
40代、50代の女性にとって、閉経をはさんだ約10年間の「更年期」は、心や体の変化を感じやすい時期。今後の人生を見据えて、ライフスタイルを見直すきっかけにもなります。
閉経の平均年齢は50.5歳前後といわれていますが、「52.1歳まで遅くなっている」という説もあり、個人差があります。近年では平均より早い閉経は健康リスクが高くなることも分かってきており、「自分が何歳で閉経するのか」は、多くの女性にとって関心の高いテーマです。「母が30代で閉経したけど、私や私の娘も早いのだろうか」「40歳で生理が乱れてきたけど、これは閉経のサイン?」。そんな不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
今回は、閉経年齢と遺伝の関係について、日本女性医学学会名誉会員で「ローズレディースクリニック」院長の石塚文平先生にお話を伺いました。
ローズレディースクリニックは東急大井町線の尾山台駅に位置し、不妊治療と婦人科診療を通じて女性の生涯に寄り添ってくれるパートナードクター。長年私たちの悩みを聞き続けてきてくれた石塚先生ならではのお返事は……?
*前回記事『「少し早めの44歳で閉経したら婦人科に行くべき?」案外知られていない45歳以下での閉経のリスクと「健康寿命」の関係とは』
【シリーズ・40代50代が向き合う更年期/変えられることを変える知識と、変えられないことを受け入れる知恵】#2
「母が早く閉経したら、娘も早い?」閉経年齢には遺伝の要素が関係するのでしょうか?
――前回の記事で、40歳より前に閉経することを医学的に「早発卵巣不全」と呼び、45歳より前の閉経を臨床の現場では「早期閉経」と呼ぶことがあること、また閉経年齢が早いことで健康リスクが上昇する可能性についても触れていただきました。ミドル世代の女性の中には、「母が早く閉経したから、娘の私も早いのだろうか」と不安に感じている方もいらっしゃると思います。遺伝的な関連はあるのでしょうか。
はい。閉経年齢には遺伝的な要素が関わっていますので、母親や叔母など女性の親族の閉経が早い場合ご本人も早くなる傾向があります。
ただし卵巣機能に関わる遺伝子は多くあり、加えて、閉経時期はライフスタイル…たとえばストレス、飲酒、喫煙などの影響も受けるため、一概に「母親が早かったから娘も早い」とは言えません。
――たとえば親族、姉や母、祖母に40歳未満で閉経した「早発卵巣不全」がいる場合はどうでしょうか。遺伝的な影響がありますか?
早発卵巣不全に関しても、遺伝的な異常が関係することがあります。実際に、ご親族に早発卵巣不全の方がいるケースでは、約10〜20%で同様の発症がみられます。
一方で、卵巣機能に関わる遺伝子は約80種類以上ありますが、原因は複雑に絡み合っています。必ず遺伝するわけではありませんが、参考にすることはできます。もしご心配な方は、専門医療機関で相談することをお勧めします。
早く閉経することでの健康上のリスクとは? 母娘で遺伝子やホルモンの検査はできる?
――仮にミドル世代の女性が、「母や叔母の閉経が早かったので、自分だけでなく娘の将来も心配」と感じた場合、親子で検査を受けることはできるのでしょうか?
はい、可能です。むしろ若い世代の方こそ、早めに受けておくことをおすすめします。遺伝子そのものをすべて解析することは難しいのですが、卵巣の働きの状態は血液検査で確認することができます。
代表的なものが「抗ミュラー管ホルモン(AMH)」と「卵胞刺激ホルモン(FSH)」の測定です。また、これを補完する検査としては、腹部超音波検査(腹部エコー検査)を行うことでより詳しく卵巣の状態を把握することもできます。
検査をすることによって、「まだ平常に機能しているのか」「少しずつ低下しているのか」といった卵巣のコンディションを知ることができます。
血液検査や腹部超音波検査は、健康診断などでも馴染みのある検査ですので、若い方でも受けやすいと思います。年齢を問わず、婦人科などの専門クリニックで健康チェックの一環として卵巣の状態を調べておくことは、とても有意義なことです。
費用は保険適用外にはなりますが、一般的には1万円前後から受けられます。当院では、AMHとFSHをセットで測定することができる「卵巣ドック」を税込11,000円で行っています。検査は採血のみで、月経周期に関わらずいつでも受けることができます。
どのような状態を感じた場合に「検査をしたほうがいい」のか?
――女性が自分で「婦人科に行って卵巣の状態を検査したほうがいい」と気づくための兆候があれば教えてください。
まず気づきやすいのは、月経が不順になることです。年齢にかかわらず、これまで順調だった生理が「最近リズムが乱れてきた」と感じたら、卵巣の働きが弱まってきているサインかもしれません。
排卵がうまく起こりにくくなると、月経周期が短くなったり長くなったり、不正出血が続くなど、周期そのものが安定しないことがあります。
また、典型的な症状として「ホットフラッシュ」があげられます。突然のぼせたり、急に汗が噴き出すような症状で、更年期にみられる自律神経の乱れとして広く知られています。こうした変化がある場合も、卵巣機能の低下が関係している可能性があります。
つづき>>>もし10代20代の子どもが「月経不順」で困っていたら。親ができる「意外な助言」とは



