【慶應義塾】脳組織判別能を持つ力触覚技術を搭載した脳神経外科手術用鑷子型デバイスの開発

-硬さによって脳腫瘍組織を判別することが可能に-

慶應義塾大学医学部脳神経外科学教室(戸田正博教授)の佐々木光客員教授(東京歯科大学市川総合病院脳神経外科教授)、江崎雄仁研究員、柴尾俊輔共同研究員(獨協医科大学脳神経外科講師)らの研究グループは、神奈川県立産業技術総合研究所の大西公平研究顧問(慶應義塾大学ハプティクス研究センター長)、下野誠通グループリーダー(横浜国立大学工学研究院准教授)、松永卓也研究員(神奈川県立産業技術総合研究所)らとの共同研究において、力触覚技術を搭載した鑷子(せっし)型デバイス(以下、力触覚鑷子)を開発し、硬さによって正常脳組織と脳腫瘍組織を判別する可能性を動物実験で実証しました。

力触覚技術とは、実際の触覚を増幅・伝達・記録・再現することができ、物体の物理的特性を定量化できる技術です。脳腫瘍摘出術には繊細な力加減と精密な微細動作が要求され、また膠芽腫のように腫瘍と正常脳の境界部分が不明瞭な場合は熟練した技術と手術経験が必要です。一方で、大腸がんなどのがん種において、腫瘍の硬さは病理組織所見や分子学的特徴との関連性が示唆されており、診断のバイオマーカーとして、あるいは、がんの生物学的特性や術後の有害事象の予測への応用が検討されています。力触覚技術を搭載した手術用鑷子が実用化されれば、脳腫瘍摘出術における安全性の向上と技術の均てん化、また硬さからの脳組織の特徴判別が可能となることが期待されます。

本研究では力触覚鑷子を用いて、組織の硬さが脳腫瘍を周囲の正常脳組織と区別するための指標となるだけでなく、腫瘍の病理診断を判別するための指標にもなり得ることを示しました。今後、より微細な硬さの変化を感知する鑷子への改良、あるいはリアルタイムの位置情報としての活用などにより、脳神経外科手術への貢献が期待されます。

本研究成果は2024年9月13日(米国東部時間)にScientific Reportsに掲載されました。

▼全文は本学のプレスリリースをご参照ください。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2024/11/11/241111-1.pdf

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