「映画って何の役に立つの?」と言わせたかった『モネと時間旅行』セドリック・クラピッシュ監督インタビュー | NewsCafe

「映画って何の役に立つの?」と言わせたかった『モネと時間旅行』セドリック・クラピッシュ監督インタビュー

芸能 シネマカフェ/映画/洋画ニュース
『モネと時間旅行』© STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roques
『モネと時間旅行』© STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roques 全 6 枚 拡大写真
世界で250万人動員の大ヒットを記録した『モネと時間旅行』より監督のセドリック・クラピッシュのインタビューが到着。19世紀末のベル・エポックと現代、2つの時代を舞台にした本作について、時代の変化にともなう進化がもたらした美と醜さ、そして戦争を描くことの意味と、映画の役割について語った。

パリで暮らす家族に遺された、ノルマンディーの草原に佇む古い一軒家。長い間閉ざされた屋敷から発見されたのは、白いドレス姿の女性が描かれた印象派の作品らしき絵画。絵に描かれた女性と、作者は、いったい誰なのか?

1枚の絵画に隠された家族の秘密が解き明かされたとき、それぞれの人生が輝きはじめる――。

『スパニッシュ・アパートメント』『ダンサー イン Paris』など、長年、パリを描き続けてきたセドリック・クラピッシュ監督が、新作『モネと時間旅行』で見つめたのは、長年描き続けてきたパリという都市の魅力だけではなく、19世紀末と現代、2つの時代を行き来することで浮かび上がる、社会の変化や、そこで生きる人々の価値観。

「昔のほうがよかった」と過去を美化するのでも、「今のほうがずっといい」と現在を肯定するのでもない、それぞれの時代が持つ魅力と変化を見つめながら、進化がもたらした美と醜さ、戦争を描くことの意味など、本作に込めた様々な想いを監督が語った。



1900年、パリは「現代」へと大きく変わり始めた
セドリック・クラピッシュ1900年という時代は、あらゆる意味で大きな転換点でした。1910年頃になると、パリの姿は大きく変わり始めます。自動車が走り、電気が普及し、地下鉄が整備され、飛行機も登場する。映画の多くの場面は、そうした資料をもとに組み立てていきました。資料を集めれば集めるほど、当時の暮らしと現在の暮らしを比較することが、これほど難しく、同時に刺激的な作業なのだということを実感しました。

私たちは、自分たちがどれほど多くの恩恵を受けているのか、案外、気づいていません。たとえば、どこの家庭にも蛇口をひねれば温水も冷水も出てくる。それがどれほど恵まれたことなのか、普段は意識することもありません。もちろん、私たちは多くのものを手に入れました。しかし、その一方で失ったものも少なくありません。だから私は、「昔のほうがよかった」と言うつもりもありませんし、「今のほうがずっといい」と言うつもりもありません。

映画に登場する養蜂家のギイ(ヴァンサン・マケーニュ)は、資本主義や技術の進歩に対して批判的な視点を持った人物です。今日では、環境問題だけでなく、「進歩」そのものに疑問を抱く人が増えています。この映画は、過去と現在を絶えず往復しながら、その問いを観客に投げかけようとしています。

「新しい美」と同時に、「新しい醜さ」も生まれた
セドリック・クラピッシュいまの社会がここまで深刻な状況になってしまったことには、正直なところ驚かされますし、気持ちが沈むこともあります。とりわけ地方都市では、どこへ行っても同じようなスーパーマーケット、同じような駐車場、同じようなロードサイドの商業施設が並び、風景は均質化してしまいました。田園風景だった場所には、鋼板で覆われた巨大な倉庫のような建物が次々と建っています。いまではフランス中どこへ行っても見かける、ごくありふれた光景です。

私は、そのどこか滑稽でもある風景を、映画のなかで少しユーモラスに描いてみたいと思いました。たとえば、ハンバーガー・チェーンの〈バッファロー・グリル〉に象徴されるような、美意識と呼ぶにはどこか空虚な空間です。現代風のインテリア、大判の写真、絶えず流れるBGM──そうしたものを少し戯画化してみようとしたのです。現代という時代は、確かに新しい美を生み出すこともあります。しかし同時に、同じくらい新しい醜さも生み出してしまう。そのことも描きたかったのです。

