【第八回:編集後記~Newsスナック】春の足音
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当社は「桜丘町」という場所にある。その名の通り町が小高い丘になっており、そこに登る道の両端に桜が植えられた桜並木になっている。毎年、見事な花を咲かせてくれる。
今朝、桜の木を見たところ、あと2・3週間で桜が咲くとは思えない寒々しい様子であったが、桜の中では花を咲かせる準備が進んでいるに違いない。
染物ではこの時期の桜の枝や幹や樹皮を使うことで、美しいピンク色を出すらしい。まったく表面からは分からないが、桜はあの美しいピンク色をその幹や枝に潜ませているのだと思うと感慨深い。
桜の魅力の重要な一つは、咲くその時期にある。
私にとっての桜の思い出は、常に入学式と共にあった。地域によっては違うのだろうが、私の郷里では入学式の時期が桜の満開の時期と重なっている。小中高の各入学式を満開の桜の中で行うことができたのは、非常に幸運なことだと思う。
小学校の入学式、校庭の隅に桜が咲いていて、その前で集合写真を撮った。
幼稚園での集団生活が非常に苦痛であった私は、さらに長時間の拘束を強いられる小学校を非常に恐れていた。それまでの人生で感じたことのない不安の中で見ていた桜を、今でも覚えている。
小学校以降、中学、高校においても、常に学校という場所があまり得意ではなかった私は、入学式のたびに大変な不安に苛まれていた。満開の桜がそんな気持ちを癒してくれた。
満開の桜を見ていると不安でいっぱいな心の中に「ちょっとはいいことがあるかもしれない…」と思う隙間ができた。桜が入学式の時期に咲いていてくれることに感謝したい。
ただ不安な気持ちで桜を見る回数が多かったためか、今でも満開の桜を見ると、あの時の不安な気持ちが甦って胸が苦しくなることがあるので、困ったものだ。
大学を秋入学にするという議論があるらしい。海外では一般的な秋入学にすることで学生にも大学にも色々とメリットがあるのだろう。せっかくこんなにも美しい桜が咲く、美しい季節がある国なのだから、人生の門出をその季節に迎えることができるのは、素晴らしいことだと思う。
その一点において、私は秋入学への移行に反対である。
[編集後記~Newsスナック/NewsCafe編集長 長江勝尚]
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