【第十二回:編集後記~Newsスナック】密かな楽しみ
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通勤中はヘッドフォンで音楽を聴いている。お気に入りの音楽を聴きながら通勤するのは楽しい時間だ。
音楽を聴きながら車窓の風景や車内の人々を眺めると、ヘッドフォンからの音楽がBGMになり、映画や日常がドラマのワンシーンのようになる。
その日の気分や季節や天気が聴いている音楽にピッタリとはまると、見慣れた風景がとても特別なものに思えるから不思議だ。そう、的確なBGMを選ぶことにより、日常を素敵に演出することができるのだ。
この行為を私は「セルフBGM」と呼んでいる。
春らしい陽気の清々しい朝には小沢健二がよく似合う。特にオススメは『さよならなんて云えないよ(美しさ)』である。
半分地下に埋まった東急東横線・代官山駅を電車が出て渋谷に向けて進み始め、車内に光が満ちてくる。この瞬間にこの曲を聴いていると世界が本当に美しく、光り輝く素晴らしいものに見えてくる。電車が私を運んでいく先がいつものオフィスであり、そこで待っているものが雑多な日常業務だったとしても。
「セルフBGM」で素敵に演出できるのは風景だけではない。車内の人物も演出可能である。
朝から見苦しいほどにイチャイチャするカップルが近くにいて、無性に腹が立つことがあるが、そんな時こそ「セルフBGM」の出番だ。
すかさず携帯プレーヤーを操作しBGMを小田和正の『ラブストーリーは突然に』に変更する。
『ラブストーリーは突然に』を聴きながらカップルを見れば、なんとういうことだろう。あんなにもイライラさせられていたカップルがアーバンな恋愛ドラマを演じてくれる名優に早変わり。心なしか美男・美女に見える…という具合に、腹立たしさが一変、なんだか得した気持ちにすらなるのである。
他にも、なんだかワケありそうな雰囲気のカップルに遭遇すれば小林明子の『恋におちて-Fall in Love-』を聴き、勝手に道ならぬ恋を想像している。あまりに妄想にのめり込むあまり、「そんな恋愛はね、女が損するだけなんだからね!」と見当違いの忠告を女性にしてしまいそうになる。あやうく、とてつもなく危ないヤツになるところであった。
このように「セルフBGM」のおかげで、私の通勤は彩あふれるものになっているのだ。
ところで、男性2人に対して女性1人のグループを見かけると、竹内まりやの『けんかをやめて』を聴いてしまう。妄想過多であると自覚しているが私としてはシックリくるのである。
[編集後記~Newsスナック/NewsCafe編集長 長江勝尚]
《NewsCafeコラム》