【第二十三回:編集後記~Newsスナック】原発再稼動と国家百年
社会
ニュース
この再稼動はあまりに性急すぎる決断だと私は思う。
原発の再稼動の賛否は、まさに国を二分する大きな議論となっていた。再稼動が半ば、なし崩し的に強行されたことについて、納得がいかない国民も多いのではないだろうか。私自身も納得のいかない一人である。
再稼動賛成を唱える人たちの意見は、主にこの夏の電力事情という目の前の問題と、経済についてである。
「夏の電力需要が増えるのは間違いない。悠長に議論をしている時間はない。今、決めるしかない。節電・電力の値上がりは経済を停滞させる。原発を稼動させれば電気が安くなる。だから原発再稼動は仕方ない」
上記が再稼動に賛成する人たちの主な論説だろう。少なくとも、私には、その程度の論説しか聞こえてこない。
積極的な原発のメリットについては、論じず、「時間がない」「仕方がない」という消去法で、原発再稼動を強行するというのはあまりに乱暴だ。
この夏の電力事情については、以前から判っていたことだ。この夏を原発再稼動なしに乗り切る、ありとあらゆる方法について、国および関西電力は真剣に議論し、努力したのだろうか。それを行ったのであればその過程を、その結果を国民に示す必要があったはずだ。
しかし「もう選択肢はない。だから再稼動する」と、突然聞かされたように私は感じる。
原発再稼動を経済中心の論説で決定することに対しても、私は賛成できない。
原発を止めることで、確かに経済は停滞するかもしれない。原発関連事業・製造業の失業者が増えることも予測される。しかし、それはあくまで短期的な経済の話だ。
原発でない電力事業に国を挙げて注力すれば、将来的に新たな雇用が生まれ可能性もある。また原発以外の安価な発電方法も開発される可能性もある。すべて可能性でしかない。しかし可能性はあるのだ。その可能性に賭けることは現時点で原発の安全性に賭けるより勝算があるように私は思う。
経済合理性を重んじる人たちからすれば、悠長な考えなのかも知れないが…。
しかし、私たちは昨年、大切な国土の一部を喪失する事故を経験した。そしてその事故はいまだに終息していない。この喪失した国土を取り戻すための苦しみと努力が、あと何年、何十年、あるいは何百年続くのか正確に予測できる人はいない。
原発再稼動は今後百年の日本を左右する重大な問題であるはずだ。経済よりも大切なことが、国家には存在する。
だからこそ、悠長に、慎重すぎるぐらいの議論を重ねて、判断してもよかったのではないか。
再稼動の性急すぎる決断が残念でならない。
現在、原発は確かに稼動している。しかし、長期的に日本が原発をどうしていくのか、国民投票も視野に入れた継続的な議論が続くことを祈る。
[編集後記~Newsスナック/NewsCafe編集長 長江勝尚]
《NewsCafeコラム》