日本にいるとメンタルを病む(笑)。だからヒマラヤは人生の休憩をする場所。毎回、真剣勝負という感じだったら、行きたくなくなっていた【登山家・渡邊直子さんに聞く】 | NewsCafe

日本にいるとメンタルを病む(笑)。だからヒマラヤは人生の休憩をする場所。毎回、真剣勝負という感じだったら、行きたくなくなっていた【登山家・渡邊直子さんに聞く】

女性 OTONA_SALONE/LIFESTYLE
日本にいるとメンタルを病む(笑)。だからヒマラヤは人生の休憩をする場所。毎回、真剣勝負という感じだったら、行きたくなくなっていた【登山家・渡邊直子さんに聞く】
日本にいるとメンタルを病む(笑)。だからヒマラヤは人生の休憩をする場所。毎回、真剣勝負という感じだったら、行きたくなくなっていた【登山家・渡邊直子さんに聞く】 全 1 枚 拡大写真
  

看護師として働きながらヒマラヤへ通い続け、日本人女性として初めて8000m峰14座の完全登頂を達成した渡邊直子さん。偉大な記録を残しながらも、自身のことを「ごく普通の一般人」と語ります。何かを成したい、認められたいという野心や承認欲求ではなく、「ただただ楽しい」という思いで、ヒマラヤで過ごした日々をユーモアたっぷりに綴った著書『エベレストは居酒屋です』。生死の境目となるような衝撃のエピソードだけでなく、シェルパたちとの温かな交流や冒険の楽しさが描かれています。

そして、40代50代の女性たちに、今渡邊さんの言葉が必要だと感じます。「人生の終わり」が少しずつ現実味を帯びてきて、「人生の折り返し地点、私これでいんだっけ?」と生き方の見直しをし始めるオトナサローネ世代。

社会で揉まれ、「本意ではないこと」も折り合いをつけて必死で生きてきたけれど、次第に「本来の自分」を見失っていく…。その積み重ねが、私たちの生きづらさや更年期世代の女性の心の不調につながっているような気がするからです。

「日本では生きづらい」と感じるという渡邊さんが、言葉通り「命がけ」で、自分を癒し素直に生きる姿に、背中を押される気持ちになります。「いい人生だったな」と少しでも悔いなく死にたい、残りの人生をもっと自分らしく生きたいと願う方がいたら、渡邊さんのインタビューと著書の中に、充実させるヒントを見つけられるはずです。

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▶登山向きの性格は「ビビり」

初心者は素直に頼れるのに経験者はプライドが邪魔をする。だからむしろ、ビビリでいいんです

――知識や情報はあればあるだけいいような気がしますが、意外とそういうものでもないのでしょうか。

初心者がひょいっと4700mまで行けちゃうのは、余計な知恵をつけていないからというのもあります。初心者は困ったらすぐに助けてって言えるし、シェルパにも素直に頼ることができる。経験者はプライドがあったりして、自分で頑張ろうとしてしまい、余計に負担が大きくなるんです。知識があるほうが恐怖心で尻込みしがちですし、高山病の症状が出たからもうダメだとか、自分の力量では無理だと早めに決めつけてしまう。

真面目な人ほど勉強しようとしますが、それが必ずしもプラスに働くとは限らないんですよね。もちろん、装備など最低限の準備は必要です。私も高山病や凍傷などに備えて、装備、食料、薬など一生懸命調べて準備して行っていましたが、一座目のチョ・オユーのときは、モコモコのダウンスーツの存在を知らずに登っているんです。頑張っていろいろ準備したけど、ダウンスーツの存在は誰も教えてくれなかったので。

――そこまで準備をして臨んで、山頂まであと150mでも引き返す決断をする。楽観的にやってみるにしても、無理は絶対にしない、というところは徹底されていますね。

何が何でも登頂する、という思いでは行っていないので。無理をして凍傷にでもなってしまったら、看護師の仕事ができなくなってしまう。そこまでして登るもんじゃないなっていうのがあるし、やっぱり怖いという感情を持たずに登山家はやってはいけないと思うんです。自分は弱い人間なんだ、シェルパに助けてもらわないとダメなんだってわかっている人のほうが、無事に帰れます。頼るのが恥ずかしいと思ったら、どうしても無理しちゃうじゃないですか。

