現代の浮世絵師・KOJIMAN(コージマン)さんによる初の東京個展「下剋浮世(げこくうきよ)」が、6月6日(土)より、高円寺のカルチャースペース「C.G.R.」にて開催中だ。本展は、デザイアドライン株式会社が新たにオープンした「C.G.R.」のオープニング展であり、こけら落としの展覧会となる。KOJIMANさんは、これまでに¥ellow Bucks(イエローバックス)、RIZE(ライズ)など、さまざまなアーティストとコラボレーション。北海道日本ハムファイターズのオフィシャルグッズ制作を手掛けるなど、近年は国内外のメディアでも取り上げられている。本記事では、KOJIMANさんが現在開催している「下剋浮世」を取材。KOJIMANさんご本人へのインタビューも交え、アーティストとしての創作に対する思いを紐解いていきたい。
【ストリートとポップカルチャーを浮世絵で塗り替える試み】
KOJIMANさんは北海道・札幌出身のアーティストだ。パンクバンド・Rancid(ランシド)をはじめとするロックカルチャーに育まれた感性を起点に、90年代初めから連なるストリートからポップカルチャーまでを横断。それらを浮世絵の画法に落とし込み、日々作品を生み出している。
そんなKOJIMANさん初の東京個展「下剋浮世」が行われている会場の「C.G.R.」を訪れると、ずらりと壁に飾られている鮮やかな浮世絵アートに目を奪われた。作品の一つである、アニメ「刃牙道」の浮世絵ビジュアルとして制作されたアートは、かの有名な宮本武蔵と佐々木小次郎の「巌流島の戦い」を描いた実在の浮世絵(歌川芳虎 画)がモチーフ。迫力のある構図の背景には、作中のキャラクターの姿も盛り込まれ、なんとも遊び心を感じる仕上がりになっている。

そのほかにも、人気漫画のキャラクター、はたまた実在のアーティスト、スポーツ選手、お笑い芸人など、多彩なモチーフの作品を展示。近くで見ると、浮世絵ならではの色使いや細かい書き込みの緻密さに驚かされる。

また、本個展では、KOJIMANさんがアート指導を担当している「就労継続支援B型事業所 でじるみ札幌北」利用者のアートワークを会場に併設。KOJIMANさんの作品とはガラリと雰囲気が異なる、カラフルな色使いが特徴的なスペースがあることで、唯一無二の空気が生まれているように感じた。

今回は、浮世絵の新たな可能性を追求するKOJIMANさんにインタビューを実施。また、個展を主催するC.G.R./デザイアドライン株式会社の瑠世さんにも同席していただき、詳しくお話を聞いた。
【KOJIMANさんインタビュー】
ーーまず、浮世絵アートを始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
KOJIMANさん(以下:KOJIMAN):16歳ぐらいの時に、ハーフのやつと仲良くなって。そいつらはインターナショナルスクール通ってて、アメリカとかカナダとか中国とか、いろんな国から来てたんですけど、一緒につるんで遊ぶようになったんですよ。
いろいろ喋ってたら、そいつらは自分の国のカルチャーについて当たり前のように話してて。でも僕は中卒で勉強もしてなくて、歴史もわからないし、自分の国の政治とかもわからない中で、同い年のやつらが当たり前のように言うって悔しいな、カッコいいなと思いました。
あとはファッションとかも好きだったんで、当時(地元の)札幌だったら古着のカルチャーがめちゃくちゃアツかったんです。でも“待てよ”と思って。いくら高くてカッコいいデニムを履いても、やっぱり本場の人には勝てないんじゃないかって。
それは絵も同じことで。太陽が燦々と照らしてるアメリカで、顔立ちのはっきりしている人が描くパリッとした色のアメコミとかタトゥーアートは、当然その人たちに合ってるし、カッコいいに決まってんじゃん、みたいな。
じゃあ、日本人だったら浮世絵描いたらイケてんじゃね?と思って始めたのがきっかけですかね。 ーー元々絵を描くのはお好きだったんですか?
KOJIMAN:元々幼稚園入る前からずっと絵描いてて。サッカーとかもやってたんですけど、鳴かず飛ばずというか。でも、絵描いてる時だけモテたんですよ(笑)
小学校の時とか、当時は男の子の間で『ガンダム』とか『ドラゴンボール』が人気で。友達に頼まれて、出てくるキャラの絵を描いてたら超ギャラリーになって。そのうち女の子からも『セーラームーン』のキャラを描いてって言われたりして、休み時間に列ができたんですよ。
“俺、絵描いてたら超チヤホヤされんじゃん”と思って。そっからずっと描いてますね。 ーー子供の頃の思い出が創作の原点になっているんですね!ところで、浮世絵には独自の技法などがあると思うのですが、これらは独学で学ばれたのでしょうか?
KOJIMAN:まったく独学です。自分で探してきた資料を見て“こういう感じか”って目で学んでますね。
色使いも、その絵の時代が前であればあるほど、元の色からすごく薄くなったり、かすれたりする。そういう部分をよく見て参考にしてます。

