
2003年『佐賀県』で一躍全国区に躍り出たはなわさん。その後、3人の息子さんが柔道に打ち込む姿が長年テレビ番組に密着されていることで「身近なファミリー」という印象を持つ人も多いでしょう。週3回以上更新されるYouTubeの『はなわチャンネル』はチャンネル登録者数が50万人を越え、昨年夏には長男・元輝さんにお子さんが誕生しました。
そんなはなわさんが芸能生活30周年、結婚生活25周年を記念して、今年11月22日(いい夫婦の日)に『柔道3兄弟と天然ママと僕~はなわの楽しい子育て』を上梓しました。はなわさんご自身がどのようなポリシーを持って子どもたちと関わってきたのか、親としての信念や哲学を明かし、3兄弟がのびのびすくすくと育った秘訣を紐解く1冊です。
はなわさんの実践から、父親はどのように子どもに寄り添い、伸ばす立場であるべきなのか、はなわ流の「楽しい子育て」について伺います。

『柔道3兄弟と天然ママと僕~はなわの楽しい子育て』はなわ・著/徳間書店
「僕なんて育児を語っていいような立場ではないし」。いえいえ、笑顔溢れる楽しそうな一家ですよね?
――ご結婚25周年おめでとうございます。25年前というと男性の家庭へのコミットは冗談みたいに低かったのですが、そんな中でもご夫婦がしっかりと連携して育児に取り組んで。
いやあ、反省と後悔はたくさんあります。特に子育てはママに任せっきりにしたところがたくさんありました。こんな僕が生意気に育児の本など……書けるような男じゃないと重々感じながらの執筆でした。
ママはすごいことを成し遂げてくれたと思います、朝から晩まで仕事をしていた僕にかわって、3人もの息子たちを育て上げてくれた。そんなママと比べると、僕自身もうちょっとやれたこともあるんじゃないかと反省しきりです。当時は猛烈に働く時代でしたから僕も必死に仕事にしがみついていましたが、いっぽうで自分に余裕がなかったところもありました。
――とはいえ、分担がきちんとされていて、家の中のことは奥様が、習い事や進学、勉強など家の外のことははなわさんが、という姿勢でしたよね。
そうなんですよ(笑)、書けるような男じゃないとは言いながらも書いていくと『そうか、僕はこういうこともやっていたんだな』と気づくことが多くて。反省と後悔ばかりと思っていましたが、ママがやらないこと、たとえば柔道の送り迎えや習い事、勉強のことは意外と僕の担当だったなと、書いてみて新たに気づいたこともありました。まったくやっていなかったわけでもなかったんだな、特に息子たちのメンタルの部分へのコミットは半分以上担当したなと。
――ということは、執筆スタートの時点では「僕なんて」という謙遜100%の気持ちのままだったのでしょうか?
はい、書籍のお声がけをいただいたときも、「僕なんてそんな偉そうに育児を語れる立場でもないから、育児本なんてできません」というような話はしたのですが、ぜひぜひと何度も言っていただく中で、仕事で地方に行くたびにいろいろな方から『はなわさんの子育てを参考にさせていただいています』『はなわさんちみたいに仲良くいっぱいご飯食べさせてがんばっています』なんて、いつの間にか素敵なことを言ってもらえるようになっていた自分にも気づきました。
僕なんかが語るのも申し訳ないなと思いながら、そんなことを言ってもらえるということは、「こんな僕みたいなやり方でも、子どもはちゃんと育つんだよ!」ということを、もしかして言ってもいいのかなと思い始めて。
同時に、子育てで悩んでいるパパママがたくさんいることもわかってきてました。僕に確たる育児メソッドがあるわけではないですが、我が家は仲よしのようでいて、やや放任主義で育てている部分があります。そんな方法でもいいんだよ、それでも楽しんで子育てしようよ、あまり考えすぎないほうがいいんじゃないかな、そういう家もあっていいんじゃないかな。なんて育児中のパパママに思っていただきたいなと思って書き始めました。
「うちのやり方をまねしてね」とは全然思わないんです。そうではなくて「これでもいいんだ!」と、どこかで気持ちが楽になればいいなと思っています。
「親が手放しで喜んでくれた」記憶こそが子どもにとっての何よりの糧。一緒に喜びまくってほしい
――その放任というのも決して「ラクな育児」というわけではなく、親の肝の座りと言いますか、覚悟を問われる育児方針だと思います。この場合、大切なのは子どもの意思の尊重でしょうか?
