
10人に1人の女性が、夫から「性的強要」をされた経験がある。内閣府が令和5年に発表した「男女間における暴力に関する調査」で、そんな衝撃的な事実が明らかになりました。夫婦だからといって、何をしても許されるわけではありません。たとえ相手が夫であっても、望まない性交渉を強いられれば、妻は深い精神的苦痛を負うのです。交際中は彼女、結婚すれば妻、そして出産後は母親へ。呼び方が変わるように、夫婦の関係も時間と共に変化していきます。
MR探偵事務所が2026年に行った調査によれば、スキンシップや性生活が「ほとんどない」と答えた夫婦は、それぞれ42%にものぼりました。夫婦双方がそれを望んでいるなら問題ありません。しかし、妻は望んでいないのに、夫だけが一方的に求めてきたら…それは「性的強要」になりえます。行政書士として多くの夫婦問題に接してきた筆者のもとにも、夫からの性的強要に苦しむ妻からの相談が後を絶ちません。今回ご相談いただいた美穂さん(43歳)も、そんな苦しみを抱える一人でした。
【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 #26】
※画像はイメージ写真です。
<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)
夫:千葉浩平(44歳)→会社員(年収650万円)
妻:千葉美穂(43歳)→パートタイマー(年収130万円)☆今回の相談者
夫婦の子:千葉瑞穂(13歳)→中学生
妻の父:山本太助(66歳)→年金生活
妻の母:山本かおり(64歳)→年金生活
児童相談所の職員:三浦志保
娘がいるのに…。声を押し殺した夜に起きた悪夢
美穂さんは長年、夫からの「性的強要」に悩まされてきました。彼女自身は夫との性行為を望んでいませんでしたが、波風を立てたくない「事なかれ主義」の性格から、無理に断ることもできずにいました。特に彼女を悩ませていたのは、娘の瑞穂さん(13歳)が家にいるにもかかわらず、夫が性交渉を求めてくることでした。多感な思春期の娘に、もし見られたらどうしよう…。
そんな不安を抱えながら声を押し殺していた夜、とうとうその心配は現実のものとなってしまいます。夫婦の寝室のドアが、不意に開かれたのです。そこに立っていたのは娘の瑞穂さんでした。「あ、ごめん」。娘はすぐにドアを閉めましたが、その日を境に、瑞穂さんの様子は明らかにおかしくなってしまったのです。
「女友達」のようだった娘が、母親を避けるように
もともと美穂さんと瑞穂さんの母娘関係は、まるで「女友達」のように良好でした。リビングで一緒にドラマを見たり、くだらない内容のLINEを送り合ったり、好きなアイドルのライブに連れ立って出かけたり。
しかし、あの日以来、瑞穂さんは母親である美穂さんを避けるようになりました。美穂さんが話しかけても何も答えず、自分の部屋に逃げ込んでしまうのです。食事も部屋にこもったまま出てこないため、美穂さんは部屋の前に食事を置くしかありませんでした。「今までは一緒に食卓を囲んでいたのに…」と彼女は嘆きます。もともと娘にとって父親は「空気のような存在」でしたが、今や母親である美穂さんまでもが、同じように扱われるようになってしまったのです。朝になっても起きてこず、中学校を遅刻する日も増えていきました。
▶「ご夫婦の行為は性的虐待です」突然の訪問者と衝撃の宣告
「ご夫婦の行為は性的虐待です」突然の訪問者と衝撃の宣告
家庭内の不和が続く中、ある日、招かれざる客が美穂さんたちの家を訪れました。児童相談所の職員です。自宅にいた美穂さんが玄関に出ると、職員は衝撃的な言葉を口にしました。「ご夫婦の行為は性的虐待に当たります。娘さんを一時保護します!」。何が何だか分からず、「性的虐待?私たちは何もしていませんよ、人違いじゃないですか?」と訴える美穂さんに、職員は「心当たりがありませんか?娘さんはご夫婦の寝室を見ましたよね」と厳しい口調で返します。
こども家庭庁が公表している「児童虐待防止対策」では、「性的行為を見せること」も性的虐待に該当すると定義されています。美穂さんは「娘には悪いことをしたと思っています。でも、これは家族の問題です」と説明しましたが、職員は引き下がりません。「こちらも十分に検討した結果、一時保護が妥当だと判断しました!」。
児童福祉法33条により、児童相談所には子どもを一時保護する強い権限が与えられています。さらには「お母さん、こちらも警察沙汰にはしたくないんですよ」と、児童虐待防止法に基づき警察に援助を要請できることまで示唆され、美穂さんは恐ろしくなり、抵抗することを諦めました。職員に呼ばれた瑞穂さんは、黙って職員の後ろについて家を出て行ってしまったのです。
なぜバレた?通報したのは娘の変化に気づいた学校の先生だった
厚生労働省の2023年の報告によれば、13歳の児童虐待で性的虐待が占める割合はわずか2%です。一体誰が通報したのでしょうか。美穂さんによると、最初に瑞穂さんの異変に気づいたのは、中学校の担任の先生だったようです。あの日から瑞穂さんは顔色が悪く、目の下には大きなくまが居座り、ぶかぶかのブラウスを着るほど急に痩せてしまいました。心配した先生が「何かあったの?」と声をかけると、瑞穂さんは正直にすべてを打ち明けたのです。
児童虐虐待防止法第6条には「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに児童相談所に通告しなければならない」と定められており、学校の先生もこれに含まれます。先生は職務を全うしたにすぎません。しかし、美穂さんの胸には「うちの家庭がどうなるのかを考えないなんて!」という、やり場のない憤りが渦巻いていました。
娘を突然連れていかれてしまった美穂さん。果たして、娘を取り戻すことはできるのでしょうか。関連記事『「俺は悪くない!」児童相談所で逆ギレする夫。娘を取り戻すための唯一の条件は「別居」。43歳・妻が決断した未来とは』では、児童相談所との交渉、そして自己中心的な夫との対立が引き起こすさらなる悲劇について、行政書士の露木幸彦さんに引き続き伺っていきます。
>>後編を読む
『「俺は悪くない!」児童相談所で逆ギレする夫。娘を取り戻すための唯一の条件は「別居」。43歳・妻が決断した未来【行政書士が解説】』



