
看護師として働きながらヒマラヤへ通い続け、日本人女性として初めて8000m峰14座の完全登頂を達成した渡邊直子さん。偉大な記録を残しながらも、自身のことを「ごく普通の一般人」と語ります。何かを成したい、認められたいという野心や承認欲求ではなく、「ただただ楽しい」という思いで、ヒマラヤで過ごした日々をユーモアたっぷりに綴った著書『エベレストは居酒屋です』。生死の境目となるような衝撃のエピソードだけでなく、シェルパたちとの温かな交流や冒険の楽しさが描かれています。
そして、40代50代の女性たちに、今渡邊さんの言葉が必要だと感じます。「人生の終わり」が少しずつ現実味を帯びてきて、「人生の折り返し地点、私これでいんだっけ?」と生き方の見直しをし始めるオトナサローネ世代。
社会で揉まれ、「本意ではないこと」も折り合いをつけて必死で生きてきたけれど、次第に「本来の自分」を見失っていく…。その積み重ねが、私たちの生きづらさや更年期世代の女性の心の不調につながっているような気がするからです。
「日本では生きづらい」と感じるという渡邊さんが、言葉通り「命がけ」で、自分を癒し素直に生きる姿に、背中を押される気持ちになります。「いい人生だったな」と少しでも悔いなく死にたい、残りの人生をもっと自分らしく生きたいと願う方がいたら、渡邊さんのインタビューと著書の中に、充実させるヒントを見つけられるはずです。

▶ヒマラヤ登山に参加する50代女性たち
不妊で悩まれていた方から、帰国後に妊娠したと報告がありました
――本サイトは主に40、50代の女性をメインターゲットにしたメディアになります。人生の残り半分、改めて生き方を考え直す時期とも言える年代なので、渡邊さんの生き方も何かしらの刺激になるのではという思いがあります。
私が主催しているヒマラヤトレッキングといった企画に参加してくる方たち、50代の女性が結構いるんです。その理由を考えてみたところ、ある程度のキャリアがあってお金に余裕があることと、社会人として苦労した経験がある私への共感点というのがあるようでした。私は自分で働いて貯めた資金でヒマラヤに通うようになりましたが、スポンサーをつけて登り続けているタイプの登山家だったとしたら、おそらく共感を寄せていただくことはなかったと思います。
看護師として働いていて社会経験のある人なら、きっとこの苦労をわかってくれるだろうという感じですね。いわゆる推し活のような形で私を応援してくださる方もいれば、更年期障害による心と体の不調で悩んでいる方もいます。何か新しいことをやってみたいけど、何をどうしたらいいかわからないといった4、50代女性に刺さっている印象があります。
――更年期障害で悩まれている方もヒマラヤへ!?
はい。気分が落ち込む、イライラする、うつ状態など精神的症状に対して周囲の理解が得られなくて悩んでいる人も来ています。私が看護師ということで、そういった症状への理解もあるだろうし、安心して参加できると。もちろん、すごく若い世代の方たちもいますよ(笑)。そして皆さん、元気になって帰っていくんです。
――ご自身でヒマラヤ旅を企画する前に、個人的に身近な人を誘ったことはありましたか?
あります。病院で働いていたときの同期を8000m峰のベースキャンプに2ヶ月、遠征時に連れて行くとか。あと頂上まで連れて行った人もいます。ヒマラヤ行くけど、行く? って誘ったら来ました。小学校のツアーナースをした時に、レクレーションのプロの方と仲良くなり、6000m峰の山に連れて行ったんです。彼女からは帰国後、「今まで不妊治療でこどもができなかったのに、帰国したらすぐできた」って報告がありました。彼女以外にもうひとり、やっぱり不妊で悩まれていた方で帰国後に妊娠した方がいましたね。本人たちもびっくりしていました。

▶登山経験0の初心者でもヒマラヤOKって本当!?
「正真正銘の初心者」でもヒマラヤ登山にはトライできる。「普通の私」でも登れたんだから
――渡邊さんが企画するヒマラヤトレッキングでは「初心者でも大丈夫」と言っていますが、そこには本当に登山経験がない人も含まれますか?
山登ったこともありません、という方も来ていますよ。徳之島から来ました、島から出たことないです、みたいな方が、いきなりヒマラヤ来て、4700mまで行っていました。
――登山経験はないけれど参加するという度胸も、要望に応えて連れて行く渡邊さんもすごいですね。
たぶん、普通の人間の私がやれたんだから、自分にもできるのでは、と思ってくれたんじゃないかな?
――えっ、渡邊さん、普通ですか!?
ごく普通の、一般人です(笑)。私はアイスクライミングもロッククライミングの練習も何もやったことがない状態で8000m峰に行っていましたから。
憧れていた中国人の女性が行くというので、アンナプルナ1という、めちゃくちゃ難しい山に何も知らないで行くことにしたので。登れないとは思うけど、行ってみたら何か学べることがあるかも……みたいな感じで、登れるところまで頑張って、登れないと思ったら下りてくればいいと思っていました。そんな私でも、結果的には8000m峰14座、登れることができた。
そういう成功体験があるから、だからやろうと思えば本当にやれますよって話すんです。ビジネスで、人を呼び込みたいからそう言っているわけじゃなくて、事実に基づいた話としてね。実際、最初は14座制覇がどうとか、何も知らずに行っていたので、初心者の気持ちがわかるんです。だから、ちょっとでもやりたい、行ってみたいっていう人には、できますよってことを素直に伝えています。
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