「震災の記録を残したい」と映画を作成した大学生 | NewsCafe

「震災の記録を残したい」と映画を作成した大学生

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東日本大震災の記録を残し、伝える取り組みは様々な立場からされている。以前にもこのコラムで伝えた「大津波のあとで」と「槌音」の映画は大反響で、連日、映画館を満席にさせた。

また、岩手県陸前高田市高田町出身で、山梨県立大学3年生の菅野結花さんも「きょうを守る」を作成。上映会も徐々に開始。陸前高田の今を記録したいとの思いが込められている。映画の内容は、家族や同級生、同級生の親、計9人のインタビューをまとめたものだ。家が流された場所で母親をインタビューをしたり、立ち上げた劇団の練習場所になっていた中央公民館や出身の高田高校で同級生の話を聞いたり、避難所の厨房を手伝った男性や受付をしていた女性も登場する。

2011年3月11日午後2時46分、外出先から戻り、玄関を開けた時に菅野さんは地震を感じた。しかし、アルバイトのためにすぐに出かけた。そのため、帰宅した午後11時すぎまで何が起きたかを知らなかった。直後は携帯電話は通じず、家族との連絡は取れない。しかし、インターネットは繋がっていたために、友人の一部は安否はSNSのmixiで把握できた。家族の無事が確認できたのは3、4日後だった。

「最初はインターネットで得た情報をまとめていました。遠くからできることを探していたんです」

その後、菅野さんは3月中に帰省し、避難所になった第一中学校体育館の厨房を手伝った。市内を見たときの気持ちとして、「かろうじて道がある程度。家も流されてしまい、何か自分のものがあるかな?と思って探したが、何もなかった」と振り返る。ただ、甲府に戻ると、普段と変わらない日常がそこにあった。しかし、気持ちを整理する余裕もない。報道を見ていても、被災地とのギャップを感じていた。


「どうしても記録として残したい」


学生スタッフとして参加していた「やまなし映画祭」の集まりがあり、相談した。すると、映画監督の崔洋一さんが「それは君の手で撮るべきだ」と背中を押した。ほかのスタッフも様々な観点から支えてくれた。「撮れたのは周りの支えが大きい。何からしていいのかわからなかったんですが、周りの人にいろんな相談をしました。私はプロじゃないけど、プロじゃないなりに一生懸命に撮ろうと思った」と彼女は語る。

撮影は7月と8月に行った。母親のほか、同級生の父親・母親、同級生のインタビューをした。それまでの人間関係があったからこそ出せる表情や話せる内容ばかりだ。プロのドキュメンタリー作家や報道とは違ったものがそこにある。

「取材をしていないんですよ。会話をしに行ったんです。母親も協力してくれて、インタビューを受けてくれる人を探してくれました。でも、本当に撮っていいのか分からなかった」

印象に残るシーンは、高校の生徒会副会長をしていた菅野さんが、会長をしていた同級生と津波にのまれた校舎を見に行った時のことだ。玄関にジュースとパンが置かれていた。そこで亡くなった人たちへのお供え物だったかもしれない。菅野さんは「なんか、映しちゃ悪い気がする。ごめんなさい」とつぶやく。

私を含め、プロの報道やドキュメタリー作家の中にも、そういう気持ちになることがある。しかし、客観報道であれば自分の言葉を入れない。菅野さんの作品はそうした言葉を入れることで、生まれ育った故郷の日常が失われたということを表現しているのだ。これは胸がつまるものがあった。

「まだ納得はしていない。編集技術的には改善点はたくさんある。軽い話ではないし、インタビューをすることで、あの日の一日や辛いことを思い出せることもある。そういう自分に罪悪感を抱くこともあった。やってよかったのか?というのは自分だけでは判断できない」

これまでに「やまなし映画祭」をはじめ5回上映している。反響は良く、陸前高田出身の高齢の女性からの「陸前高田には行けないが、私の目になってくれてありがとう」との声もあり、心に響いた。また、菅野さんは日々の暮らしで気がついたこともあった。当たり前のことを「感謝」する気持ちだ。

「震災後数日間は部屋にこもって情報収集ばかりしていた。でも、友人の安否が分かり、部屋の外へ出たんです。すると、そこには道があり、店があり、人が歩いていた。すごく涙がでるほど感謝したんです。その日常を誰かが保ってくれている」

「きょうを守る」は今後、2月19日(山梨県富士五湖町/勝山ふれあいセンターさくやホール、富士山・河口湖映画祭)と3月4日(山梨県市川三郷町/市川三郷町多目的ホール、町社協主催)に一般公開する予定だ。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]

《NewsCafeコラム》

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