元TBSアナが衝撃タイトルの話題作を鑑賞。「死を美化しすぎ!?」問題に対してたどり着いた結論とは | NewsCafe

元TBSアナが衝撃タイトルの話題作を鑑賞。「死を美化しすぎ!?」問題に対してたどり着いた結論とは

女性 OTONA_SALONE/LIFESTYLE
元TBSアナが衝撃タイトルの話題作を鑑賞。「死を美化しすぎ!?」問題に対してたどり着いた結論とは
元TBSアナが衝撃タイトルの話題作を鑑賞。「死を美化しすぎ!?」問題に対してたどり着いた結論とは 全 1 枚 拡大写真
  

元TBSアナウンサーのアンヌ遙香です。ニッチな眼差しで映画と女の生き様をああだこうだ考え、“今思うこと”を綴るレビュー連載。ほんのりマニアックな視点と語りをどうぞお楽しみに!

【アンヌ遙香、「映画と女」を語る #16】

衝撃タイトルからまず浮かんだイメージは

今回ご紹介する作品は『兄を持ち運べるサイズに』というタイトル。最初にふと頭に浮かんだイメージは「南くんの恋人」のように、お兄さんがミニサイズになって肩に乗ってくるようなかわいらしいポップなものでした。

ところが驚くなかれ、これは「兄を火葬し、骨壺に入った状態にして、物理的に持ち運べるサイズにする」顛末をまとめた映画なのです。かなり攻めている印象のタイトルですが納得。だってあの『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督の作品ですもの。


「死」を生の延長として、いわば生活の一部として描くイメージのある中野監督。この作品でも、ちゃらんぽらんで、でも何か憎めない兄が宮城県で急死する場面から始まります。

作家の村井理子氏が、疎遠だった兄が他界したことによって家族に巻き起こった出来事をまとめたノンフィクションエッセイ『兄の終い』を中野監督脚本により映画化した作品です。

実話をもとにした、「兄の終い」

『兄を持ち運べるサイズに』【配給】カルチュア・パブリッシャーズ ©2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

人気作家である理子(柴咲コウ)のもとに、宮城県の警察から、何年もあっていない兄(オダギリジョー)の急死と遺体の引き取り依頼の連絡が入ります。久々に会う兄の元妻(満島ひかり)らとともに、兄の死去にともなうさまざまな後片付け、後始末に手を付けることになってしまい、正直気乗りしないまま東北に向かう理子。

『兄を持ち運べるサイズに』全国公開中【配給】カルチュア・パブリッシャーズ ©2025「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

マイペースで口がうまく、面倒なことからは逃げ、しかし子供のころからはなぜか母の愛情をほぼ独り占めしてきたような世渡り上手の兄に対して、まじめな理子はずっと複雑な感情を幼いころから抱いていました。「お兄ちゃんなんていなくなってしまえばいいのに」と幾度か思ってしまったことも確か。

大人になってからは、母の介護や死からも逃げ、お金に困った時だけメールをよこしてくるような兄を避けるようにしていた理子。ほぼごみ屋敷と化していたような亡き兄の古びたアパートを整理していると、自分の著書が本棚に何冊も並んでいたり、自分も映った家族写真が壁にしっかり張られているのを見つけ、これまでは抱いていなかった兄への新たな思いが生まれ始めます。

この「兄を持ち運べるサイズに」することを巡る数日間の「家族」を巡る心の変化が描かれていくのですが……。

兄の死を「美化しすぎ!?」

『兄を持ち運べるサイズに』全国公開中【配給】カルチュア・パブリッシャーズ ©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

実はこの作品、公開直後にあるサイトのレビューを拝見した際には、非常に辛口なコメントもありました。端的にいうと、亡き妻との間に残された男の子の養育を巡って、「いい加減」とか「不器用」では済まされない責任感のなさが見受けられ、それを「美化」しているだけではないか、というものでした。

兄がやってきたことは「いろいろダメなところもあったけど何か憎めないよね」では済まされないのではないかと。そのような現実的な眼差し、「美化」しすぎではないかという論調、すごくよくわかります。しかし私は思うのです。死という形にかかわらず、だれかとお別れをしてしまったとき、残された者は「美化」をすることで、一種自分の心を守らねばやっていけないこともあるのではないかと。

死後の世界があるかないかは別として、大切なのは「今生きている」人の心身を守り抜くこと。生きている人には生活があり、仕事があり、場合によっては守らねばならない家庭もあり、ネガティブな感情に押しつぶされたらもうすべてが立ち行かなくなるわけです。

「あんないやなこともあったけど、こんな美しい思い出もある、こんなあたたかいところもあった、でもどうしようもできないこともあったし、自分がやってきたことは正解だった」と、まだ生きねばならない残された人々は自分で自分を納得させなければならないのです。自分の心の防御策、防波堤が必要不可欠であり、要するに、「美化しないとやってらんねーよ!」ということ。

美化するからこそ許せるし、自分の気持ちそのものが楽になる。そうやって心の折り合いをつけながら日常は果てしなく続いていくわけです。大事なのは、「兄が本当はどういうひとだったのか」ではなく、その兄が残していった命の痕跡を、どう残されたものたちが判断していくか、だと思うのです。生きることってそういうことなのではないでしょうか。

【後編】はこちらから▶「呪縛ではなく支えであるべき」元TBSアナが衝撃タイトルの話題作を通じて考えさせられた「家族のあり方」とは

『兄を持ち運べるサイズに』

原作:「兄の終い」村井理子(CEメディアハウス刊)

脚本・監督:中野量太

キャスト:柴咲コウ オダギリジョー 満島ひかり 青山姫乃 味元耀大

【配給】カルチュア・パブリッシャーズ

©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

※上映劇場はHPご参照ください


《OTONA SALONE》

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