結局、人間主義であることです。最後、人間とは「心と心」だと思っています。子どもであれ大人であれ、人間同士は愛がいちばん大事。どのような方針でも最後は愛情を持って子どもと向き合い、育てるという点に集約されると思います。でもそれも難しいことではなく、シンプルに子どもが笑顔になり、家族みんなが笑顔で生活できるのがいちばんいいのかなと思います。
そういう点では、僕も両親にしてもらってうれしかったことや、反面教師の部分を自分の育児に反映しています。また、いろいろな方々と出会って関係を深めていく中でいいなと思ったことを参考にもしています。
――お子さんたちは柔道を続け、とても強くなりました。はなわさんご自身も相当関与したのでしょうか、素晴らしい成果です。
息子たちはいまも柔道も続けていますが、僕はそれほど気負わず、「本人が楽しくないならやめてもいいや」と最初から思ってスタートしました。でも、本人たちが柔道が好きで、めちゃくちゃ強くなりたいと思っているんですね。僕、つい「すっごいなお前」って言ってしまうんですが、本当に道場の中でも相当に強いんです。
「すっごいなお前」と親が喜んでくれるのって、子どもは嬉しいですよね。本当に嬉しい。僕が「すっごいじゃん」って口にしても、思春期なんで「別にそんなの」って言うんですが、でも嬉しいんだろうな。こうして親が喜ぶことが子どもは絶対的に嬉しく、モチベーションにもなるので、僕はたくさん言葉にして子どもに伝えています。逆にママは嬉しくてもあんまり言わないので、2人で分担できていると思います。
もうひとつ、一緒に喜ぶことも心がけました。例えば、行きたい高校があるけれどもうちょっと成績を上げないとならないとき、「どうする、塾がんばってみる? 柔道休んで?」。すると、「勉強するときってここしかないんじゃないの、一回ちょっとやってみようか」って本人が心に決めて行くんですよね。で、行ってきて「どうだったの」「全然できなかった、やべえよ、わかんねえもん全然」「やべえな、俺たちの子どもだからな」、こんな具合です。あれ、喜んでないですねこのエピソード(笑)。
――(笑)言いたいことはわかります、上からではなく、横から、あるいは下から目線を合わせて、現状を一緒に分かち合い、「今日の達成」をありのまま喜び合う感じですね。俺たちの子どもだからなって。
3人育てるうちにそうなっていった部分もあります。長男のときはよくわからなかったから、たとえば柔道は家でもやらなきゃ強くならないのかなと練習させていました。今考えたらかわいそうな話でした、好きじゃないのにやらされてる感じになっていたのかな。
長男はとにかく強すぎるくらいに強かったので、やがて周囲が全日本クラスになっていくんです。そんな家はお父さんお母さんが柔道家、そのお父さんも道場の師範の息子なんてことはざら。オリンピック級のアスリートたちって親も絶対的にすごいんです。長男のときは僕もそのくらいやらないと追いついていけないという焦りがあって、でも僕は柔道のことを全然知らないからいろいろな人にアドバイスをもらい、長男が家に帰ってきてからもジム行ったほうが、トレーニングをとやっていました。
でも、長男はきつかったでしょうね、めちゃくちゃにきつい練習したあと、家に帰ってきてからまだやらされるのは。僕も徐々にこれはよくないと気づいて、次男三男では家での練習はやめてもいいんじゃないかと思うようになりました。
――子どもの自発意思を信じて、自分でやると言い出すまで辛抱強く待つ、親はその待つ胆力を養うべし、ということでしょうか。
親が子どもへの目線を敢えてそらすというか、放任の方向に進んで干渉しなくなると、どこかで子どもは自分でやりはじめます。子どもが伸びるのはこの、自分でやり始めたあとです。それこそ勝手にどんどん伸びていきます。そんなに練習して体大丈夫なのって心配になるくらいに。
もちろんすべての子どもがそうなるかはわからないけど、少なくとも三男はそうでした。次男は柔道はあんまり興味ないのが見てわかったので、「どうするの」「やめようかなと」でやめました。それはそれで全然いい、信じてるのが大事。だから、いっそ何も口を出さずに黙っていたほうがお子さんの成長にとっていいパターンもあるかもしれないですね。
長男が柔道の有名道場に入ってみたら、周囲がめちゃくちゃ強かったんです。その子たちと友達になると、彼らが当たり前にやってる練習にまったく追いつけません。悔しいのか、負けたくないのか、ものすごく努力して、気づいたらそんな中でいちばん強くなっていました。勉強もそうなんですが、友達みんなでやると、やること自体が当たり前になっていくんですね。
つづき>>>子どもの叱り方に迷うとき、やる気をくじかない「とっておきの方法」って?子どもの適性だけは親がしっかり見極めて

『柔道3兄弟と天然ママと僕~はなわの楽しい子育て』 1,760円(10%税込)/徳間書店



