令和6年度「かわさきマイスター」を認定しました
1 令和6年度かわさきマイスター認定者
(1) 遠藤 豪人(えんどう ひでひと) 氏(機械設計・製作)
(2) 鈴木 宏(すずき ひろし) 氏(無電解ニッケルめっき表面処理)
(3) 西 雅也(にし まさや) 氏(温間・冷間圧延加工)
(4) 橋本 大輔(はしもと だいすけ) 氏(左官)
(5) 松林 繁(まつばやし しげる) 氏(スタッド溶接)
令和6年度かわさきマイスター認定者
※ 年齢及び従事年数は令和6年11月5日時点を基準としています。
令和6年度かわさきマイスター認定者技能紹介
遠藤 豪人(えんどう ひでひと)さん
(1)年 齢:55歳
(2)職 種:機械設計・製作
(3)従事年数:29年
(4)勤務先:有限会社伊藤工業
住所:高津区東野川1-10-26
電話:044-766-5111
遠藤さんが勤める伊藤工業は平成22年度に認定された伊藤直義マイスターが社長を務め、様々な機械装置の設計製作を手掛ける企業です。遠藤さんは機械装置の全体像をイメージする構想力が高く、顧客の要望がどのようなものであっても、機械装置が動作している姿が頭に浮かんでくるといいます。そして一人で顧客の要望を満たす仕様を定め機構を設計して、部品も製作した上で機械装置を完成させます。
遠藤さんは美術大学で工業デザインを専攻し、卒業後はカメラレンズメーカーに就職し設計に従事していました。ただ、机上でものを構想するだけではなく、自分の手で造り上げることに魅力を感じ、自分で様々な機械や装置を構想し造り上げることができる有限会社伊藤工業へ入社しました。
伊藤工業に就職した遠藤さんは各種加工の技能を磨き、様々な形状を加工できる技能を身に付けるとともに、業務経験から広範な機構の知識と豊かな構想力を培ってきました。
遠藤さんが設計・製作した機械や装置を挙げると、フィラメントの製造機・巻取機・切断機、ジーパン削り器、スパイラルモーターなど、多種多様な機械装置があります。最近では全国の下水管などで多用されている管内検査ロボットを開発しました。いずれも奇抜な動作や機能を持ち、また、機能面だけではなく、機械装置の外観や使いやすさにも配慮されており、工場を訪ねてくる学生に対しても、そうした経験からの技術を実践的に教えることに取り組んでいます。
多様な分野の顧客のニーズを汲み取り、要望に沿って自分で設計、製作の工程を考え、完成させる能力は単に仕事の繰り返しの中から習得できるものではありません。これは、遠藤さんがこれまで培った豊かな構想力と熟達した加工技能とともに、ものづくりに対するたゆまない探究心によって造り上げられたものです。
鈴木 宏(すずき ひろし)さん
(1) 年 齢:55歳
(2) 職 種:無電解ニッケルめっき表面処理
(3) 従事年数:26年
(4) 勤務先:株式会社ブラザー
住所:川崎区浅野町3-8
電話:044-322-7571
鈴木さんは、国内最大級の無電解ニッケルめっきライン「メガニッケル(R)」の現場責任者であり、超大型かつ複雑な形状の製品に対して、高品質に均一なめっき処理を施すことができる技能者です。
無電解ニッケルめっきとは、電気を使わずに化学的還元反応によってめっき処理を施すもので、複雑な形状のものにも均一な被膜を得ることができ、特殊な処理によって電流が流れにくいプラスチックやセラミックなどの製品にもめっきができるといった特徴があります。
特に、平成20年度に「川崎ものづくりブランド」の認定を受けた「メガニッケル(R)」ラインの槽(縦2m×横4m×深さ3m)で扱う製品は、大きさ・重さが規格外で形状も複雑なものが多く、製品の吊り方や液抜き用の穴あけ位置などの受注前の仕様決定が重要となります。これを鈴木さんは、経験とノウハウを基に、事前の打ち合わせ段階から加工まで全工程を担うとともに、微量の添加物でも変化するめっき液の状態を見極めて液管理をするなどの作業においても、鈴木さんの熟練した職人技術が活かされています。
