意味不名誉な記録に、この瞬間、終止符が打たれた。

キャリアハイとなる1試合6安打(内訳:単打1本、二塁打2本、3本塁打)、チーム史上最高の10打点、2盗塁を記録し、彼はMLB史上初となる6安打、3本塁打、10打点、2盗塁を1試合でやってのけた男となった。

今シーズン全体を振り返っても、今日は攻撃に関しては最高の1試合だったね
マンシーはそう感想を述べた。
「今日のショウヘイを見てみろ。6安打、10打点、3本塁打だと? しかも、盗塁も2つか3つ決めてたよな? なんなんだそれは?

ギャビン・ラックスも「野球史上最高の試合」という一句にさらに付け加えた。
「もうわけがわからないよ。それ以外、表現のしようがないだろ。どう言えばいいんだ? もう笑うしかないよ。こんなことをやったヤツは、リトルリーグですら見たことがない

「初」「唯一」の記録が目白押し! 大谷にとっても「いちばん」記憶に残る試合に

5050達成の試合は、マイアミのローンデポ・パークで行われたわけだが、この球場は2023年のWBCの決勝で、大谷が最終回に登板して日本代表に優勝をもたらした球場でもあった。もちろん、大谷がそれを忘れているはずはなかった。こう感慨深そうに話した。

「今までの選手生活で、いちばん思い出に残る場所がここですよね。ここの球場は、間違いなく僕のいちばん好きな球場の1つになりました」

オプタスタッツによると、打点が公式記録に加わった1920年以来、1試合で10打点かそれ以上を叩き出した、6安打かそれ以上打った、5本以上の長打を放った、3本以上の本塁打を放ち2つ以上盗塁したMLB選手は一人だけだった。大谷はそれらを一晩でまとめてやりとげた。

ロバーツ監督は、ローンデポ・パークのビジター側にある小さな監督室に押し寄せた報道陣に上機嫌で応じた。
「お見事だった。野球には長い歴史があるが、ショウヘイは今まで誰一人やったことがない偉業を成し遂げたわけだ。唯一無二の一言に尽きるよ

統計専門家のサラ・ラングスは、あらためて大谷の業績を列挙した。

史上初の1試合3本塁打の固め打ちをしたのと同時に、複数の盗塁を同じ試合で決めた〉
1901年以降で初となる1試合で少なくとも5安打を放ち、かつ複数の本塁打と複数の盗塁を記録した〉
〈1試合10打点を記録した選手としては16人目だが、先頭打者としては初である。以前この記録を達成した15人の選手は、誰一人として盗塁を同じ試合で記録していない〉
〈大谷が2024年公式戦で同試合に本塁打と盗塁を記録したのは13回目で、これはリッキー・ヘンダーソンが1986年に記録した13回と並んだ〉

ミゲル・ロハスはこう話す。
われわれは全員、歴史を生で目撃したということだ

試合後のMLBネットワークによるインタビューで、50-50の記念球を取り戻せたかと問われ、大谷は英語で即答した。
Not yet(まだですね)
今後も数多くの記念球について、彼はこの二言で答え続けるに違いない。

★【関連記事】では、大谷選手のチームメイトとのきずなについてご紹介しています。

>>>関連記事】大谷の肩負傷をめぐるチームメイトとのきずながエモい!ワールドシリーズ優勝の舞台裏。そして、東京ドームでの開幕戦が始まる!ドジャース名物の番記者が明かす裏バナシ

■BOOK:『SHO-TIME 3.0 大谷翔平   新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』ビル・プランケット〈著〉、タカ大丸翻訳〉 2200円(税込み)/徳間書店

■著者略歴:Bill Plunkett(ビル・プランケット)
1961年12月30日、ミシガン州デトロイト生まれ。40年以上、日刊紙で執筆を続け、この25年はオレンジ・カウンティ・レジスターと関連紙で記事を掲載している。2003年シーズンよりMLB の取材に入り、最初の数年間はロサンゼルス・エンゼルスを担当していたが、その後の大部分はロサンゼルス・ドジャースを担当している。殿堂入り投票権をもち、スポーツネットLA、MLB ネットワーク、そのほか全米ラジオ番組等にも出演多数。

■訳者略歴:タカ大丸(たか・だいまる)
1979年、福岡県生まれ、岡山県育ち。ポリグロット(多言語話者)、作家、翻訳者。おもな著書に『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)、共著に『史上初の詰飛車問題集』(主婦の友社)、英語の訳書に『SHO-TIME』シリーズ、『愛の自転車 インドからスウェーデンまで最愛の人を追いかけた真実の物語』(ともに徳間書店)、『ジョコビッチの生まれ変わる食事 新装版』『クリスティアーノ・ロナウドの「心と体をどう磨く?」新装版』(ともに扶桑社)、スペイン語の訳書に『モウリーニョのリーダー論 世界最強チームの束ね方』(実業之日本社)、『ロジャー・フェデラー なぜ頂点に君臨し続けられるのか』(KADOKAWA)など多数。


《OTONA SALONE》

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