【第六回:編集後記~Newsスナック】お酒の「チカラ」
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その日、私は仕事関係の酒席に参加し、帰りにちょっと飲みなおそうと家の近所のバーに立ち寄った。
カウンターの真ん中に外国人男性が座っている。私は一席空けて座った。他に客はいなかった。
小さな駅の常連ばかりの店なので、外国人がいることを少し不思議に思っていると、店員が「イタリアの方だそうですよ、ジョルジョさん(仮名)。オーナーの知り合いだそうです」と紹介してくれた。
軽く頭を下げると、ジョルジョさんも会釈で返してくれた。
ちびちびとウォッカを飲んで、そろそろ2杯目…と思ったところ、店員が空のワイングラスを差し出してきた。
「ジョルジョさんからです」
ジョルジョを見ると彼はワインボトルを手に持ち、ニッコリと笑っている。
なんというスマートさ!さすがイタリア人!女なら落ちていたぞ!女じゃなくてゴメン!と感嘆しながら、ありがたくワインを頂いた。
どうやらジョルジョはまったく日本語が話せず、英語もほとんど話せないようだ。私はというと、イタリア語はもちろん、英語もまったくダメである。しかし、ワインを飲みながら身振り手振りと、つたない英語で話をすると、非常にスムーズに会話ができる。
好きな映画の話から、音楽の話、果ては好きな女性のタイプまで、時にジョークを交えながら、楽しい会話が続く。
ジョルジョはイタリアに恋人を残し、日本にきてモデルを始めたらしい。恋人の浮気が心配だと悩んでいると、非常に込み入ったところまで話は展開していった。
「惚れた女なら信じてやれよ!ジョルジョ」と彼の肩を抱いて励ました。ちょっと涙ぐむジョルジョ。おい!イケメン!泣くんじゃねーよ!
交互にワインボトルをおごりながら閉店まで飲み、かなり酔い、硬い握手をして別れた。
二人の間に友情が芽生えたような気がした。
それから一週間ぐらい後、道でばったりジョルジョに出会った。
ジョルジョも私に気付いてくれ笑顔で挨拶してくれた。しかし話をしようとしても、まったく通じないのである。ジョルジョも会話ができないことが不思議な様子。お互いに首を傾げて別れた。
後から考えると、あの夜、ジョルジョと会話ができたのは酒の力だったのではないか。酒には良くも悪くも様々な影響を人間に与える。その中に翻訳機能があることを私は学んだ。
今後、外国人の方とお会いする際には、酒が手放せそうにない。
[編集後記~Newsスナック/NewsCafe編集長 長江勝尚]
《NewsCafeコラム》