また、めっき処理では特に重要な前処理においては、超大型製品の目視ができない深部や細部を想定した上での処理の組み立てや、重量物を安定して吊り上げるための治具製作、精密にめっき膜厚を維持するための段取り方法や前処理方法の選定など、一般的なめっき処理に係る技術・技能では対応できない技能を発揮しています。また、めっき処理時においては、均一なめっき被膜となるよう、めっき後の外観をイメージしながら、投入時間を管理するとともに、めっき反応により生じる水素ガスが滞留しない様に抜く作業を行うなど、長年の経験と勘で高度な品質を保っています。特に、めっき処理の中でも難しいとされる厚付けめっきと言う技術で、最大200ミクロンの膜厚を実現しました。
また、「メガニッケル(R)」ラインでは4名が従事しており、鈴木さんはめっき処理を施す製品に支障が生じないか判断した上で、難易度や個人の修練度に応じてマンツーマンで指導を行っており、同社のメガニッケル槽の運用と事業継続にあたって、欠かせない存在となっています。
西 雅也(にし まさや)さん
(1)年齢:47歳
(2)職種:温間・冷間圧延加工
(3)従事年数:28年
(4)勤務先:リカザイ株式会社(中原区下沼部)
住所:中原区下沼部1810-7
電話:044-411-6138
西さんが従事する圧延加工とは、回転する2本のローラ間に金属の板などの素材を通して、所定の厚みに薄く引き延ばす加工技術です。
リカザイ株式会社の圧延加工は、チタンからアルミ、鉄、ニッケル、マグネシウムなど様々な素材に対応し、その金属箔は次世代自動車をはじめ、エネルギー研究、医療機器・民生機器・精密機器、海洋研究・宇宙研究など幅広い分野に使われています。また、平成29年度には、厚さ1ミクロンからの金属箔を作成可能な加工技術として「川崎ものづくりブランド」の認定を受けています。
なかでも西さんは、製造技能者のトップとして、二人一組で行う同社の圧延加工において、技術・技能を要する受け手側を担っており、経験や繊細な感覚を基にしたロール間隔の調整や、数ミクロン以下の薄箔のはがしを手作業で行うことができ、触っただけで箔の厚みが分かる技能を有しています。特に新しい素材のマグネシウムは柔らかい素材のため、箔の扱いが難しく、厚さ2ミクロン以下の圧延作業については、西さんにしかできない作業となっており、「リカザイの評価=西さんの評価」と言っていいほどに、同社の圧延加工の中心を担っています。
また、ロール研磨の出来栄えが箔製品に転写されるため、ロール状態の良し悪しの判断は、圧延加工において非常に重要ですが、西さんは前職として段ボール印刷用ロールの研磨を経験しており、研磨起因の製品の表面あらさなどについて、厳しく検査を行い、それを後進に伝えるだけではなく、外注先のロール研磨業者への指導も行っています。
後進の育成に関しては、二人一組で行う圧延作業において、相方の教育指導を日々行うとともに、製造技能者のトップとして社内の教育訓練などでも指導しています。現在は難加工材と言われる圧延の難しい素材や研究レベルで開発された合金など、実績のない開発・施策案件は西さんだけが処理可能であり、会社の新規開発品への取組も一手に担うなど、西さんは若くして十分な経験と探求心を有しながら、今でも新規業務の導入などへの挑戦を続けています。
橋本 大輔(はしもと だいすけ)さん
(1) 年齢:52歳
(2) 職種:左官
(3) 従事年数:29年
(4) 勤務先:株式会社白壁屋
住所:麻生区はるひ野1-15-1-255
電話:090-3506-1076
橋本さんは大学時代に左官のアルバイトをしたときに身体と五感を使って仕事を仕上げる左官仕事に魅了されました。卒業後は迷わず左官業の会社に入社し、外壁や内壁、床のモルタル塗り、コンクリート押さえなど左官仕事全般を習得しました。そして工事現場の左官仕事を仕切る世話役を務めるようになりました。
左官技能を極めることを目指す橋本さんは独立した後、日本古来の技法を探求します。伝統技法を知る先人の下に赴き技能の手ほどきを受けるなど継承に努めました。
