「理系」「文系」による知識の偏差?
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同調査は、2011年3月11日以降の家計を把握することで、東日本大震災や原発事故が日本全国の家計に与えた影響を明らかにし、今後の復興や防災に関する施策の立案などに役立てることが目的で、約6000世帯に調査票を郵送し、3591世帯から回答を得たものです(有効回答率85.1%)。12年2月に調査結果は発表されたのですが、ネットでは未だに話題になっています。
それによると、「原発事故・放射能不安」について、「理系」よりも「文系」がポイントが高く、ともに8ポイント上昇し、震災直後よりも3ヶ月後の6月調査時点のほうが高くなっています(「理系」は「66」から「74」へ。「文系」は「69」から「77」へ」)。また、5月時点の世帯収入が低い人ほどポイントが高いのです。最も低い層で73(震災直後)から79(6月調査時点)に増えています。最も高い層では65(震災直後)から73(6月調査時点)になっています。ただ、増え幅は低所得層で「6」、高所得層で「8」であるため、幅は高所得層のほうがあります。
未就学児の有無では「なし」が「68」から「76」となり、8ポイント上昇。対して、「あり」は「70」から「78」となる、9ポイントあがっています。この分類では、別の設問「食料や水の放射性物質による汚染に対しての恐怖心、不安」に関しても差が顕著です。「なし」は「61から「70」へ、9ポイント増えましたが、「あり」は「64」かた「75」へ11ポイントも増えているのです。
「低所得、非正規、無職っ失うものも何もないし、逆に放射能なんか怖くなさそうな気もするけど」
「教養がある人は怖がらない」
「放射能を平気だと思っている人が愚かなんじゃないの?」
「そりゃ金があればいつでも日本捨てて逃げられるからな」
「理系は危機意識が低いということですね」
など、ネットでは様々な意見が飛び交っています。
同センターでは「恐怖・不安は、小さい子どもへの影響を心配する親や科学的知識が少ない文系出身者でより強かったと考えられています。また、低所得層や非正規雇用者・無業者で恐怖・不安が強かったのは、事故や放射能汚染が深刻化した際に、費用面の理由で、転居などの対策が取りづらいことに起因しているとも解釈できる」としています。たしかに、こうした分析は想定できる範囲かもしれません。
ただし、「理系」か「文系」かで、知識の偏差を比べることに意味があるのかどうか…。原子力や放射能という特殊な狭い領域の分野の知識は、「理系」であっても正確な知識を得にくい分野です。医療系であっても、専門分野でなければわからないことも多いはずです。チェルノブイリ事故の影響に関する資料は、インターネットのみならず、様々な書籍にも載っています。データを読み解く訓練は「社会科学系」出身ならしているはずです。それを「人文科学」出身とひとまとめにし「文系」とするのは乱暴な気がします。
とはいえ、こうした点は「想定内」のことだと思えます。一方、私にとっては「想定外」であり、ネットではそれほど話題になっていない項目があります。「健康感・幸福度への影響」です。所得が減少し、非正規雇用、若年層のほうが震災後のほうが高くなっていて、興味深い結果になっています。
同センターでは「この現象は一見すると矛盾する結果のようにみえますが、何通りかの解釈も可能であり、今後の研究課題として注目できます。たとえば、行動経済学や心理学の分野では、自分と同じ境遇の他者と比較をして幸福度や生活 満足度は判断されると言われており、震災の負の影響は低所得層や非正規で大きいが、"他人よりも自分のほうが相対的には悪くない"と思うことで生活満足度や幸福度は高まったという解釈もできる」と分析しています。
また、幸福感は通常は変化しにくく、震災後の変化をみると全国では68%が不変ですが、東北3県(福島・宮城・岩手)では不変は45%と少ないようです。「幸福感が下落」と回答したのは全国が4%なのに対して、東北3県は20%と大幅にマイナスに変化しています。一方、「幸福感が上昇」も東北3県が伸び、35%で、全国の25%を上回っています。取材で、命があるだけでも「幸福」と話していた被災者がいました。そうした心情を反映しているのかもしれません。
[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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