第28回松本清張賞を満場一致で受賞した、発表当時21歳の大学生であった波木銅による同名小説(文春文庫)を、『猿楽町で会いましょう』の児山隆監督が映画化した本作。未来が見えない町に暮らす若者たちが、自分の夢をかなえるために、一攫千金を狙おうと禁断の課外活動を始める様子を描く。
この度解禁された本編映像は、朴(南沙良)が抱える憤りをラップに乗せ、美流紅(出口夏希)に浴びせる圧巻のシーン。今まで相容れない関係だった二人が、初めて心を通わす瞬間が切り取られている。
ラッパーを夢見ながらも、学校にも家にも居場所を見いだせず鬱屈とした日々を送る朴秀美。同じクラスの矢口美流紅は、陸上部のエースで社交的、かつスクールカースト上位に属し、朴とは対照的な学校生活を送っている。ある日、朴がいつものように駅前でラップ仲間たちとサイファーしていると、そこに美流紅が通りかかる。スクールカースト上位の美流紅にラップしている姿を見られた恥ずかしさから、朴は思わずその場から逃げ出してしまう。
解禁された映像では、朴のフリースタイルラップに圧倒された様子の美流紅が、「すっげぇじゃん!」と朴に抱きつく場面もある。やがて特別な友情で結ばれた二人は、同級生の岩隈真子(吉田美月喜)らを巻き込み、禁断の課外活動へと踏み出す。
劇中のラップ指導を担当したのは、ヒップホップトリオDos Monosで活動する荘子 it。原作にはない朴以外のサイファーのラップを構成したほか、南やジャッキー役の黒崎煌代へのラップ指導を行っている。南はこれまでラップをした経験はなかったが、もとよりラップ好きであったという。それが功を奏してか、ラップは早い段階でできるようになっていたという。荘子 itは、「最初の打ち合わせで、緊張をほぐす意味でもまず僕が参考にラップを披露して、それを真似してもらうところから指導を始めました。この映画においては、ラップの上手い下手より、やりたくてやってるように見えるかが超大事だと思うので、自然にサマになってくることを重視しました。南さんはラップシーンで非常に緊張もあったと思いますが、キャラクターとしての演技を意識しながら見事にやり遂げていて凄いと思いました」と撮影を振り返り、南のラップを絶賛した。
朴がラップをするシーンは、劇中後半にも訪れ、それは原作や脚本にもなく、撮影を進める中で児山監督が「朴にラッパーらしく自分のことを語ってもらいたい」と考えてやることを決めたシーンだった。そうして児山監督が劇中でも言及されるヒップホップグループ、THA BLUE HERBなどをイメージしながらリリックを書き、荘子 itと推敲。そのリリックと荘子 itが自身でラップした音源を南に送ったのは、シーン撮影の3日前だった。こうして完成した渾身のラップシーンは、朴の感情が溢れる最大の見せ場になっている。
そんな朴のラップを収めたオリジナル・サウンドトラックは現在配信中である。
コメント全文
音楽:荘子 it(Dos Monos)
・完成した映画をご覧になった感想
原作の持っていたケレン味を引き継いだ編集などのギミックが冴えつつ、それぞれのキャラクターの生き様には独特なリアリティが感じられました。単に身の回りの「リアル」なものだけではなく、サブカルチャーなどの「アンリアル」なものからの影響も渾然一体となって、それぞれの人生のリアリティを形成しているのが特徴的で、僕自身の生まれ育った境遇は違えど共感しました。今、リアルタイムで似たような境遇や心境の最中にいるティーンに響くものになっていたら嬉しいです。南さんはラップシーンで非常に緊張もあったと思いますが、キャラクターとしての演技を意識しながら見事にやり遂げていて凄いと思いました。
・ラップ指導に関して
南さんも黒崎くんも、最初の打ち合わせで、緊張をほぐす意味でもまず僕が参考にラップを披露して、それを真似してもらうところから指導を始めました。恥ずかしくないよ、という空気作りが大事かなと思って臨みました。真似してもらうと言っても、僕のやつを正解とするわけではなく、それぞれの声や発音などの特徴を活かして最終的にしっくりくるように練習のサポートをしました。あんまり音楽的だったり技巧的なことではなく、「ラップをしよう」というよりまず「ビートのリズムを感じてのってみよう」、といったマインドセット的なことなどを伝えました。特にこの映画においては、ラップの上手い下手より、そもそもやりたくてやってるように見えるかが超大事だと思うので、自然にサマになってくることを重視しました。撮影の待ち時間の間、僕や他のサイファーのメンバー達と一緒に黒崎くんがフリースタイルで遊んでくれて、純粋に楽しんでくれてるのが伝わって嬉しかったです。
『万事快調』は全国にて公開中。



