本作の舞台は、ロシア・ウラル山脈の麓の小さな田舎町にあるカラバシュ初等・中等学校。主人公は、母校でもあるこの学校でイベントを企画・記録する撮影担当教員として勤務するパヴェル・タランキンだ。子どもたちの何気ない日常や成長の瞬間をビデオカメラに収め、よき話し相手として彼らを支える自身の職業を誇りに思っていたタランキン。しかし2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まったことで、彼らの日常は一変する。
国家が市民を扇動し、急速的に戦時下へと突き進んでいくなか、教育現場を侵食していく愛国プロパガンダの実態を当事者の視点から映し出す本作。タランキンはロシア学校教育の現状を世界に告発するため、国外のアメリカ人ドキュメンタリー作家デヴィッド・ボレンスタインと共同で本作を極秘裏に制作した。ロシア国内で数多くの戦争批判者が投獄され、厳しい監視体制が敷かれている極めて危険な状況のなか、約2年間をかけて完成した作品となっている。
今回解禁された予告編では、愛国教育に侵食される学校と、苦悩するひとりのごく普通の教員の姿が映し出される。冒頭では、タランキンが自身と、撮影担当教員としての仕事ぶりを通じて笑顔にあふれた学校を紹介。自由を愛し、子どもたちをサポートできる仕事に誇りを持つ彼だったが、2022年2月24日、プーチン大統領がテレビで「特別軍事作戦」の開始を発表したことで状況は一変する。
学校には愛国教育の新方針についての通知が届き、愛国歌の斉唱や戦意高揚スピーチなどが義務付けられ、それを撮影して政府に報告しなければならなくなる。「完全にイカれてるよ」とあきれるタランキンをよそに、学校では国旗掲揚、軍隊式の行進、教室にはためく国旗の小旗、保守系教師による排他的な授業など、異論を許さない戦時教育が急速に浸透していく様子が映し出される。
当初は撮影を職務としてこなしていたタランキンだったが、次第に「仕事は好きだけど、政府の手先にはなりたくない」など決して口外できない本音をカメラの前で吐露するように。そして、撮影する目的が変わっていったことが、自身のナレーションによって明かされる。刻一刻と切迫していく状況の中、彼の決断がもたらすものとは――その行方は本編で描かれる。
また、タランキンは監督のひとりとして本作への想いをこのように語っている。「これは、人々が望むと望まざるとにかかわらず、岩のかけらを押し付けられ、それを次々と受け渡していくうちに、ついには誰もがその重みに耐えきれず、従順で無感覚になり、“不条理”を“真実”として受け入れてしまうようになるまでの物語です」「(教職員は)みんな疲れ果てていましたが、政府から命令は次々と降りてきます。『撮影して、公開しろ』『撮影して、公開しろ』――だから私は撮影して、公開したんです。さあ、ご覧ください」
『プーチンの愛国教室』は10月3日(土)よりシアター・イメージフォーラム ほか全国にて順次公開。



