常識破りの超ロングスパート
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前半の1000m通過は1分0秒9。これは3000mのレースとしては理想的なペースだ。よどみのないこのペースは紛れが少なく各馬の能力がはっきりと現れる流れでもある(冒頭に書いたように近年では3000m級のレースでは1分4秒~6秒という遅い流れになることも少なくない)。そのせいもあってかゴールドシップは道中ほぼ最後方の位置からレースを進めた。
菊花賞で最も重要なのは古くから言われるように「3~4コーナーの下り坂はゆっくり下るのが鉄則」ということ。下り坂で一気にスパートしてしまうと遠心力で外に膨れその分コースロスとなってしまうからだ。2週目の向こう正面でもゴールドシップはまだ後方の位置取り。下り坂での仕掛けだけは避けたいと思ったのか、鞍上の内田博幸騎手は常識破りの作戦を実行した。
なんと向こう正面の上り坂から徐々にスピードアップ。下り坂では先頭集団に並び、最後の直線に入る頃には先頭に立っていた。直線に入っても脚色が鈍ることはなく、後方から迫った2着のスカイディグニティを抑えて完勝。3分2秒9という好時計で後続を振り切った。このレースぶりを見てすぐに思い浮かんだのが伝説の3冠馬ミスターシービー。レースの週はJRAのCMでそのミスターシービの菊花賞のレース映像が流れていたが、まったくと言っていいほどの同じ勝ち方だった。
スタートの13.0というハロンタイムを除いてすべてのラップが12.6秒以下。これはスタミナと底力のある馬しか上位にこれないというタフで厳しいレースであり、この流れを自分で作って勝ったゴールドシップは相当に強いレース内容であったことが分かる。こと菊花賞だけでいうのであればディープインパクト、オルフェーヴルと比べても遜色はないレース内容と言えるだろう。
戦前はダービー馬ディープブリランテの回避で盛り上がりに欠けると思われた菊花賞だったが終わってみれば、近年稀に見る好レースを見せてもらった。くしくも父ステイゴールド、母父メジロマックイーンという配合はオルフェーヴルと同じ。オルフェーヴルは凱旋門賞で敗れてしまったが、ゴールドシップは明らかに欧州の競馬スタイルに合っている。世界で戦うためには更なるパワーアップが必要であることは違いないが、今後の活躍を期待せずにはいられない内容だった。
[執筆者:松岡慶]
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