近年は、工期が早い乾式工法が主流であるのに対し、橋本さんは熟練を要する旧来技術の湿式工法も施工可能なことに加え、「小舞(こまい)荒壁(あらかべ)」、「焚き糊(たきのり)漆喰(しっくい)」、「三和土(たたき)」などの古来日本住宅に使われてきた技法を修得し、歴史的建造物や寺院の修復工事にも携わるようになりました。
代表的なものには川越市重要伝統的建造物群保全地区の安斎邸修復工事、鎌倉市国登録有形文化財のかいひん荘鎌倉洋館(旧村田家住宅洋館)修復工事、東京都台東区の護国院修復工事などがあります。現代では材料の調達などに制約があるため、橋本さん独自の工夫や考察が加えられ修復されています。
橋本さんは左官の伝統技能や材料についての継承や指導にも情熱を傾けています。美大生への講習、設計事務所や施工会社の実務者への土壁、漆喰の研修などに積極的に応えるほか、Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)などのSNSを通して伝統技能の発信に努めています。
橋本さんは、伝統技法に対して研究熱心であるだけでなく、年齢や業種に捉われない交流を積極的に行い、ポジティブに時代と時代の融合を創造でき、自らの卓越した技術・技能の若手への継承など業界の発展と後継者育成のため幅広く活動を続けている技能者です。
松林 繁(まつばやし しげる)さん
(1) 年齢:65歳
(2) 職種:スタッド溶接
(3) 従事年数:36年
(4) 勤務先:有限会社マスト
住所:川崎区浅田3-6-1-208
電話:090-7878-6864
スタッド溶接は鉄板や鉄骨などの母材にボルトやピン、鉄筋を電気溶接する工法で建築物や工業製品に幅広く用いられており、松林さんは建築工事現場などでスタッド溶接を手掛ける技能者です。松林さんはスタッド溶接専業の会社に14年間勤務し、様々な工事現場でスタッド溶接に携わってきました。その後独立し有限会社マストを設立、専ら日本スタッドウェルディング株式会社の協力会社としてスタッド溶接に携わっています。
他の溶接工法と比べたスタッド溶接の特徴は、溶接時間が1秒以内と短いため、母材の溶接痕が小さい上に接合部の強度が高い工法とされています。ただし、水平方向や下向きからの施工、90°に曲げられた鉄筋などの場合には、電圧や電流、溶接時間等の微細な調整を要しますが、建築や土木工事現場の限られた作業スペースにおいても、適切な作業姿勢を確保して微細な調整を行うなど、経験に裏付けられた熟練技能が求められます。
松林さんの熟練技能は一般社団法人スタッド協会が実施するスタッド溶接の専門級資格の最高位である F 級(太径で下向き溶接が可能な資格)に認定されました。令和4年には松林さんが経営する、有限会社マストもスタッド協会が認定する優良施工店の表彰(対象施工店約400社のうち3社のみ受賞)を受けました。
松林さんが携わった代表的な工事は羽田再拡張D滑走路建設工事、高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事、東京外かく環状道路本線トンネル(南行)大泉南工事、バングラデシュのジャムナ鉄道橋頂版結合工事などがあります。これらの工事現場で松林さんがスタッド溶接全般を取りまとめるなど指導的な役割を果たしました。
また、松林さんはスタッド溶接の技能を次世代に繋げることは重要インフラの持続性に寄与するものであり、後続の施工者に伝えていくことが大切だと考えていることから、これまでに自社従業員の育成に注力するとともに、スタッド溶接を行う他の協力会社に対しても、必要な情報共有や技術指導を行うことなどにより、後進の育成も積極的に行っています。
◆詳細プレスリリースはこちらからダウンロード可能です。
https://prtimes.jp/a/?f=d124454-115-41cc8384ceef4eff3763cdf6d91b367c.pdf
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