
夫婦問題・モラハラカウンセラーの麻野祐香です。働く女性は、モラハラやDVの夫から簡単に逃げられるのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。さまざまな事情から、支配的な配偶者との結婚生活を続けている人は少なくないのです。
オトナサローネ世代のモラハラ被害にフォーカスした本連載。今回は、夫の見栄と借金に苦しむMさんのお話です。Mさんは40代のパート主婦。夫は小さな会社を経営しています。子どもは中学生と小学生の2人。家族4人で暮らすには十分な広さのマンションで、傍から見れば「恵まれた家庭」に映っていると思います。けれどMさんは、毎月末になると、支払いの多さに胃が痛くなる日々が続いていました。
節約生活を強いられて…。その原因は夫
「どうやって乗り越えよう」
毎月、同じ不安の繰り返しなのです。特売の日を狙い、外食は極力控え、無駄な出費を出さないように日々節約に励んでいます。
それなのに、夫は自分の欲しいものは一切我慢しません。リビングの65インチのテレビは、家電量販店にふらっと立ち寄ったとき、店員との会話が弾んだことをきっかけに購入されました。今のテレビに不都合などなかったのに、「最近の4Kは違う」「仕事の接待で家に人を呼ぶこともある。みすぼらしい家では困る」そう言い、購入を決めてしまったのです。Mさんが必死に「まだ今のテレビで十分だから」と伝えても、夫は店員に向かって「本当に妻っていうのは、なんでも反対するんですよね」と笑い、取り合おうともしませんでした。
半年前には、「いい時計をしていないと、ビジネス上相手にされない」と言って高級腕時計を購入。その前にはゴルフクラブのフルセット。欲しいと思えば、何がなんでも購入してしまうのです。さらに、「金がないと思われると仕事上のマイナスだ」と言って、第三者との食事では必ず奢ります。取引先への接待は豪勢。友人たちには気前よく奢り、近所の人にも愛想がいい。だからこそ、夫は外ではとにかく評判がいいのです。
「Mさんのご主人って、素敵よね」
「仕事もできそうだし、頼りになりそう」
ママ友にそう言われるたび、Mさんは「本当は違う」と言いたくなります。けれど、冷めた笑顔で、その場をやり過ごしていました。この「外と家での落差」は、モラハラ夫によく見られる特徴です。外ではあれほど愛想よく振る舞うのに、家では妻や子どもを気遣うことは一切ない。その矛盾が積み重なるたびに、嫌悪感と虚しさが静かに育っていったのです。
夫がここまで外面に執着する「歪んだ理由」
外面にこれほど執着する人は、実は自己肯定感が極めて低いことが多いといわれています。自分への自信がないからこそ、他者からの評価が何より怖い。「よく見られなければならない」そんな切迫した感覚が、外での振る舞いを過剰に丁寧にさせてしまうのです。
「俺が稼いでいるんだ。俺の金をどう使おうと俺の自由だ」それが夫の口癖でした。夫がMさんに渡すのは、毎月決まった額の生活費だけ。それをどうやりくりするかはMさん任せなのに、収入の全体像は夫しか知りません。生活費が足りなくなっても、追加は許されないのです。
光熱費が高くなる月。子どもの学校の集金が重なる月。生活費が足りなくなり、「少し足してほしい」と伝えると、夫は面倒くさそうに舌打ちをして、
「お前の管理が悪いんだろう。全部の明細を出せ!」
としつこく問い詰めてきます。そのためMさんは、いつしか夫にお金の話をしなくなっていました。足りない分は、自分のパート代で補うしかなかったのです。言っても無駄だから。言えば機嫌が悪くなるから。それなら夫に頼るより、自分がパートの時間を増やして乗り越えた方が、精神的には楽だったのです。
Mさんの中には不満が溢れていました。けれど、何を言っても否定される。その繰り返しの中で、話し合う気力さえ失われていったのでした。
そして、ある日、子どもが「塾に行きたい」と口にしたとき、その事件は起こりました。なんと夫は「そんな金はない」と言い放ったのです。
本編では、夫の見栄による出費が続き、子どもの教育費さえ後回しにされる家庭の実態と、話し合いができなくなっていく夫婦の関係についてお伝えしました。▶▶「老後の貯金が消えてる…!」夫の借金を知った妻がついに始めた「離婚へのカウントダウン」 では、夫の借金の実態を知った妻が感じた衝撃と、そこから始まった静かな決意についてお届けします。
※本記事は、相談者様への敬意と守秘義務に十分配慮したうえで、モデルケースとして編集・再構成しお届けしています。特定の人物や事例を示すものではありません。
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