「自殺のやり方を練習しておくように」…その時、学校は?
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男子生徒の両親は12年2月、いじめが自殺の原因だっだとして、いじめ行為をしたとする男子生徒3人とその保護者、 大津市に損害賠償を求め提訴しました。現在、大津地裁で係争中ですが、市側は「自殺に過失責任はない」として全面的に争っています。
この問題で、産經新聞は4日、学校側が生徒を対象に実施したアンケートで、15人が「死亡した男子生徒が自殺の練習をさせられていた」と答えていたと報じました。アンケートは、男子生徒が自殺した直後の昨年10月中旬に任意で実施していました。330人から回答があったといいます。
それによると、5人が伝聞形式で「昼休みに毎日自殺の練習をさせられていた」「(いじめた生徒が)自殺のやり方を練習しておくように言っていた」などと記載しているといいます。なかには 記名で提出した生徒もいたというのです。また、「いじめていた人に『明日死にます』とメールを送った」「がんの友達に命をあげると話していた」などの回答も寄せられたというのです。
市では昨年11月に開いた会見では、このアンケート結果については明らかにせずに調査を打ち切っていたのです。こうした生徒の自殺が起き、背景にいじめがあった場合、学校や教育委員会は、その存在を隠したり、認めても因果関係を認めないことがしばしばあります。
私も10年3月、私自身の出身中学校で起きた女子生徒の自殺を取材しました。学校を出た後に、通学路ではない場所を通り、私の実家の近くにある橋から飛び降りて亡くなったのです。母は「このルートは普段通らない」と言っていて、女子生徒は最初から「橋」を目指していた可能性があります。実は、この橋は、地元では自殺が多い場所として知られていました。そうした"名所"であったことは知っていたのではないかと思いました。
では、なぜ、彼女が自殺をしたかったのか。その学校は小規模の学校のため、小学校時代と中学時代のクラスメイトはほぼ同じです。その中に小学校時代からそれほど仲が良いとは言えない同級生ともめていたというのです。きっかけは小学校3~4年生の頃ですが、好きな人が同じだったことでした。4~6年のころは無視があったりしたが、担任は仲が悪いのを知っていたようで、本人を含めた話し合いをしていました。また、このほかにもトラブルが続いていた。
しかし、中学校になっても、その子と同じグループにいたりした。そのため、周囲ではそれほど険悪に見えないと思っても仕方がないくらいの距離だった。母親は心配して「大丈夫なの?」と聞いたことがある。すると「小学校のときにいじめられたけど、中学校に入って変わった気がして、また信用して一緒にいるんだ」と言ったという。
その後も小さなトラブルは続いたが、女子生徒は「友人が変わった気がして…」と期待していたのかもしれません。誰とも話していない日もあったようです。さらに1人の同級生の転校で「絶望」へと向かって行くのです。その同級生もやはり攻撃対象になっていたからです。それによって、攻撃対象が女子生徒1人に集中することになりました。
遺書にはこうあります。
「うちはみんなが大嫌い。小学校の時からずっとずっと2年女子が大嫌いだった。理由はわかってると思うけど、いじめられてたから。ちょっとしたささいなことが原因で」「中学校入ってから、2年が過ぎたのになんでみんなそんなに性格がかわらないの?普通は男子よりもさきに変わるはずなのに。うちは、みんな、性格変わってくれた、よかったな、って思ってた。けど、実際には何も変わってなかった。それがすっごくショックだった」
学校では女子生徒が自殺した当日、記者会見が行なわれました。いじめについては否定しているのです。しかし、学校側はいじめを把握し、教育委員会に報告書を提出していたのです。このことは一ヶ月後、ようやく学校側は謝罪した。
大津市のいじめ自殺でも、こうした学校、市教委の対応が不誠実に感じられることがあります。もちろん、学校も市教委も「いじめた生徒」について、一定程度守りつつ、指導しなければいけない立場です。それが隠蔽に走っては、指導する立場がありません。生徒の自殺が起きたときの対応は、参考ですが、文部科学省がマニュアルを作成しています。「子どもを守る」「遺族のサポート」「第2の犠牲者を出さない」の三つが原則です。もちろん、自殺の原因を単純化することはいけません。しかし、正確な情報発信が求められているのです。
[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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