全部デジタルになるの? 1年生から使うの? 大きく変わる制度に保護者は困惑するだろう。文部科学省は、初等中等教育局の後藤教至教科書課長のインタビューを公開し、教科書へのデジタル活用で広がる「新しい学びのカタチ」について説明している。
デジタル形態を含む新たな教科書への移行
これまで法律上の教科書は、紙に印刷して束ねたものとされていた。2021年度から小中学校に導入された学習者用デジタル教科書(以下、旧デジタル教科書)は、紙の教科書の内容を電子化した教材であり、正式な教科書ではなかった。今回の法改正により、教科書の概念にデジタルな形態が含まれ、発行者は学年や教科に応じて適した形態を選んで制作できるようになる。
新しい教科書は、2030年度の新学習指導要領の実施に合わせて順次導入する方針である。小学校の教科書では、2027年度に発行者が教科書を作成・編集し、2028年度に文部科学省がデジタル部分を含めて検定する。2029年度には、教育委員会が教科書を採択する流れとなる。文部科学省は、2026年度中に制作、検定、採択、使用に関する基本的な考え方を大臣指針や新たな検定の仕組みとして示す方向で検討している。
デジタル化で学びはどう変わるかデジタル化によって、動画や音声などを使った学習が可能になる。理科や化学の実験手順は、紙では文章や写真による説明が中心だったが、動画を使えば手順を確認しやすい。英語ではネイティブ音声を繰り返し聞くこともできる。タブレット上では、アンダーラインや書き込みをためらわずに行え、消去も容易である。
文部科学省の説明によると、全国学力・学習状況調査では、授業内容の理解、主体的な学び、対話的な学び、教科への好意といった指標が学力と相関している。旧デジタル教科書の実証研究では、使用頻度が高い児童生徒ほど、これら4つの指標が高い傾向が確認されている。
小4以下では完全デジタル型は認めずただし、すべての教科書をデジタルにするわけではない。児童生徒の発達段階や教科の特性を踏まえ、小学校4年生以下では完全デジタル型を認めず、小学校5年生以上でも国語、社会、道徳などは完全デジタル型を認めない方向で検討している。英語や音楽、美術などはデジタルを活用できる場面が多い一方、国語や古文など、じっくり読み込んで考える学習では紙が適しているとされる。
紙の教科書で学習が困難な児童生徒への対応も進める。音声読み上げやハイライト表示など、利用しやすさ(アクセシビリティ)を高める機能を備えたデジタル版を、個々の状況に応じて選択できる仕組みを準備する考えである。また、デジタル部分の掲載量が過度にならないよう、一定の枠組みを設けることも検討している。
画面を見る時間が増えることによる視力低下など、健康面への懸念も出ているが、文部科学省は医師を交えた議論を進め、「30分に1回は目を離す」「30センチメートル以上離して見る」といった配慮を含むルールづくりを検討している。家庭でのデジタル機器の使用やSNSの扱いについては、次期学習指導要領で情報活用能力やメディアリテラシーを高める教育の強化を図る方針である。
基本は紙の教科書であり、子供の発達段階や教科の特性に応じて、紙とデジタルを使い分ける。ハイブリッド型の教科書では、文字や言葉だけでは理解しにくかった内容が動画や音声で視覚化され、子供たちにとってよりわかりやすい学びが実現する可能性がある。児童生徒の力をどれだけ引き上げられるかを考え、教科書の内容をわかりやすく、学びやすくするためのデジタル活用であると後藤氏は語っている。保護者にとっても、子供が「わからない」と悩む場面が減り、学習への意欲を保ちやすくなることが期待される。



