先月末に北米公開を迎えた本作は、すでに『ボヘミアン・ラプソディ』の北米興収を上回る大ヒットを記録、日本でもキャスト&製作陣が来日したジャパンプレミアが大盛況。IMAX先行上映は3日間で興行収入1億382万5,600円、24回の満席上映という驚異的な記録を達成した。
“キング・オブ・ポップ”の伝記映画を作ること。それはすなわち、稀代のスーパースターであり、ファッション・アイコンでもあったマイケル・ジャクソンを完璧に再現することだった。
『ボヘミアン・ラプソディ』においてフレディ・マーキュリーを描き、アカデミー賞作品賞を受賞したプロデューサーのグレアム・キングは、本作でも最高のクリエイティブ・チームを集める必要があった。
「その分野で最高の人材を集めることが大切だった」と語るグレアム・キングは、アカデミー賞受賞歴を持つ撮影監督ディオン・ビーブをはじめ、同じくアカデミー賞受賞経験のあるメイクアップ・アーティストのビル・コラソ、衣装デザイナーのマーシー・ロジャーズら、ハリウッドを代表する一流のアーティストたちを結集させた。
「マイケルのアイデアは、それ自体がひとつの現象」
衣装デザイナーのマーシー・ロジャースは、スパイク・リー監督『ブラック・クランズマン』や、伝記映画『ティル』、ドラマシリーズ「ウータン・クラン:アメリカン・サーガ」など、ブラック・カルチャーをテーマにした作品を多く手掛けてきたデザイナーだ。
マーシー・ロジャースはマイケルのファッションにおける独創性について、「マイケルは誰の真似もしていませんでした。自分自身のスタイルを生み出そうとして、実際にそれを成し遂げたんです。今では、ランウェイでも街でも、彼に触発されたスタイルを目にすることができます。彼のアイデアは、それ自体がひとつの現象になったんです」と語っている。
マイケルのファッションを再現するため、マーシー・ロジャースは大がかりな調査を行った。グラミー・ミュージアムやジャクソン・エステートのアーカイブにも足を運び、「スリラー」のショートフィルムで使われたオリジナルのジャケットや、バッド・ワールド・ツアーのオープニングでマイケルが着ていた衣装などを、実際にメジャーを持参して、各衣装の長さや幅にいたるまで徹底して調べたという。中でも、ひときわ印象的だったのが、鮮やかなアップルレッドに染まったV字デザインの「スリラー」ジャケットだった。このジャケットのレプリカは、80年代を代表するファッションアイテムとして熱狂的に求められたものだ。
マーシー・ロジャースは当時その衣装を選定した衣装デザイナーのデボラ・ナドゥールマン・ランディスに話を聞きに行ったようで、「この衣装については、デボラ本人に直接話を聞きました。彼女から教わったことのひとつが、ビデオでマイケルが履いている赤いパンツは手染めだったということ。当時、リーバイスは赤いパンツを作っていなかったからです。彼女は実際に白いリーバイスを用意して、ジャケットに合うよう赤く染めたんです。これは意外と知られていないことなんですよ」と貴重な裏話をふり返っている。
「スリラー」のゾンビ・メイクを完全再現
ヘアメイクもまた、ジャファー・ジャクソンをマイケルとして成立させていくうえで大きな役割を果たした。メイクアップ・デザインを担当したビル・コルソは、「スリラー」のMVで特殊メイクを担当したリック・ベイカーらメイクアップ界の第一人者のもとで腕を磨いてきた人物で、近年も『デッドプール』や『インディ・ジョーンズ』シリーズなどの大作を担当するトップランナー。
彼の仕事は、ジャファーをマイケルへと変貌させながらも、その演技にひとりの人間としてのリアリティを残すことだった。なかでも大きな仕事となったのは、「スリラー」のMVを再現したシーンのゾンビ・メイクを手掛けることだった。それは、彼自身の創作の原点に立ち返る機会にもなったそうで、「私の世代のメイクアップ・アーティストにとって、「スリラー」は人生を方向づけた作品でした。私にとっても間違いなくそうだったんです」と語っている。ちなみに、彼が手掛けたゾンビ・メイクの過程は、映画の公式Instagramで確認することができる。
CM撮影中の痛ましい事故…以後の苦悩も描かれる
一方、ヘアスタイリストのカーラ・ファーマーは、マイケルの髪型の変遷をたどりながら、アフロからジェリ・カールまで象徴的なルックを、写真資料をもとに丹念に確認していった。
「スリラー」のショートフィルムだけをとっても、マイケルの髪型は何度も変化しており、ファーマーは「その変化のひとつひとつをショートフィルムの各場面にきちんと合わせたいと思っていました。だからテイクごとにジャファーの髪を調整したんです」とその苦労を語っている。
マイケルの髪型が重要だったのは「スリラー」ばかりではない。マイケルの髪型は『Michael/マイケル』の脚本上の重要な要素にもなっている。それは、本作においてマイケルの人生でもとりわけ痛ましい出来事のひとつである、ペプシのCM撮影中の事故が詳しく描かれているからだ。
この点について、ファーマーは「あのあと、マイケルはヘアピースを着けるようになりました。そして、それによって彼の外見は再び変化していったんです」と語っているように、本作ではマイケルの栄光ばかりでなく、彼の苦悩までもがヘアメイクによって完璧に再現されている。
『Michael/マイケル』は全国にて公開中。