ーーKOJIMANさんの作品は漫画やアニメのキャラクター、スポーツ選手や芸人さんなどをモチーフにしているのが印象的です。アートの着想はどんなものから得ることが多いですか?
KOJIMAN:全部が単純に言ったらファンアートで。俺が好きなラッパー、ロックスター、芸人さん、アニメのキャラクターとか見て“かっけぇな”と思ったものを描いてます。
それを見て、RIZEさんとかはDMで連絡をくれて。たまにオフィシャルから声をかけていただけるような感じですね。 ーーパンクバンド・Rancidが感性の源流になっているとお伺いしたのですが、そういったロックカルチャーの影響もあるのでしょうか。
KOJIMAN:そうですね。元々中学校の時とかずっとモヒカンにしてたり、スタッズを打った革ジャンを着てたりしてたんで。そういう音楽とかカルチャーが好きだったし、ルーツは中学校から好きで聴いてたパンクロックにあるのかなと思います。
瑠世さん(以下:瑠世):それで言うと、KOJIMANさんの絵にはパンクに通じるものがあるかなと思います。“いたずら”じゃないですけど、絵の中にKOJIMANさんの知ってる人がいたり、モチーフに関するものが隠れてたり。まっすぐ描いてもいいのに、遊び心がある。
KOJIMAN:ふざけちゃうんだよね(笑)でも、確かにそうかもしれない。いたずら心みたいな画風のルーツはパンクロックから来てるのかもしれないですね。
『SLAM DUNK』の絵とかも、あえてキャラクターの肌にタトゥーを入れて、そのキャラならではの小ネタを仕込んでるんですけど、そうすることによって(元のモチーフを)本当に好きな人にも失礼にあたらないかな、みたいな。配慮というか、ちゃんと対象へのリスペクトや愛を持って描くようにしてます。
この投稿をInstagramで見るーーその意識は作品からもとても伝わってきました。ここからは個展についてもお話を聞かせてください。「下剋浮世」はKOJIMANさんにとって初の東京での個展になります。
瑠世:僕らはデザイン会社からスタートして、ギャラリーをやろうと決めて動き出した時に、ひょんなことで僕とKOJIMANさんが札幌で知り合って。KOJIMANさんの絵は元々僕もうちの会社のメンバーも知ってたんですけど。
ビジネス系のイベントで知り合って飲みに行ったところから、人柄も素敵だし、やってることもすごいし、カッコいいもん作ってるし、芯も熱いし、面白いよねってうちの会社で評判になって。それで“1回東京に来てもらおうよ”みたいな。僕らのほうから一緒にやりたいですってアプローチした感じですね。
僕らも、ストリートじゃないですけど、高円寺っていうあったかくて仲間が多い街でやってる中で、展示の趣旨も合うなと思って。“1発目はKOJIMANさんにお願いしよう”みたいなところから今回の個展がスタートした形ですね。 ーーそうだったんですね!今回は期間中にタトゥーアーティストの勝美-katsumi-さんによるパフォーマンスや、刺繡アート作家・SHISHUMANIA(シシュウマニア)さんとのコラボレーション作品展示がありますが、企画されたのは主催の方々なのでしょうか。
KOJIMAN:そういうのは全部俺なんだよね。瑠世のところの社長が「KOJIMANの好きにやっていいよ」って言ってくれたから、「言ったな」みたいな感じで(笑)
俺が入れてるタトゥーも、札幌の仲いい彫師に彫ってもらったおかげだし、今回レセプションパーティーにケータリングを出してくれたメキシコ料理屋も行きつけで世話になってるし。そういうカルチャーとかライフワークがあって、そういう仲間に囲まれて、俺は好きな浮世絵を描いてて…みたいな。
せっかくこういう良い舞台を用意してもらったから、俺だけあやかるんじゃなくて、友達や仲間と一緒にシェアできたらなおさら楽しいじゃん。札幌組の大人の修学旅行みたいな。そんな感じで、わがままを聞いてもらいました。 ーーKOJIMANさんの地元の札幌のお話が出ましたが、今回の個展では「就労継続支援B型事業所 でじるみ札幌北」利用者の方のアートも展示されていますね。ご自身の作品と合わせて展示することになった経緯は何だったのでしょうか?
KOJIMAN:地元の後輩が、北海道で初めて絵に特化した就労継続支援B型の施設を作ることになって、その縁でアート指導を始めたのが最初のきっかけかな。
利用者さんの中には手が不自由な人がいたり、精神疾患とか、いろんな症状があったりする。一生懸命絵を描いてる人たちもなかなか花が咲かないというか。
当時、アートに特化した就労継続支援の施設は初めてだったから、絵をどういうふうに広めるかって知識がないの。ってなったら、自分が個展をやる時とかに、“じゃあよかったらこの人たちの絵も飾ってほしい”って、セットだよね。
あとは、イケてる絵描きの小林さんって人がいて、俺が自腹で額をいっぱい買って、たくさん刷った小林さんの絵を入れて、すすきの中の飲み屋に配り回るっていうのをいまだにやってる。
すすきのでトイレとか行ったら“さっきもこの絵あったな”みたいな。やらしい感じでQRコードをつけるでもなく、ただその絵を100店舗くらいに貼りまくったんだよね。目でジャックするみたいな感じで。
ストリートから這い上がるじゃないけど、“この絵ってなんなんだろう”みたいな。それも1個のアクションで。ストリート×アートっていう自分の好きな切り口でやってるよ。

