
首都圏の中学受験が過熱するなか、女子御三家、男子御三家と呼ばれる超難関校は、首都圏中学受験業界の一大ブランドとして輝きを放っています。
今回お話を伺ったのは会計事務所で事務職に従事するふみかさん(仮名:52)。次男・J君(仮名:14)は、そんな東京の御三家のうちでも人気の高いA中学に合格したものの、当時の偏差値ではA中学よりも若干下回る神奈川のB中学を選んだそうです。
【どうする?小学校受験と中学校受験】
◆J君の性格傾向から両親が検討したこと
息子は天才型ではないけれど、「問題を解きたい」衝動が強く執着して「喰い下がる」タイプ
J君は、ふみかさんいわく「ちょっと勉強しただけでできる天才型」ではないそうです。
「もちろん、得意な数学や理科、受験に関係ない楽器演奏や絵の模写といった、興味のあることについては習得も早いです。でも、塾の同じクラスには、まるでPrint Screenボタンが搭載されているとしか思えない暗記力や、大人顔負けの理解力・洞察力を兼ね備えた、すごい子が何人もいました」
J君はそうしたタイプではなく、時には「納得ができない」と、夜中に延々と文章問題の最適解を検索し続けることもあったといいます。
「目も悪くなるし、睡眠不足で身になるはずはないし、『明日、昼間に質問しに行きなさい』と言うんですけど、解決しないと寝る気がしないみたいで、頭を掻きむしったりイライラしたり。『もう寝なさい』と言って『うるせぇ、邪魔すんな』と怒鳴られたりすると、親もメンタルが削られますよね。頑固なところがあり、分からないものに執着して、アハ体験の快感を求めて喰い下がるタイプです」
◆学校の選択に至った理由は
御三家も「お気に入りの学校」ではあったけれど…。彼にとって「もっと魅力のある学校」を親は推した
J君は、学校見学でいくつも「お気に入り」の中学を見つけましたが、合格した中で一番偏差値が高かった御三家のA中学も、「自由な感じで楽しそう」と、決して嫌がってはいなかったそうです。
「でも、神奈川のB中学のほうが、より魅力的だったみたいですね。通っていた塾には学費免除制度がないので、遠方の難関校ツアーなどには参加していません。風邪を引きやすく、体の弱い子なので無理はさせたくなくて。めんどくさいこだわりのある本人の『好きな学校』だけ、4校受けさせました」
近隣県の前受け1校、滑り止め1校。第一志望とも第二志望とも言い切れない『本当に行きたい学校』が2校。そのうちの1校が、御三家だったそうです。
「前受けの地方校も含め、ありがたいことに4校すべて合格しました。大好きな塾へ報告に行く時は嬉しそうでした。褒められることが大好きなので、得意満面というか。背が低く顔が丸い次男が、ほっぺたを真っ赤にしてパパと塾から帰ってきたので、『アンパンマンみたい』と笑ってしまいました」
御三家と呼ばれるA中学と、神奈川では難関校のひとつであるB中学。どちらも男子校です。その2校を、J君は「同じくらい気に入っていた」といいます。
「B中学は、御三家のA中学より、若干偏差値が低いんです。でも、著名な作家や起業家の出身校でもあり、進学実績でもさほど引けを取りません。さらに、郊外だけあって敷地が広く、建物も美しい。東京と神奈川という立地の違いもあってか、心なしか、おっとりとした生徒さんがのんびり過ごしているイメージも。逆にA中学の生徒さんは、マイペースでありながら、会話のテンポが早くて切れ味が鋭い言葉を使う子が多いと感じました」
◆悩んだ学校選び。その後の様子は?
4校すべてに合格した小学6年生の未来の人間関係を決める「贅沢だけど深刻な悩み」
J君は、「僕としてはちょっとの差だけどB中学のほうがいいかも。でも、ほんの少しだから、ママとパパがA中学を推すなら、そっちにしてもいい」と、最終判断を親に委ねたそうです。
「まだ12歳で、大きな決断をすることに慣れていないんですよね。ありがたいことに、塾の先生も『A中学を推させてください。でも、最終的にB中学を選んでも、彼の意思ならきっと素晴らしい未来になるはずです』と言ってくださいました。私は、小学校受験の後悔もあったので、『ほんのちょっとでもBがいいなら、そうしなよ』と、思い切って背中を押しました」
J君は「いいの? パパも?」と、嬉しそうだったそうです。
「夫は『ちょっともったいないけどな。6年間過ごすんだから、近くて、より気に入っているところがいいよな。一生の友達ができるんだから、インスピレーションは大事だぞ』と、少し残念そうながらも受け入れていました。後から、御三家の一番のネックが『大嫌いな水泳がさかんだって聞いた』ところだったと聞いて、ちょっと脱力しました。でもそれ以外にも、B中学の雰囲気に、開放感を覚えたみたいです」
J君は、バレンタインには仲間たちと男子同士で『友チョコ』を作って配り合ったり、ボードゲーム大会を開いたりしながら、平和に学校生活を送っているそうです。
「今後は分かりませんが、今のところは順調で学校選びに後悔はありません。小学校高学年で行きしぶりがあった長男も、中学で短期留学を経験するなどなんとか高校に通っています。距離が遠いので、たまに遅刻はしますけどね。早起きは本当に嫌なようで『フレックス通勤や在宅勤務がしたい』という基準で理系の進学先を探しています」
長男と次男、それぞれ違う年齢での受験を経験したふみかさん。
「小学校受験と中学受験の両方を経験して、うちの場合は次男の中学受験のほうが満足のいく結果でした。ただそれは、受験した年齢の差ではなく、子供の個性と御縁や運の問題だと思います。あとは『下の子は上の子の失敗から学びやすいので得』という『あるある』も多少、影響しているのかもしれません。どちらにしろまだ若いですし、これから失敗や成功を繰り返して自分のトリセツを作りながら、たくましく育ってほしいです」
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