だから経験豊富な人、プロとしてやっている人よりも初心者のほうがいい。ビビリでいいんですよ。自分でやれるから! と意地を張らないほうが、素直に甘えたほうがモテますし(笑)。私なんて、もう慣れているのが(シェルパの)みんなにバレているから、あんまり甘やかしてもらえない。初心者でキャッキャしながら親切にしてもらう女子が羨ましいです(笑)。

▶登山は挑戦ではなく「休憩」

毎回、真剣勝負という感じだったら、行きたくなくなっていたと思う。ヒマラヤは人生の休憩をする場所

――慎重になるときと、楽観的にトライするときとで、ジャッジがすごくいいバランスだなと。

私、学生時代にバトミントン部だったとき、試合前にトーナメント表を見ないようにしていたんです。対戦相手を知った状態で試合に臨みたくなかったから。ペアを組んでいた人にも、“(対戦相手を)直前まで言わないで。私より格上の人だったら、おじけづいて負けちゃうかもしれないから”って言っていました。先入観に引っ張られるのが嫌だったし、だったら何も知らない状態で対戦したい。試合に勝つとか、ここでひとつ壁を乗り越えたいってときは、あえて事前に余計な知識は入れない。それは昔からでしたね。大学で、全国大会に行く決め手になった試合でも、全国3位と対戦して勝てたのは、相手を知らない状態で挑んだからで、もし知っていたら負けていたと思う。後から全国3位だよって言われて驚きました。

――欲が出て記録に挑戦するとか、そういった方向には行かずに、ヒマラヤ登山は楽しむものという、その姿勢がずっとブレていない理由というのは?

ヒマラヤは自分の人生の休憩であり楽しみでもあり、何か新しいことを学びたいときにもなくてはならないものになっているんです。自分自身を好きになれる場なのは、行くたびに、シェルパたちが私の良さを引き出してくれるから。毎回、真剣勝負みたいな感じで行っていたら、きっと潰れていただろうし、行きたくなくなっていたと思う。楽しいから、続いているんです。逆に続かないことがあるとしたら、そういうところかもしれないですね。

▶日本の人間関係は難しい

日本での人間関係は難しい。「言葉尻ひとつ」で人を嫌いになったりしないシェルパとは気が合う

――現地での交渉やシェルパたちとのやりとりなどマネージメント力がとても重要だと著書で書いていましたが、もとからコミュ力がすごく高いタイプではなかったとか。

日本にいるときや、外国人登山家との交流はあまり得意ではないのですが、シェルパ相手だとなぜか上手くいく(笑)。私はストレートに物事を言ってしまったり、顔に出たりするので日本では上手く行かないことが多いんです。もっと器用に立ち回れていれたら、と何度も思いました。

だから、素直で単純で、ちょっとしたことにも驚いてくれるシェルパたちとの交流が楽しくて仕方がない。私が感情的になって怒ったとしても、それで嫌われることはない。言葉尻ひとつで人を嫌いになんてならないのがわかっているから、気をつかわなくていいのがすごく楽なんです。彼らはきっと、あのときこう言っておけばよかった、みたいなこと、考えたこともないと思う。本当に羨ましい限りです(笑)。

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”「本当の自分」を取り戻せる場所はどこですか?”

日本人女性初“8000m峰全14座登頂”を果たした現役看護師で登山家の渡邊直子。
ヒマラヤで出会うさまざまな国籍の人との出会いと別れのなかで、驚くようなハプニングに見舞われながらも、
「私にとっては、日曜日に居酒屋へ行くようなもの」と語る。
学校でも職場でも家庭でもない、
自分らしくいられる「第三の居場所」を作るための人生の秘訣を公開。

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Profile

渡邊直子

1981年、福岡県生まれ。3歳から登山やサバイバルキャンプ企画などに参加。小学4年生から雪山登山に魅了され、中学1年生でパキスタンの4700mまで雪山登山、大学1年生で5000m峰、大学3年生で6000m峰登山に挑戦し、登頂。2004年、長崎大学水産学部水産学科卒業。09年、日本赤十字豊田看護大学看護学部看護学科卒業。同大学在学中に自身初の8000m峰登山としてチョ・オユー(8201m)に登頂。その後、看護師として働きながら資金を貯めてヒマラヤに通い、ほぼ毎年8000m峰に挑戦。24年10月にシシャパンマ(8027m)に登頂し、日本人女性として初めてヒマラヤ8000m峰14座完登を成し遂げた。


《OTONA SALONE》

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