新入学費用、経済困難世帯「生活費を削る」6割超
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「2025年経済的に困難な状況にある世帯への中高入学に関するアンケート調査」は、国内で子供の貧困が社会問題となり、物価高騰も続く中、経済的困窮に加え、障害や疾病、家庭内暴力、在留資格が不安定など、生活上特定の困難がある子育て世帯の生活状況や、卒業・新入学にかかる保護者の経済的負担感を把握することが重要であるとの考えから行われた。有効回答数は、全国47都道府県の2,135人(保護者または親族、教員、支援団体などの支援者が回答)。
調査結果によれば、経済的に困難な状況にある世帯において、卒業・新入学にかかる費用が家計に大きな負担を及ぼしていることが明らかになった。2024年に実施した調査と比較しても、借入金額や返済期間が新高1の子をもつ世帯で特に増加傾向にあり、「高校授業料無償化」の政策だけでは支援が足りない実状が浮き彫りとなっている。
卒業・新入学準備に関し費用の捻出が難しい費目として、前年比もっとも増加したのは「パソコン・タブレット代」で、新中1では21.1%(前年比4ポイント増)、新高1では56.3%(前年比9ポイント増)であった。また、卒業・新入学準備のために「他の生活費を削る」と回答した保護者は、約6割(新中1:63.5%、新高1:59.9%)にのぼり、そのうち「親自身の食事量を減らしている」と回答したのは71.3%で、前年比約7ポイント増加している。
さらに、約3人に1人の保護者が、卒業・新入学準備のために「借入」を行っており、家族・親族・友人・知人からの借入やクレジットカードによるキャッシング、銀行・消費者金融などからのカードローンを利用している。同割合は、新中1のいる世帯よりも、新高1のいる世帯のほうがより高い結果となっている。卒業・新入学準備にかかる費用を借入などで捻出する世帯は、新高1で「11万円以上」の借入を約6割(58.3%)がしており、「1年以上」の返済期間にしている世帯が約6割(59.7%)である。前年と比較し、借入金額は約5ポイント増加、返済期間も約9ポイント増加している。
調査結果を受け、セーブ・ザ・チルドレンは、困難な状況にある子供の“学ぶ権利”を保障するため、「学用品の選択制の導入、価格の見直しや公費による購入、早期の必要金額開示」「特に高校入学時のパソコン・タブレット代の国・自治体による助成の拡大」「貸与の導入新入学に関わる既存制度の拡充」「高校入学前の準備金の創設」の4点を国や関係省庁、自治体に対し提言していく。
具体的には、制服代や運動着代など、指定品以外の選択を可能とすることや、価格が適正かどうかの見直しや値下げが求められる。また、就学援助制度や高校生等奨学給付金の援助額の範囲内に収めるなど、世帯の負担が生じないような具体的な金額の検討が必要だとしている。並行して、公費で購入し共用化できる教材の検討・導入など私費負担を減らす実効的な対応を求めている。
さらに、中学校はGIGAスクール構想で1人1台の端末が無償提供されているが、高校入学時の端末購入に関する助成の有無は自治体や学校によって異なるため、高額なパソコン・タブレット端末の購入は経済的に困難な世帯にとって大きな負担である。国や自治体に助成の拡大や端末貸与の導入を早急に求めている。
《風巻塔子》
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