
*TOP画像/秀吉(池松壮亮) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』36話(9月20日放送)より(C)NHK
戦国時代のど真ん中を舞台にした『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の主人公は仲野太賀が演じる豊臣秀長。兄弟の絆で“天下統一”という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第36話が9月20日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。
秀吉と秀長、それぞれ交渉に難航も……
第36回「姫若子(ひめわこ)と鬼若子(おにわこ)」で特に印象を残したのは、磯部寛之が演じる長宗我部元親。また本回では、秀長(仲野太賀)と秀吉(池松壮亮)が、力ではなく心で周囲を動かす姿が深い余韻を残しました。
元親の二面性
小牧・長久手合戦の後、徳川家康(松下洸平)の庶子・於義伊(立花利仁)が秀吉のもとに人質として送られ、家康と秀吉の戦はいったん収束しました。
秀吉らの続くねらいは、長宗我部元親(磯部寛之)がおさめる四国。元親に土佐一国の安堵を条件に和睦を申し立てるものの、彼はこの条件に応じる気はありません。というのも、元親にとって四国統一は何にも代えがたい夢であるから……。一方、秀吉と秀長にとっても、伊予は毛利家との関係を維持するうえで、妥協できない地域になります。
そこで、秀吉と秀長は元親と一戦を交えることを決意。秀吉から四国攻めの総大将に任命されたのは、秀長でした。秀長は1000艘もの船を出し、海を埋め尽くし、一気に攻め込む戦略を実行。紀伊湊の代官・吉川平助(松岡広大)の助力もあり、元親を大量の船で圧倒させました。

秀長(仲野太賀) 秀次(山田涼介) 正勝(高橋努)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』36話(9月20日放送)より(C)NHK
しかし、秀長が最終的に行ったのは、元親との直接的な話し合いでした。元親が「戦は 好きか嫌いかでするもんじゃあない」と過去に語ったことを思い出し、彼が抱く戦を続けることへの迷いや、人を殺め続ける現状への不安を汲み取ったのです。

元親(磯部寛之) 秀長(仲野太賀) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』36話(9月20日放送)より(C)NHK
元親にとって美しい着物を身にまとうことは、心の中に潜む醜い鬼を封じ込める手段でもありました。四国統一は彼にとって苦しい夢であり、人を殺めることに慣れた自分自身が、何より苦しい存在だったのです。元親は苦しい夢から秀長によって解放され、秀長の「殿(=元親)を説き伏せることができるがは あの時の殿しかおらぬ」という一言で、自分の本来の想いに気付き、戦を辞め、秀長の支配下に入ることを決めました。
史実の長宗我部元親はわずか十数年で四国統一を成し遂げ、“土佐の出来人”と恐れられた男。幼少期はおとなしく、色白の痩せ型で「姫若子(お姫様のような若殿)」と揶揄されていましたが、初陣で大活躍し、「鬼若子」と恐れられる存在へと変わっていきました。なお史実には、元親が桃色などの女性らしい着物を好んだという記録はなく、彼の装いは本作オリジナルだと思われます。
繊細な人は内に潜む激しさや欲望を敏感に自覚し、それが苦しくもあり、同時に抑えきれなくなるものです。そんな自分から目を逸らすかのように、美しいものを好み、美しいものを身に着けようとすることも……。

元親(磯部寛之) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』36話(9月20日放送)より(C)NHK
元親を演じた磯部寛之は、この人物の二面性を細やかに体現していました。美しい着物を身にまとい、過去の自分に少しでも引き戻そうとする無意識下の格闘も、磯部は見事に体現していたと思います。
秀吉と龍山……自分にないものを求める二人
秀長が元親の件で奮闘する一方、秀吉は近衛龍山(前野朋哉)のもとを訪れ、黒田官兵衛(倉悠貴)が見抜いていた通り、近衛家の養子に迎え入れてもらうため奮闘していました。というのも、桑山重晴(住田隆)が「関白になれるのは 公家の中でも 5つの家の者だけでござりましょう」と言っていたように、下剋上が可能な戦国時代においても、関白の地位に就くには家柄がものをいったからです。また、出世に家柄はまったく関係なかったわけではなく、成り上がりの武士の中には武家のブランドである「清和源氏の子孫」を自称する者がいたほか、戦国武将の中には家系図を改ざんした者もいたといわれています。

龍山(前野朋哉) 秀吉(池松壮亮) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』36話(9月20日放送)より(C)NHK
龍山は「私と そなたは ほぼ同い年やないか」「そなたのような大きな子ぉなど 欲しゅうはない」と秀吉の申し出に返答していましたが、史実では関白就任時の秀吉は49歳でした。ちなみに、当時の武士の平均寿命は40歳前後。そうした中で、政治的な目的があったとしても、自分と同い年の子どもは受け入れがたいと感じるのは、ごく自然な感情でしょう。
秀吉はこれで引き下がるほど容易な人物ではありません。龍山の嫡男である信輔は二条家が力を持つ今のままでは関白になる機会を失うと不安を掻き立て、身分によって人の扱いがどれほど変わるか力説。さらに、自分が朝廷を守る立場にあり、帝から絶大な信頼を得ていることを文をもって証明します。また、龍山からの「何で 将軍にならんのや」という問いに、秀吉は「将軍は 武家の棟梁(とうりょう)にすぎませぬ。されど 関白は 帝の代わりとなって 全ての民の上に立つ者。わしは そこからの眺めを見てみたいのじゃ」と答えていました。
龍山は関白に憧れる秀吉の気持ちを理解したうえで、「私はずっと 侍になりたかった。御所の中で 醜い諍いに 振り回されるよりも 思うがままに 野山を駆け おのが力一つで のし上がり 生きてみたかった。そなたのように」と、秀吉への羨望を明かしました。龍山は立派な生まれで、深い敬意を払われる立場にあり、命がけで刀を振るうこともほとんどない身。そんな彼が求めていたのは、安逸な栄誉ではなく、みずからの意志で羽ばたける自由と、己の力を試す機会だったのです。
龍山は国民の大半を占める百姓の苦労を知らず、隣の芝生が青く見えているだけなのかもしれない……。それでも、自由を知らず、自らの意思を問われることなく、諍いに巻き込まれるなど苦労もしてきました。そんな龍山は秀吉を我が子として認め、「どこまでいけるか 見してみやれ」と、最終的にエールを送りました。

龍山(前野朋哉) 秀吉(池松壮亮) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』36話(9月20日放送)より(C)NHK
秀吉は関白の地位を得て、一介の小百姓が国の最高権力者へと上り詰めるという奇跡を起こしました。
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