ーー具体的にはどんな指導を担当されているんですか?
KOJIMAN:もう1人クリエイターの女の子がいて、その子と分担して教えてる感じかな。例えば「今強くて勢いのあるNBAのチーム描いてみて」って言って、その絵をSNSに載せてバズったら、彼らも気分よかったりするじゃん。いいねが1、2個来るのが10個、20個になっただけで喜んでくれたりとか。
もちろん、それぞれの特性があるから難しいこともあるけど、ストリートカルチャーとの可能性もあるのかなと思って、試行錯誤してますね。 ーー利用者の方は、ご自身の絵が広がることをどのように受け止められているのでしょうか。
KOJIMAN:彼らも超不器用だったりするから、全然表情に出さなかったりするけど、親御さん越しに「この子がめちゃくちゃ喜んでるよ」って聞いたり。
他にも、いろんな就労支援施設を転々として、どこに行っても納得しなくて辞めてた人の親御さんから、「ここに入ってからずっといます」って言ってもらえたり。そういうの聞くたび、嬉しくてちょっと泣きそうになっちゃったりするね。
瑠世:KOJIMANさんはすごく面倒見がいい人で。さっきのすすきのの飲み屋の話もそうですけど、今回個展をする条件に「でじるみ札幌北」利用者の方のアート展示を入れてきたりとか。それで利用者の方が救われてたりするのは、普通の障がい者のアート支援の仕方とは違うけど、1個面白い形だなって。
KOJIMAN:ある程度パワープレイしないと1個グンといかないと思うんだよね。他社で言うと、ヘラルボニー(知的障がいのある作家の作品を販売・展開するアートライフスタイルブランド)ってところは、高島屋とか成田空港とか、すごい場所でやってたりする。
もちろんそれには敵わないけど、できる限りで、俺は俺で、ストリートカルチャーでその人たちが日の目を見ることがあればいいなぁと思って、いろいろやってます。 ーー貴重なお話をありがとうございました。最後に、今後KOJIMANさんがアーティストとして目標にしていることをお聞かせください。
KOJIMAN:今、ニューヨーク・ニックスが27年ぶりにNBAファイナルに進出(※ニューヨーク・ニックスは先日NBAファイナル優勝が決定)して、ニューヨークは街中お祭り騒ぎになってるでしょ。めちゃくちゃ面白いカルチャーだし、俺は去年ニックスのオフィシャルで仕事もらったんだよね。だからまずは、そういうイケてるメインストリームの、超でかいところから仕事をもらえるようにしたい。
それはなぜかって言うと、俺は個人だったら、細々と安定して絵を描ければいいだけなんだけど。さっき言ったように、就労支援施設で絵を教えてる立場でもあるから、その俺がマンパワーとネームバリューをつけて、箔がつけば、仕事をちょっとでも振れるから。
だからまずは名を上げたい。有名なミュージシャンでもラッパーでも、オフィシャルの仕事をバンバンこなしていきたいですね。
浮世絵やストリートカルチャー、そしてご自身の就労支援に対する思いも語ってくれたKOJIMANさん。インタビューを通して、アートへの情熱だけではなく、仲間思いな人柄も伝わってきた。浮世絵アートで道を切り拓くKOJIMANさんのさらなる活躍に注目だ。
【開催概要】
タイトル:KOJIMAN 初の東京個展「下剋浮世(げこくうきよ)」作家:KOJIMAN会期:2026年6月6日(土)~ 6月21日(日)時間:平日12:00~20:00/土日12:00~18:00/月曜休会場:C.G.R.(〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4丁目7−13)入場料:無料公式サイト:http://store.desiredline.jp/主催:C.G.R./デザイアドライン株式会社
KOJIMAN Instagramhttps://www.instagram.com/kojiman_japan/



