
夫婦問題・モラハラカウンセラーの麻野祐香です。経済的に自立した「働く女性」であってもなお逃げ切れずに苦しむ夫のモラハラについて、長年にわたりカウンセリングを続けてきた経験から、対策をお伝えしています。
今回は、モラハラ夫に共通して見られる「妻が病気になったとき」の言動についてお話しします。このテーマは、相談者の方から「うちもまったく同じです」「それ、うちの夫もやります」と、本当によく聞くものです。
結婚14年になる38歳のTさんのご相談をもとに、その実態をご紹介します。
【実録・カウンセラーから見たモラハラ・リバイバル】
妻が病気になったときこそ、モラハラ夫の本性が現れる
モラハラ夫には、驚くほど共通した行動パターンがあります。中でも、妻が病気になったときの態度は、多くの相談者が「うちと同じ」と口をそろえる特徴のひとつです。
Tさんが夫と出会ったのは24歳のとき。同じ会社に勤める2歳年上の男性で、当時はどんなときもTさんを優先してくれる、とても優しい人でした。一人暮らしをしていたTさんがインフルエンザで寝込んだときには、スーパーの袋いっぱいに食料品や薬を買って自宅まで届けてくれたそうです。
「うつしてはいけないから玄関先で受け取るだけでいいよ」と伝えても、「予防接種を受けているから大丈夫」と言って部屋に入り、簡単な食事まで作ってくれました。その優しさに惹かれ、「この人となら幸せになれる」と思って結婚を決めたといいます。
ところが、その幸せな時間は長く続きませんでした。結婚を機に、あれほど優しかった夫は少しずつモラハラ夫へと変わっていったのです。モラハラ夫は、結婚した途端に態度が変わるケースが少なくありません。妻が「簡単には離れられない」と確信したタイミングで、本性を現すのです。また、妊娠や出産も、モラハラが始まるきっかけになりやすい時期としてよく見られます
モラハラ夫は、妻が「具合が悪い」と言うと張り合う
Tさんは現在38歳。40歳の夫と、13歳の長女、10歳の次女、6歳の長男との5人家族です。出産を機に会社を退職し、現在は近所のスーパーでパート勤務をしています。Tさんは、モラハラのご相談にいらした際、「結婚前と結婚後で夫がまるで別人になってしまった」と話してくださいました。
「結婚前の夫は本当に優しい人でした。私が『買い物に行く』と言えば、『荷物が重いから一緒に行くよ』と、必ず付き添ってくれたんです。でも、結婚してからは違いました。妊娠中で重いものが持てないときでさえ、『用事があるから無理』と断られるようになりました。出産後は、夜中の授乳や夜泣きで眠れない日が続き、私は疲れ切っていました。夫に助けを求めても、『仕事に差し支えると困るから無理。育児は母親の仕事でしょ』と言って別の部屋へ行き、一人でゆっくり眠ってしまうのです。頼っても応えてもらえない、そんなことが続きました。いつしか『この人に頼っても仕方がない』と諦めるようになり、二人目、三人目の妊娠・出産では、最初から夫を頼ることはありませんでした」
実は、Tさんのようなケースは決して珍しくありません。結婚後に夫が変わり、助けを求めても拒否される。話し合おうとしても、『妻の仕事だ』『母親の役目だろう』と逆に怒鳴られ、やがて「言っても無駄だ」と諦めてしまう。こうした相談は本当に数多く寄せられます。家事も育児も妻任せ。それでいて、何かあれば妻を責める。手伝いはしないのに口だけは出す。
もし、そんな夫の態度に「私の家事能力が足りないせい」「私が悪いから」と思っている方がいたら、それは違います。その対応は、モラハラです。家事も育児も、本来は夫婦が協力して担うものです。すべてを妻に押しつけ、「仕事だから」と参加せず、文句だけを言う。それは決して当たり前ではありません。
Tさんも、夫の言動に違和感は抱いていました。それでも、「うちの夫がモラハラなはずはない」と認めたくなかったそうです。しかし、自分が体調を崩したときの夫の冷酷な対応をきっかけに、「これは普通ではない」と確信し、私のもとへ相談に来てくださいました。
妻だけでなく、子どものことさえ心配しない身勝手さ
「夫に家事や育児を頼んでも、文句を言われるだけ。助けてもらえないことは分かっていました。だから、何でも自分でやるしかないと思っていたんです。でも、あの日だけは本当に具合が悪くて……どうしても一人では動けませんでした。『あなた、今日は熱が高くて動けないの』そう伝えると、夫はこう言いました。
『は? 俺だって昨日から具合が悪いんだから。俺のほうがつらい。でも仕事には行かなきゃいけないんだぞ』
『本当に動けないの』
『じゃあ今日の俺の夕飯は気にしなくていいから。一日寝てれば?』
そう言い残して、そのまま会社へ行ってしまいました。夫が気にしていたのは、自分の夕食だけでした。子どもたちの食事のことも、私の体調のことも、一切気にかけていませんでした。あの人は、いつも自分のことしか考えていないんです」
モラハラ夫には、妻が「具合が悪い」「頭が痛い」と訴えると、「俺のほうがつらい」「俺のほうが具合が悪い」と張り合う人が少なくありません。そして、自分の食事だけを気にし、「今日は俺の夕飯は気にしなくていい」と言えば、妻を気遣ったつもりになっています。しかし、その言葉の中にあるのは、自分のことだけ。妻や子どものことは、ほとんど考えられていないのです。
「夫が会社へ行ったあと、高熱で意識が朦朧としてしまいました。その様子を見た長女が、親しくしていた友人のお母さんに連絡をしてくれたんです。すぐに駆けつけてくださって、病院へ連れて行ってくれました。注射と薬のおかげで、熱は残っていたものの、かなり楽になりました。それでも私は、夫に腹を立てることさえできませんでした。
友人は家の片づけまで手伝ってくれて、『奥さんがこんな状態なのに置いて会社へ行くなんて、ありえないから!』と、私の代わりに怒ってくれました。その言葉を聞いて初めて、『やっぱり普通じゃなかったんだ』と思えたんです。
私が回復するまで、夫は終始迷惑そうな顔をしていた印象しかありません。この頃には、夫に期待する気持ちは完全になくなっていました。ただ怒られたくない。文句を言われたくない。そのことばかり考えて毎日を過ごしていたのです」
本編では、病気になった妻を思いやるどころか、自分のことしか考えないモラハラ夫の言動についてお伝えしました。
▶▶「俺のほうが具合が悪い」が口癖。モラハラ夫と暮らすうち、妻が”怒れなくなった”本当の理由
では、モラハラ夫と暮らし続けることで、なぜ「自分が悪い」と思い込み、感情まで失ってしまうのか。その心の仕組みについてお届けします。
※本記事は、相談者様への敬意と守秘義務に十分配慮したうえで、モデルケースとして編集・再構成しお届けしています。特定の人物や事例を示すものではありません。
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