技術だけじゃない。女性、労働、都市、そして「歴史」も変わった
セドリック・クラピッシュこの映画が描いているのは、技術の進歩だけではありません。社会そのものもまた、大きく変化してきました。1900年当時、女性の生き方は現在とはまったく異なっていました。その後、多くの進歩があったことは間違いありません。もちろん、まだ道半ばではありますが。労働のあり方も、都市の姿も、同じように大きく変わってきたのです。

この映画では、ノルマンディーに暮らす、ごく普通の一家の歴史を描こうと思いました。ル・アーヴル近郊の田舎町で農業を営む一家です。彼らもまた、その時代を生きた多くの人々と同じように、戦争の暴力に巻き込まれていきます。映画のなかには、ふたつの世界大戦をほのめかす小さな断片がいくつか散りばめられています。

いま、このような時代だからこそ、戦争を美化するような言説に対して、「そこには美化すべきものなど何ひとつない」ということを伝えたいと思ったのです。戦争は、物語を生むことはあるかもしれません。しかし、それ以上に、人々の人生そのものを壊してしまいます。

私自身、家族の歴史をたどろうとすると、どうしても戦争という出来事に突き当たります。戦争は、ときに名もない人々の、ごく小さな人生を、大文字の〈歴史〉へと結びつけてしまう。そのことを、この映画の背景として静かに描いておきたかったのです。

映画が生まれた街パリ。映画って「何の役に立つの?」
セドリック・クラピッシュウジェーヌ・アジェやシャルル・マルヴィルの写真を見ると、当時のパリには、まだ野原が広がっています。モンマルトルの北側一帯も、今では想像できないほど牧歌的な田園地帯でした。そして、まさにその時代に映画が誕生したのです。

映画は1895年に生まれました。だから私は、この映画で映画そのものの誕生に触れないわけにはいきませんでした。カピュシーヌ大通りのグラン・カフェ、その〈インドの間〉でリュミエール兄弟が行った最初の上映会は、どうしても描きたい出来事だったのです。

映画のなかで、ルシアン(ヴァシリ・シュナイダー)はこんな言葉を口にします――「明日、オペラ座の近くで“シネマトグラフ”というものの最初の上映会があるらしい。どんなものなのか、さっぱり分からないけれど」するとローズ(ライカ・アザナヴィシウス)がこう返します──「それって、何の役に立つ?」

私は、このやり取りがとても好きなんです。というのも、私たちもいま、AIを前にしてまったく同じ問いを投げかけているからです。「それは何の役に立つ?」と。きっと20年もすれば、「あの頃は、その可能性をまったく理解していなかったんだな」と振り返る人が現れるでしょう。

モネが「印象、日の出」や「睡蓮」を描いたときも、それらがのちの絵画にどれほど大きな影響を及ぼすか、誰にも分かってはいませんでした。技術的な発明も、芸術における革新も、その誕生の瞬間には、それが世界を変える出来事になるとは誰にも理解できないものです。だからこそ私は、ローズに、「映画って、何の役に立つ?」と言わせたかったのです。

『モネと時間旅行』は9月18日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国にて公開。

《シネマカフェ編集部》

この記事の写真

/

アクセスランキング

  1. 「今日好き」りんか、母親と原宿へ 2ショットに反響「2人ともおしゃれ」「可愛らしい」

    「今日好き」りんか、母親と原宿へ 2ショットに反響「2人ともおしゃれ」「可愛らしい」

  2. 大原優乃、美脚際立つ白Tシャツ1枚風ショットが話題「セクシー」「ドキッとした」

    大原優乃、美脚際立つ白Tシャツ1枚風ショットが話題「セクシー」「ドキッとした」

  3. テレ朝・三谷紬アナ「めちゃくちゃ久しぶりの膝上丈」美脚際立つミニワンピ姿に反響「レベチのスタイル」「脚が長くて綺麗すぎる」

    テレ朝・三谷紬アナ「めちゃくちゃ久しぶりの膝上丈」美脚際立つミニワンピ姿に反響「レベチのスタイル」「脚が長くて綺麗すぎる」

  4. 板野友美、美脚輝くミニスカ制服姿に絶賛の声「平成感最高」「学校のマドンナ」

    板野友美、美脚輝くミニスカ制服姿に絶賛の声「平成感最高」「学校のマドンナ」

  5. IZ*ONE出身クォン・ウンビ、水着姿で美ボディ披露「脚の長さに驚く」「スタイル神」と反響

    IZ*ONE出身クォン・ウンビ、水着姿で美ボディ披露「脚の長さに驚く」「スタイル神」と反響

ランキングをもっと見る