
毎日、お仕事に家事に子育てに、本当にお疲れ様です。 やっと一息つけると思ってリビングに入った瞬間、目に飛び込んでくる「夫の脱ぎっぱなしの靴下」。 これ、本当にイラッとしますよね。
「また⁉」って、疲れが一気に怒りに変わるあの感覚、痛いほどわかります。 何度言っても直らないし、つい「ちょっと、片付けてよ!」なんて強い口調で怒鳴ってしまって、険悪なムードに……。
でも、そうやって感情をぶつけた後、夫は不機嫌になるし、家の中の空気は最悪になるし、結局自分が一番嫌な気分になって落ち込んじゃうんですよね。 「私が我慢すればいいのかな」「優しく言えない私がダメなのかな」なんて、自分を責めないでください。あなたが悪いわけじゃないんです。
実はその悪循環、ちょっとした「伝え方の変換」で、驚くほどスッと解消できるかもしれません。 そのカギを握るのは、「アフェクト」。喜怒哀楽のような激しい感情ではなく、ちょっと嬉しいな、少し嫌だな…という淡い感情のことをさします。
行動経済学の分野で重視されている本人も意識してないレベルの「淡い感情」で、購買意欲を高めたり、社員のモチベーション上げたり、と大きな影響を与えます。
このアフェクトをポジティブに向けていくことで、人生がいい方向に向かう。そう語るのは、行動経済学博士である相良奈美香氏。日常生活の夫婦関係に「ポジティブアフェクト」の取り入れ方を伺いました。
※本記事は書籍『ポジティブアフェクトで幸せの仕組み化』(相良奈美香:著、須山奈津希:イラスト/主婦の友社)から一部抜粋・編集したものです
アフェクトは伝染する。イラッとしたときほど笑顔で
もっとも身近な人間関係といえば、やはり家族です。あまりに身近だからでしょうか、家族には自分の感情の趣くままに接する人も多いかもしれません。
でもそれがネガティブアフェクトなら、やはり注意する必要があると思います。
先日、知人に「同じ屋根の下にいると、相手の嫌な部分ばかりが見えてくる」と相談を受けました。ケンカの原因は夫の靴下です。
夫はいつも靴下をリビングに脱ぎっぱなしにし、それを片づけるのはいつも妻。「靴下くらい自分で片づけてほしい」と妻が思うのは至極まっとうなことでしょう。
でもそれを言うと夫は不機嫌になり、「口うるさい」と逆ギレされて大ゲンカになってしまうのだとか。「夫がこんなにも生活力のない人間だとは思わなかった」と嘆いていました。
さて、なぜこのような些細なことで大ゲンカになってしまうのでしょう。夫がダメな人間だから? 妻が優しくないから? そうではありません。それはネガティブな感情が伝染しやすいせいです。
職場などでも、部下をイライラした声で怒鳴りつけている人がいますよね。自分がイライラをぶつけられているわけでもないのに、心がザワザワして嫌な気持ちになるものです。
それが同じ家に住むパートナーならなおのことです。
「また靴下をここで脱ぎっぱなしにしている」と思うと、妻はイラッとします。そのネガティブアフェクトは夫にダイレクトに届き、夫も瞬時にイラッとしてしまう。
イラッとするから反発したくなり、「靴下問題」が「口うるさい問題」にすり替わり、それを聞いて妻はさらにヒートアップする……そういう流れができてしまっているのです。
結局のところ、イライラした人がいちばん損をする
ケンカの原因のほとんどは、ネガティブアフェクトの伝染です。ネガティブで伝えるから、ネガティブが返ってくる。
これを続けるうちは、永久に負のスパイラルを止めることができません。
解決する方法は一つだけ。ネガティブな感情を、そのままの形で相手にぶつけるのをやめることです。
ひと呼吸おいてから、明るいトーンで「あれ? また靴下ここに落ちてたよ~!」と笑顔で伝えるようにしましょう。
そうすると相手も「あ、ごめんごめん~」と靴下を片づけることができる。ポジティブアフェクトも伝染しやすいので、家の中の空気が明るくなります。
うまくいくコツは、たとえば日本語がわからない人でも「この人は機嫌が悪くないんだな」と思えるような、非言語でも伝わる空気をつくることです。
ちなみに私は、夫が靴下を脱ぎっぱなしにしていても「自分で片づけて」とは言いません。私が片づけます。なぜなら、靴下がリビングに落ちているのが嫌なのは夫ではなく私だから、です。
ときには夫に「ほら、また脱ぎっぱなしだよ~」と言って片づけてもらうこともありますが、そのときには必ず笑顔で言います。
だって夫の靴下を率先して片づけている(えらくて立派な)私が、家の空気を悪くした張本人になるなんて嫌ですし、悪くなった空気の中で夫と過ごすなんて耐えられません。あまりに損な役回り。
だからこそイラついたときほど笑顔をつくり、ポジティブアフェクトに変換して、私自身がハッピーになるのです。
最初は抵抗があるかもしれませんが、試しに一度だけやってみてください。ネガティブをポジティブに変換してみたときに「あれ、なんかいつもと空気が違うぞ」と気づくと思いますよ。
しかも、いつもポジティブアフェクトでいると、たまにネガティブアフェクトをちょっとでも出しただけで、相手が汲み取ってくれるというメリットもあります。
普段は笑顔でニコニコしている人が、ちょっと機嫌が悪そうなら「どうしたのかな? 大丈夫かな?」って思いますよね。でも、いつも不機嫌な人だとそうはならないですよね。
〈アフェクトの伝染〉
喜怒哀楽ほどに強くはない淡い感情(アフェクト)は出現する頻度が高く、身近な人にすぐに伝染しやすい。特にネガティブアフェクト(負の感情)を無加工で相手に伝えてしまうと、相手からのリアクションはさらにネガティブなものになる。相手の反応に強い影響を与えているのは、自分のアフェクトであることを理解しておきたい。
■著者略歴:相良奈美香(さがら・なみか)
行動経済学博士・コンサルタント。日本とマレーシアで育ち、オレゴン大学で行動経済学の修士・博士号を取得後、デューク大学でポスドクを務める。起業しサガラ・コンサルティングを設立、世界最大級のマーケリサーチの会社Ipsos行動科学センター代表などを経て、現在は米国を拠点に、ビヘイビアル・サイエンス・グループ代表として、世界各国で幅広い業界の企業に行動経済学を提供。著書『行動経済学が最強の学問である』は16万部超のベストセラーとなり、日本における行動経済学の認知度を広げる大きなきっかけとなった。
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