中高生サッカー、脳振盪の受傷メカニズムと予防策を分析
子育て・教育
リセマム/生活・健康/中学生
サッカーは多くの中高生が取り組むスポーツであるが、脳振盪は外見ではわかりにくく、本人も症状を軽視してプレーを続けることがある。脳振盪は頭痛やめまい、吐き気、集中力の低下などの症状を引き起こし、学習や生活に影響を及ぼすため、どのような場面で起きやすいかの理解が予防の第一歩となる。しかし現場では「ぶつかること」「ヘディング」が原因といったイメージが先行し、実態が整理されてこなかった。
今回の研究は、筑波大学体育系の中田由夫教授と連携し、災害共済給付データを用いて実施。日本の中学・高校生サッカーの脳振盪に関し、全国規模の保険登録データを用いて受傷場面や起こり方を詳細に分類し、学年別の特徴についても調査した。分析結果は、脳振盪の発生は単なる衝突だけでなく、接触後の転倒による頭部の地面接触が多いことを示し、また学年が上がるほど試合中の接触による脳振盪の割合が高まる傾向が認められた。
具体的に2012年から2022年の災害共済給付データを用い、サッカー関連傷害申請69万6,600件から脳振盪3,343件を抽出した。性別は男子3,217件(96.2%)と女子126件(3.8%)で、学校種別では高校生が多く、学年別では中学・高校とも2年生が最多であった。部員1,000人あたりでみると、男子は高校で1.23件、中学で0.57件、女子は高校で1.03件、中学で0.34件であり、中学生では男子の割合が女子より有意に高いが高校生では有意差はなかった。
受傷機転は、Step1(受傷前段階)において69.5%が「他選手との接触あり」に分類された。Step2(直接的要因)では「他選手との接触後の地面接触」が39.1%でもっとも多く、ついで「他選手による打撃」が28.5%、「用具との接触」が21.4%であった。詳細分析では他選手間の打撃は「頭同士」が13.2%、「下肢から頭部への打撃」が6.3%で、用具はおもにボールとの接触(19.7%)が中心だった。
これらのデータは、強い衝突で直接脳振盪が発生するケースだけでなく、接触によるバランス喪失から転倒し頭部を地面に打つケースが多いことを示唆する。発生場面の内訳は、試合中が55%、練習中が44%(不明1%)で、試合中がやや多い。試合と練習では受傷機転の特徴も異なり、男子の場合、試合中は「接触後の地面接触(45.1%)」や「他選手による打撃(34.9%)」が多い一方、練習中は「用具(おもにボール)との接触(31.0%)」や「接触をともなわない地面接触(12.9%)」が相対的に高い割合を占めた。
さらに学年が上がるにつれて試合中の選手間接触に起因する脳振盪の割合が増加しており、中学1年生が49%であるのに対し高校3年生では69%と高まっていた。このことから、発達段階に応じて注意すべき局面や予防の焦点が変わる可能性が示された。
これらの分析結果からは、脳振盪が多く発生する転倒局面に着目した指導や、試合中の医療サポート体制の整備といった、学年別の特性を踏まえた対策の検証が求められることを示している。
研究はJSC国立スポーツ科学センターのスポーツ医学研究部門が実施し、福嶋一剛副主任研究員と中田由夫教授らが共同で報告した。これにより、学齢期サッカーにおける脳振盪の受傷機転の詳細な実態と予防の着眼点が明確になった。
研究成果は2025年12月18日にオンライン先行公開された。2027年9月25日にThe Journal of Physical Fitness and Sports Medicineに論文を掲載予定。
《風巻塔子》


