「余韻が残る」在日コリアン少女の現在地…『トロフィー』「BTS好き?」から始まる若くて青いアイデンティティのゆらぎ | NewsCafe

「余韻が残る」在日コリアン少女の現在地…『トロフィー』「BTS好き?」から始まる若くて青いアイデンティティのゆらぎ

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『トロフィー』©2026 K2Pictures
『トロフィー』©2026 K2Pictures 全 15 枚 拡大写真
「今年一番の作品」「家族愛に涙」「観終わったあとも余韻が残る」など、作品の余韻やテーマに共鳴する声が続々と上がり、映画レビューサービス「Filmarks」で初日満足度ランキング第1位(★4.03)を獲得、満席劇場も続出している映画『トロフィー』

在日コリアンのルーツをもち、朝鮮学校に通う14歳のソヒ(恒那)は、部活で朝鮮舞踊に打ち込んでいたが、あるとき、日本の中学校との交流会で同い年の未来(梨里花)と出会い、少しずつ“外の世界”とつながりを持っていく。

きっかけは、あの「BTS」だ。「バンタン(BTS)好き?」「私も!」「誰推し?」「ググ(ジョングク)」「私はテテ(V)」と会話が弾み、2人はあっという間に仲良くなり、一緒にライブに行く約束をする。

ソヒにとっては、トップK-POPアイドルのファンクラブの会費はかなりの出費。だが、ファンクラブに入らなければライブのチケットを入手するのも難しい。

父・サンジュ(井浦新)は入学者が激減する昨今、資金繰りの厳しい朝鮮学校の校長をしていて、お酒もタバコもやめた。母・ミリョン(市川実和子)は介護士で、弟も朝鮮学校の初級学校(小学校)に通っており、一家は切り詰めた節約生活を送っている。

そこで、イマドキの10代らしく(?)、2人はソヒの家にある不要品をフリマサイトで売ることにする。未来は商品の撮り方も売り方も心得ており、普段からそうやって推し活代を稼いでいるのだろう。

サンジュが持っていた北朝鮮の懐メロCDが想像もしていなかった高値で売れたときには、「在日でよかった」「いいなあ」といった会話も交わされる。そして“味をしめた”ソヒは、あろうことか父が祖国から授与された大切な勲章までも売ってしまうのだ。

TVからは弾道ミサイルの報道が流れる一方、生まれたときから日本にいて“ウリナラ”(わたしたちの国)と言われてもピンとこないソヒ。だが、その売ってしまった勲章の行方は、自分は何者であるのか、揺らぎに揺らぐソヒに家族や国、友達、そして朝鮮舞踊への向き合い方までも問うことになる。

ソヒ役を演じた自身も在日コリアンのルーツを持つ新人俳優の恒那ら、舞踊部員たちは、実際の部活動のように1年にわたる稽古を重ねて、ソヒの揺らぐアイデンティティと重なりあっていく朝鮮舞踊に挑んだ。

「踊りの美しさに大感動」「舞踊のシーンが素晴らしすぎて涙が止まらなかった」といった反響も相次いでおり、多くの観客の心を動かしている。

監督・脚本をつとめ、長編監督デビューを果たしたのは、自身も朝鮮学校に通いながら窮屈さを感じて、日本社会へ足を踏み入れた孫明雅(そん・みょんあ)。西川美和監督の『すばらしき世界』、是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』で監督助手を務め、西川監督からの「あなたの中には爆弾がある。その爆弾を作品にしてみたら?」という言葉が本作の出発点となったという。

映画『トロフィー』は、『GO』(01)や『パッチギ!』(05)のように誰かが殴ったり殴られたりはしない、『かぞくのくに』(12)の怒りや悲壮はあまり感じさせない。とても“いま”らしいというのか、朝鮮舞踊のシーンでテーマになっている“若葉”のような、未来さえ感じさせる瑞々しさを持つ物語である。

同時に、K-POPやKドラマなど、Kカルチャーを愛する者としても、その享受について考えさせられる1作ともなっている。

『トロフィー』はテアトル新宿ほか全国にて順次公開中。

《上原礼子》

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