
不登校児の親として、体験したことや考えたことをふりかえるこの連載。
今回は、前回に引き続きフリースクールとの関わりについて考えたい。
前回▶中学以降、不登校の支援は限られると言われるが…不登校の中1娘がフリースクールに通おうとしても「壁が立ちはだかる」【仙田学・シングルファーザー小説家の子育てと社会日記】#7
何が何でも元の学校ではなく。早めにフリースクールを探し始めた
長女が学校を休みがちになったのは、小6の3学期からだった。春休みを挟んで中学生になってもそれは続き、1学期の終わり頃からは全く行かなくなった。
その状態が長く続くだろうと思ったわたしは、フリースクールを探しはじめた。
ところが京都市が運営している公立のフリースクールからは、学校を通して申し込みをしたものの、待てど暮らせど返事がこない。
返事を待つあいだに私立のフリースクールも視野に入れておこうと、夏休みに2ヶ所に見学にいったところ、そのひとつの雰囲気を長女が気に入ったので、通わせることにした。
通い始めた1つ目のスクール。長女は笑顔を見せなかった
大手の学習塾が数年前から新事業として開校したフリースクールで、個別指導のかたちで授業を受けられて、サークルや行事などの活動も盛んにおこなわれている。中学校より少人数で、友達や先生との距離感を自分で選べるところが長女に合っているように思えた。
週1日から通わせることにして、最寄り駅から2つ離れた駅の近くにあるその教室まで、弁当を持たせた長女を送った。授業や活動の時間が終わるまで近所のスーパーのフードコートで時間を潰して、迎えにいって一緒に帰る。
行き帰りに笑顔を見せないし、楽しいと口にすることもないのが気になったが、淡々と通えているのならそれでよしと思うことにした。
だが、ひと月半ほど経つ頃に、長女はとつぜん行かなくなった。
最寄り駅までは行けたけれど、やっぱり行きたくないと言いだして、同じバスにまた乗って家まで引き返したこともある。
あるときに、また最寄り駅から引き返すことになり、フリースクールに欠席の連絡を入れた。すると、電話にでた先生がいまから行きますとおっしゃった。20分ほどして、先生が改札から現れた。
バス停のベンチで長女の横に座り、先生がぽつりぽつりと話しかけるのを、わたしは離れたところから見守った。30分ほどすると、先生が戻ってこられたので聞いてみると、やはり長女は行きたくないと言ったようだ。
「うちにも保育園に通ってる子どもがいるんですけど、ときどき行きしぶりをすることがあって。心配ですよね」
と、先生は長女を見つめながらつぶやいた。フリースクールで不登校の子どもの支援をする仕事に就く人はどんな思いで子どもたちと関わっているんだろう。長女のことで頭がいっぱいになりながらも、そんなこともたまに考えるきっかけになったひと言だった。
長女はその後もフリースクールを休みがちになり、通いはじめて2ヶ月が経つ頃には全く行かなくなった。1日のほとんどを寝て過ごして、誘えば喜んで外出にはついてくるが、友達と関わったり、行事に参加したりすることはない。その年齢でしか得られない経験もあるだろうに、と思うと、このままでいいのかとわたしはまた焦る気持ちを抑えられなくなった。だが,いまはどこかに通う時期ではないのだろうと思いこもうとした。
スクールの先生はわざわざ家庭訪問をしてくれたのだが
フリースクールの別の先生が家庭訪問に来られたのはその頃だった。台所のテーブルを長女とわたしと先生で囲み、最近の過ごしかたなどをしばらく話してから、先生は切りだした。
「どうして来れなくなったのかな?」
長女は答えない。
「なんか嫌なことがあった? 誰かに何か言われた?」
長女は俯いたままだ。
「僕たちは〇〇ちゃんに来てほしいと思ってるし、教室が楽しいところであってほしい。もしこうしてほしいってことがあれば、できるかぎりのことはするから……」
何度も長い間をあけて先生は話しかけ続けたが、長女は口を開かず、やがて泣きだした。涙が後から後からこぼれてくるが、声はでていない。
またくる? と何度も聞かれてやっと、
「行きません」
と答えた。だが理由は聞かれても答えず、声をあげて泣きだした。
「ごめんね。気づかないうちにきっと、〇〇ちゃんを傷つけるようなことをしてしまったんだと思う。ごめんなさい」
先生は最後に長女に頭をさげてから席を立った。
玄関まで見送りながら、わたしは先生と話した。通えなくなる子は他にもいるだろうに、毎回このように家庭訪問をしているのだろうかと思い、聞いてみると、
「今日はお会いできたからよかったです。お家まで行っても会えないこともあるんですよ。会えるか会えないかは半々です」
とのことだった。よほどの思いがないとできない仕事だなと思った。何軒も家庭訪問をして、子ども本人に会えなかったり、行きたくないと泣かれたりすれば、仕事とはいえこたえるだろう。
つづき>>>面談室で先生と向き合った私が「思わず涙を流した」不登校児の親ならではの「言い知れぬ苦しみ」とは



